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うつ病とは?

【うつ病】

フィンセント・ファン・ゴッホ
悲しむ老人
1890年5月

【分類および外部参照情報】

診療科・
学術分野

精神科心療内科
ICD-10 F32, F33
ICD-9-CM 296
OMIM
608516
DiseasesDB
3589
MedlinePlus
003213
eMedicine
med/532
Patient UK
うつ病
世界の疾病負荷(WHO, 2016年)
【順位】
【死因】
【DALYs (万)】
【DALYs(%)】
DALYs
(10万人当たり)
1 | 虚血性心疾患 | 20,370.0 | 7.6 | 2,730
2 | 脳卒中 | 13,794.1 | 5.2 | 1,849
3 | 下気道感染症 | 12,969.0 | 4.9 | 1,738
4 | 早産の合併症 | 10,139.7 | 3.8 | 1,359
5 | 交通事故 | 8,253.8 | 3.1 | 1,106
6 | 下痢性疾患 | 8,174.3 | 3.1 | 1,095
7 | COPD | 7,251.2 | 2.7 | 972
8 | 糖尿病 | 6,566.6 | 2.5 | 880
9 | 出生時仮死出生外傷 | 6,392.8 | 2.4 | 857
10 | 先天異常 | 6,298.0 | 2.4 | 844
11 | HIV / AIDS | 5,995.1 | 2.2 | 803
12 | 結核 | 5,164.3 | 1.9 | 692
13 | 背中と首の痛み | 4,751.5 | 1.8 | 637
14 | 成人発症性の難聴 | 4,735.2 | 1.8 | 635
15 | 肝硬変 | 4,528.7 | 1.7 | 607
16 | うつ病性障害 | 4,417.5 | 1.7 | 592
17 | 気管、気管支、肺がん | 4,112.1 | 1.5 | 551
18 | 腎臓病 | 3,907.9 | 1.5 | 524
19 | 新生児の感染症など | 3,900.9 | 1.5 | 523
20 | 墜死 | 3,816.2 | 1.4 | 511

うつ病(うつびょう、鬱病、欝病、英語: Clinical Depression)は、気分障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥、食欲低下、不眠、持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である。

精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)には、うつ病の診断名と大うつ病性障害(だいうつびょうせいしょうがい、英語: Major depressive disorder)が併記されており、この記事ではおもにこれらについて取り上げる。これは1日のほとんどや、ほぼ毎日、2 - 3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症である場合である。1 - 2年続く死別の反応、経済破綻、重い病気への反応は理解可能な正常な反応である場合がある。

有病者数は世界で3.5億人ほどで一般的であり、世界の障害調整生命年(DALY)において第3位(4.3パーセント)に位置づけられる。しかし多くの国にて治療につながっておらず、先進国であろうと適切にうつ病と診断されていないことが多い一方、うつ病と誤診されたために間違った抗うつ薬投与がなされているケースもみられる。WHOはうつ病の未治療率を56.3パーセントと推定し(2004年)、mhGAPプログラムにて診療ガイドラインおよびクリニカルパスを公開している。

定義

精神障害#定義」も参照

うつ病はほかの精神障害と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である。

診断と医学用語とを共通化する目的で操作的診断基準が開発されてきた。それはアメリカ精神医学会(APA)の『精神障害の診断と統計マニュア(DSM)』や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10 精神と行動の障害』といったものである。

日本のうつ病の診療ガイドラインは、うつ病と、DSM-IVの大うつ病性障害、また単極型(短極性)うつ病はほぼ同じ意味であるとしている。第5版のDSM-5の邦訳書では、うつ病の用語は、大うつ病性障害の診断名と、うつ病エピソード(定義されたうつ状態、後述)とを指すために用いることが記されている。以上の範囲を本記事のおもな対象とする。なお訳語では、major depressive disorderの major が日本語で大と訳されているが、本来これは「主要な」あるいは「中心的な」という意味で用いられているものであり、誤訳であるとする意見もある。

うつ病という用語は、狭い意味ではDSM-IVにおける大うつ病性障害に相当するものを指しているが、広い意味でのうつ病は、一般的には抑うつ症状が前景にたっている精神医学的障害を含める。そのなかには気分変調性障害をはじめとするさまざまなカテゴリーが含まれている。

操作的診断基準による「大うつ病性障害」などの概念と、従来の分類による「内因性うつ病」(後述)などは同じ「うつ病」であっても異なる概念であるが、このことが専門家の間でさえもあまり意識されずに使用されている場合があり、時にはそれを混交して使用しているものも多い。そのため一般社会でも、精神医学会においても、うつ病に対する大きな混乱が生まれている。つまり、うつ病という言葉の意味が異なっている場合がある。

下位分類

従来は、心因が強く関与している心因性うつ病と、そうではない内因性うつ病を区別し論じられることが一般的であった。

1980年にアメリカ精神医学会(APA)が出版した『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版(DSM-III)は、内因性というカテゴリーを削除した。

現在では、DSMのような操作的診断基準によって分類することが一般的であるが、さまざまな経験則によってそうした下位分類も用いられる。細かくは#分類の項に示す。

診断名のうつ病と抑うつ状態

抑うつ」および「#鑑別診断」も参照

抑うつの症状を呈し、うつ状態であるからといって、うつ病であるとは限らない。抑うつ状態は、精神医療においてもっとも頻繁に見られる状態像であり、診療においては「熱が38度ある」程度の情報でしかない。状態像と診断名は1対1で対応するものではなく、抑うつ状態は、うつ病以外にもさまざまな原因によって引き起こされる。

精神障害の診断と統計マニュアル』において、うつ病(大うつ病性障害)として扱われるのは、1日のほとんどや、ほぼ毎日、2 - 3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症である場合である。また、死別、経済破綻、重い病気への反応は理解可能な正常な反応である場合がある。

病態

うつ病は、単一の疾患ではなく症候群であり、さまざまな病因による亜型を含むと考えられる。

精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)の診断基準Aによれば、「ほとんど1日中、ほとんど毎日の」の抑うつ気分、あるいは興味、喜びの著しい減退のほか、「ほとんど毎日の」不眠あるいは過眠、易疲労性、精神の焦燥や制止、無価値感や罪の意識、思考力や集中力の減退、体重の減少や増加、反復的な自殺念慮などがみられ、診断基準Bが重症であることを要求している。

うつ病と不安障害は併発しやすい。アメリカでの調査では、大うつ病者の51パーセントに不安障害がともなう。

うつ病の約8割から9割に不眠症が見られる。

分類

前史として、1899年にエミール・クレペリンは、統合失調症躁うつ病とに大きく分け、うつ病は躁うつ病に含まれた。

古典的分類

精神障害#外因・内因・心因」も参照

古典的な精神病理学は、内因、外因、心因という原因についての考察から分類がなされていた。内因性うつ病とは、身体である体調の変化から気分が巻き込まれており、典型的には自生的に出現すると考えられた。心因性うつ病とは、葛藤に苦しんでいるなど、環境との相互作用から起こるものである。

内因性うつ病という分類は、抗うつ薬というものが登場したばかりの1958年に、抗うつ作用を発見したローランド・クーンが、イミプラミンの適応は内因性うつ病であり、効果が目覚ましいのは重いうつ病であると述べたことから大きく始まる。この説をキールホルツが支持し、DSM-IIIの登場する1980年代まで定説となる。

メランコリー型

1980年にアメリカ精神医学会(APA)が出版した『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版(DSM-III)は、DSM-IIの内因性うつ病というカテゴリーを削除し、うつ病のサブタイプにメランコリー型という分類を追加した。このメランコリーの特徴は、もっとも重篤な抑うつでまったく何も楽しめず、感じないといった特徴を持ち、最低限の栄養補給を誘導しなくてはならない。そして、1987年のDSM-III-Rのメランコリー型の診断基準には、身体的な抗うつ療法によく反応したことという一文が加えられ、それを実証した研究がないため議論が起こった。そのため実験が行われ、メランコリー型はそうでないものに比べて、身体的な抗うつ療法に良好な反応をするという知見は得られず、DSM-IVではこの基準は削除された。当時は、反応の違いの原因は重症度であり、中等症のうつ病に抗うつ薬が奏功すると考えられた(現在の知見と異なる)。なおDSM-IVではメランコリー型、DSM-5メランコリーと邦訳されている。

諸外国においても、操作的診断によるうつ病概念の混乱が生じており、ハゴップ・アキスカルジャーマン・ベリオス、ヒーリーをはじめとした英米圏を代表する学者13名は連名で、DSMを発行している『アメリカ精神医学会誌』において、大うつ病性障害からメランコリーを切り離し、1つの臨床単位として独立させる必要性を提言している。食欲と体重が減少し、SSRI系抗うつ薬よりも三環系抗うつ薬によく反応し、内因性うつ病や典型的なうつ病と呼ばれてきたものである。

メランコリー親和型性格

メランコリー親和型は内因性うつ病を誘発する病前性格であり、テレンバッハが提唱した学説である。几帳面、良心的、配慮できるといった特徴を持つうつ病の病前性格であり、自分の所属する「社会や集団での役割」に応えようとするなかで、不調が生じうつ病を発症する。そのため、笠原は1978年にメランコリー親和型の患者への基本方針として、治ると説明し、休息させ、服薬の重要性を説明し、「患者という役割」に同一化させるという原則を提唱した。内因性うつ病の語は現在では用いられないが、病像としては今なお考慮されている。

うつ病の典型は、内因性のうつ病であり、メランコリー親和型が病前性格であると、以前の日本ではとらえられていた。そうして、日本では内因性うつ病と、神経症性うつ病との鑑別が重視された。内因性うつ病は、身体疾患の影響や薬物など明らかな外部の影響が不明で、かといって性格も環境も原因ではなく、食欲と体重は低下し、朝に落ち込み、抗うつ薬が有効である。神経症性うつ病は、そうした特徴がなく不安感を持ち、性格や環境に原因があり、抗うつ薬が効きにくいため環境調整や精神療法が必要である。

1980年代にはこうした性質が顕著ではなくなっているということが議論されており、現代型うつ病の議論が起こっている。役割への同一化を示さない。

操作的診断基準による分類

1980年にアメリカ精神医学会(APA)が『精神障害の診断と統計マニュアル』第3版(DSM-III)を発表し、「うつ病性障害」を、ある程度症状の重い「大うつ病(Major Depressive Disorder)」と、軽いうつ状態が長期間にわたって続く「気分変調症(Dysthymia)」に二分した。原因による分類・定義が現時点では困難であるため、1994年に発表された第4版のDSM-IVと、『ICD-10 精神および行動の障害』でも、基本的にはDSM-IIIの構成が継承されている。

ICDおよびDSMにおける分類
ICD-10 (F30-39) DSM-5 抑うつ障害群
 | 
DSMによるうつ病性障害のサブタイプについては「気分障害#うつ病性障害」を参照

病相の回数による分類

ICDでは、うつ病相が1回のみの単一エピソードうつ病に対して、うつ病を繰り返すものを反復性うつ病(Recurrent depressive disorder)という。DSMでも同様に、296.2x:単一エピソード、296.3x:反復エピソードである。

重症度による分類

詳細は「精神障害#重症度」を参照

DSM-5(5だけでなく以前からも)においては、大うつ病性障害の診断を満たすものについて、296.2x、296.3xの診断コードの末尾x部分に、さらに状態を細分する。

1:軽症(いくつかの愁訴が最低限の基準に該当する)、2:中等症、3:重症(社会的や職業的能力を著しく妨げている)に分類される。エピソード全体の15パーセントを占め、妄想・幻覚など「4:精神病性の特徴を伴うもの」(一般に「精神病性うつ病」とも呼ばれる)。症状が改善して診断基準を満たさなくなったものの、一部の症状が残存している「部分寛解」や、完全寛解などである。

治療反応性による分類

DSM-IVなど操作的診断基準では定義されておらず、基準は一定したものではないが、研究などでは「少なくとも2つ以上の抗うつ薬を十分な量・長期にわたり投与しても症状が改善しないケース」を治療抵抗性うつ病あるいは難治性うつ病ということが多い。

原因

うつ病の発病メカニズムはいまだ不明であり、社会的相互作用、心理社会的、生物学的らの複雑な要素によるとされ、さまざまな仮説が提唱されている。現在、動物実験によって、抑うつ状態に特有の神経回路機構が徐々に明らかとなりつつある。

生物学的仮説

生物学的仮説としては、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、死後脳の解剖結果に基づく仮説、低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、現在も活発に研究が行われている。

モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した抗うつ薬の売り上げ増加にともない、セロトニン仮説がよく語られる。また、海馬の神経損傷も論じられている。しかしながら、臨床的治療場面を大きく変えるほどの影響力のある生物学的な基礎研究はなく、決定的な結論は得られていない。

モノアミン仮説

化学的不均衡」および「モノアミン神経伝達物質#モノアミン仮説」も参照

1956年、抗結核薬であるイプロニアジド、統合失調症薬として開発中であったイミプラミンが、クラインやクーンにより抗うつ作用も有することが発見された。発見当初は作用機序は明らかにされておらず、ほかの治療に使われる薬物の薬効が偶然発見されたものであった。その後、イプロニアジドからモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用、イミプラミンにモノアミン類であるノルアドレナリンセロトニンの再取り込み阻害作用があることが発見された。その後、これらの薬物に類似の作用機序を持つ薬物が多く開発され、抗うつ作用を有することが臨床試験の結果明らかになった。よってモノアミン仮説とは、大うつ病性障害などのうつ状態は、モノアミン類であるノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の低下によって起こるとした仮説である。

抗うつ薬の販売者は自社製品を宣伝するために、セロトニンの欠乏によってうつ病が引き起こされており、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が、この欠乏を正常化するとして宣伝しているが、これは監督庁による製品情報や査読論文によって裏付けられていない比喩的な説明である。

脳の海馬領域における神経損傷仮説

神経損傷仮説
近年MRIなどの画像診断の進歩にともない、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている。そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている。
心的外傷体験が海馬神経損傷の原因となるという仮説
また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。コルチゾール(cortisol)は副腎皮質ホルモンであり、ストレスによっても発散される。分泌される量によっては、血圧血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。また、このコルチゾールは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の脳のMRIなどを例として観察されている。心理的ストレスを長期間受け続けると、コルチゾールの分泌により海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認される。

心理学的仮説

病前性格論

#古典的分類に示したように、日本では1980年代まで、うつ病の患者に几帳面な人が多いという定説があり、これは病前性格論におけるメランコリー親和型性格や循環性格を指したものであった。

フーベルトゥス・テレンバッハの唱えたメランコリー親和型性格は、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説である。

従来は、メランコリー親和型性格がうつ病の特徴とされ、薬に反応しやすく、休養と服薬で軽快しやすいものであった。

しかし、近年ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化にともない、これらの性格に該当しないディスチミア親和型と呼ばれる一群の患者が増加しているとされる。ディスチミア親和型はメランコリー親和型とは異なり、薬への反応は部分的であり、休養と服薬のみではしばしば慢性化する。そのため、メランコリー親和型に準じた治療では改善がみられない。

ディスチミア親和型は、2004年に樽味伸が提唱したもので、以下のような特徴がある。若年層に見られ、社会的役割への同一化よりも、自己自身への愛着が優先する。また、成熟した役割意識から生まれる自責的感覚を持ちにくい。ストレスに対しては他責的・他罰的に対処し、抱えきれない課題に対し、時には自傷や大量服薬を行う。幼いころから競争原理が働いた社会で成長した世代が多く、現実で思い通りにならない事態に直面した際に個の尊厳は破れ、自己愛は先鋭化する。回避的な傾向が目立つ。

ディスチミア親和型うつ病とメランコリー親和型うつ病の対比(樽味伸、2005)
【】
【ディスチミア親和型】
メランコリー親和型
年齢層 青年層 | 中高年層
関連する気質 スチューデント・アパシー
退却傾向と無気力 | 執着気質
メランコリー性格
病前性格 「自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して『ストレス』であると抵抗する
秩序への否定的感情と万能感
もともと仕事熱心ではない | 社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心
症候学的特徴 不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷、一方で「軽やかな」自殺企図 | 焦燥と抑制
疲弊と罪業感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない「熟慮した」自殺企図
薬物への反応 多くは部分的効果に留まる(病み終えない) | 多くは良好(病み終える)
認知と行動特性 どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明 | 疾病による行動変化が明らか
予後と環境変化 休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある | 休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的となる)

認知心理学

認知心理学は、人間の思考など認知過程を対象とした学問で1960年代より発展してきた。この認知心理学の学習モデルによれば、人間には思考が反復的に起こっているとされ、偏った思考と気分が関連づけされた場合に、問題が生じるとしている。その心理療法である認知行動療法は、有効性が科学的に確認されている。

ストレス脆弱性モデル

ストレス脆弱性モデルとは、ストレス自体の強さと、個人にはストレスに対する脆弱性があるという発症を説明する理論である。同様のストレスを受けた場合でも、ストレスに対して脆弱な場合に症状が生じるということである。

薬物やアルコールによる影響

気分障害#アルコール誘発性気分障害」および「気分障害#ベンゾジアゼピン誘発性気分障害」も参照

DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしている。うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは物質誘発性気分障害と診断される。

アルコール依存症または過度のアルコール消費は、うつ病の発症リスクを大幅に増加させる。また、逆にうつ病が原因となってアルコール依存症になる場合もある(誤った自己治療)。

ベンゾジアゼピン不安障害不眠症の人が服用する薬である。アルコールと同様に、ベンゾジアゼピンは大うつ病発症リスクを増加させる。この種類の薬は不眠不安・筋肉痙攣に広く使用されている。このリスク増加はセロトニンとノルアドレナリンの減少など、薬物の神経化学への効果が一因である可能性がある。ベンゾジアゼピン系の慢性使用も抑うつを悪化させ、うつ症状は遷延性離脱症候群の1つである可能性がある。2010年の厚生労働科学研究によれば、実際には睡眠薬抗不安薬としてベンゾジアゼピン系などが多く処方されているが、長期の安全性については疑問があるため適正使用ガイドラインなどが検討課題であると述べられている。

メタンフェタミン乱用も抑うつを引き起こすとして広く知られている。

社会的要因

詳細は「抑うつ#人生の出来事」を参照

貧困と社会的孤立は、一般的に精神的健康の問題のリスク増加と関連している。児童虐待(身体的、感情的、性的、またはネグレクト)も、後年になってうつ病を発症するリスクの増加に関連づけられている。

成人では、ストレスの多い生活上の出来事が強く大うつ病エピソードの発症に関連づけられている。生活上のストレス、社会的支援の欠如がうつ病につながる可能性がある。

予防

診断

臨床評価

OECD各国のメンタルヘルス問題時の受診先調査。
青は総合診療医、赤は精神科医、緑は臨床心理士
en:Rating scales for depression」も参照

診断評価は、適切な訓練を受けた総合診療医、精神科医、心理士によって、現在の状況、生活歴、現在の症状、家族歴を記録したうえで下される。広い臨床的な目的は、患者の気分に影響がおよぶ関連する生物学的、心理的、社会的要因を系統立てて診察するためである。評価の際には、アルコールや薬物の使用など(健康な方法も含めて)気分転換の方法を尋ねる場合もある。評価はまた、現在の気分や思考の内容についての心理検査を行うことがあり、それは特に絶望感や悲観、自傷や自殺、肯定的な考えや計画がない場合である。農村部では精神医療の専門家は少ないため、診断と管理はプライマリケア医によってなされることが多く、特に発展途上国では顕著である。

プライマリケア医や非精神科医は、身体的な症状の診断と治療に訓練されているため、時にはうつ病の診断を下すのが難しいこともある。うつ病は、さまざまな身体的(心身的)症状を引き起こすことがあり、彼らは身体的症状だと判断してその治療をしてしまうからである。非精神科医は3分の2のケースで不必要な加療を行ってしまうという。

うつ病の診断を行う前に、一般的に医師によって医学的検査と調査が、ほかが原因となっている症状を除外するために行われる。血液の甲状腺刺激ホルモン(TSH)とチロキシン測定によって甲状腺機能低下症を除外したり、基礎電解質と血中カルシウム測定で代謝障害の除外、全血球算定(赤血球沈降速度ESRを含む)により全身性疾患や慢性疾患を除外したりする。薬物の副作用やアルコール乱用も同様に除外される。男性の抑うつの場合、テストステロンのレベル測定によって性腺機能低下症も除外される。

自覚的な認知についての訴えが老人の抑うつに現れることがあるが、それはアルツハイマー病などの認知症の徴候の可能性がある。認知検査と脳画像イメージは認知症とうつ病を区別する助けとなる。CTスキャンは、精神病症状や、急な発症、または異常な症状をともなう脳病変を除外することができる。生物的テストでは大うつ病の診断を行う方法はない。一般的に、医学的な兆候がない限りその後検査を繰り返す必要はない。

DSM-IV-TRとICD-10の診断基準

抑うつ状態についてもっとも広く用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会による『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版改訂版(DSM-IV-TR)と、世界保健機関の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)である。前者は米国および非ヨーロッパ諸国で多く用いられ、後者はヨーロッパで多く用いられる。2つの著作はお互いを反映するように作業されている。

DSM-IV-TRとICD-10は典型的なうつ病の症状を選定している。ICD-10では3つの典型的なうつ病の症状(気分の落ち込み、喜びの喪失、気力の低下)を示し、うち2つがうつ病の診断の確定に必要である。DSM-IV-TRでは2つのおもなうつ病の症状、気分の落ち込みと、喜びの喪失のうち、ひとつが大うつ病エピソードの診断に必要である。しかし、これらは診断基準の一部であり、すべてではない。

DSM-IV-TRでは大うつ病性障害は気分障害に分類される。診断は単発か繰り返される大うつ病エピソードに基づく。追加の情報はその他の障害と区別するために用いられている。特定不能のうつ病性障害は、抑うつ症状のエピソードが、大うつ病エピソードの基準を満たしていない場合に診断される。

ICD-10は、大うつ病性障害という用語を使用していないが、(軽症・中等症・重症)うつ病エピソードの診断のために、非常によく似た基準を一覧にしている。複数のうつ病エピソードが存在し、躁病のないものには反復性うつ病性障害(recurrent depressive disorder)の診断名が用いられる。

DSMの診断基準は、うつ病を引き起こした個人のほかの側面と社会的な状況を考慮していないという点について、批判の対象となっている。

大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)

詳細は「en:Major depressive episode」を参照

大うつ病エピソードは、2週間以上の重症抑うつ気分の存在を特徴とする。もし躁病や軽躁病のエピソードが存在すれば、診断は代わりに双極性障害となる。

大うつ病エピソードの確定には、「気分の落ち込み」と「興味・喜びの喪失」の2つの主要な症状のうちどちらかが必要である。「気分の落ち込み」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。またこれは大うつ病エピソードの診断基準Aの片方であり、もう片方は5つ以上の症状の存在である。

抑うつ気分
  • 患者は抑うつを訴えたり、周囲から見て抑うつ状態にある。ほとんど1日中、ほとんど毎日である。
興味・喜びの喪失
  • 最近のほぼすべての活動において、興味や喜びを喪失している(患者本人や周囲の訴えによる) 。ほとんど1日中、ほとんど毎日の著しい減退である。
食事や体重の変化
2010Happy Mail