アラブ首長国連邦、アルジェリア、イエメン、イラク、エジプト、エリトリア、オマーン、カタール、クウェート、コモロ、サウジアラビア、西サハラ、シリア、スーダン、ソマリア、ソマリランド、チャド、チュニジア、パレスチナ国、バーレーン、モーリタニア、モロッコ、ヨルダン、リビア、レバノン
ar
ara
ara
– マクロランゲージarq
— アラビア語アルジェリア方言aao
— アラビア語サハラ方言bbz
— Babalia Creole Arabicabv
— アラビア語バーレーン方言shu
— アラビア語チャド方言acy
— Cypriot Arabicadf
— アラビア語ドファール方言avl
— Eastern Egyptian Bedawi Arabicarz
— アラビア語エジプト方言afb
— アラビア語湾岸方言ayh
— アラビア語ハドラマウト方言acw
— アラビア語ヒジャーズ方言ayl
— アラビア語リビア方言acm
— アラビア語イラク方言ary
— アラビア語モロッコ方言ars
— アラビア語ナジュド方言apc
— North Levantine Arabicayp
— North Mesopotamian Arabicacx
— アラビア語オマーン方言aec
— アラビア語サイード方言ayn
— アラビア語北イエメン方言ssh
— アラビア語シフフ方言ajp
— South Levantine Arabicarb
— フスハーapd
— アラビア語スーダン方言pga
— Sudanese Creole Arabicacq
— アラビア語南イエメン方言abh
— Tajiki Arabicaeb
— アラビア語チュニジア方言auz
— Uzbeki Arabic
アラビア語(アラビアご、اللغة العربية, UNGEGN式:al-lughatu l-ʻarabīyah, アッ=ルガトゥル=アラビーヤ、العَرَبِيَّة, al-ʻarabiyyah [ʔalʕaraˈbij.ja] ( 音声ファイル)、عَرَبِيّ ʻarabī [ˈʕarabiː, ʕaraˈbij] ( 音声ファイル))は、アフロ・アジア語族のセム語派に属する言語の一つ。主に西アジアや北アフリカのアラブ世界で話されている。ISO 639による言語コードは、2字が ar 、3字が ara で表される。
世界で3番目に多くの国と地域で使用されている言語であり、アラビア半島やその周辺、サハラ砂漠以北のアフリカ北部の領域を中心に27か国で公用語とされており、また、国連の公用語においては、後から追加された唯一の言語でもある。
「アラビア語」は、もともとアラビア半島で話されていたが、北アフリカやイラク、シリア方面まで広がった。現代において使用されているアラビア語は、次の2つに大きく分類されている。
フスハー(正則アラビア語)はアラブ諸国の共通語であり、アラビア文字で書かれる。起源は西暦4世紀ごろのアラビア半島にさかのぼるといわれ、イスラーム文明の出現と拡大にともなって北アフリカにまで使用地域が広がり、現在まで言語として大きく変わらずに使われている。
イスラームの聖典であるクルアーンは古典アラビア語で書かれているが、これはムハンマドがいたヒジャーズ地方のアラビア語をかなり反映していると考えられる。クルアーンの記述によれば、イスラームを伝えるために神が選んだのがアラビア語だったことから、ムスリムはこれを「アッラーの言葉」としてとらえている。クルアーン(コーラン)はアラビア語で詠唱して音韻をふむように書かれ、またアラビア語原典がアッラーが人類に与えたオリジナル版とされるため、翻訳は教義上原則禁じられる。クルアーンの勉強や暗誦は敬虔なイスラム教徒の必須の義務とされるが、クルアーンを学ぶためには必然的にアラビア語を読めなくてはならず、アフリカからトルコ、インド、東南アジアにかけてのイスラム圏では、アラビア語がイスラム知識人層の共通語として通用している。
『マカーマート』〈訳は平凡社東洋文庫全3巻〉のような古典に見られる書き言葉は、とくにオスマン帝国の時代に一時期衰退したが、話し言葉は続けて用いられていた。文語は近代になってより簡単なものとして練り直され、近代以降の新しい概念に対応する新語が大量に追加されることで、現代において使用されている現代標準アラビア語が成立した。こうしてフスハーはアラビア語において公的な面を代表する言語となり、宗教関係のほかに、学術関係や書籍・雑誌・新聞などの文章はもちろん、公的な場での会話やテレビニュースなどの改まった場においても使用されるようになった。公的な言語であるためアラビア語の教育もすべてフスハーで行われているが、逆に言えばフスハーは学校で「習う」アラビア語である。ただし文語でありあくまでも公式な場で使用されるものであるため、日常会話においてフスハーが使用されることはない。
一方、方言は日常会話で用いられる話し言葉を指す。現代の話し言葉としてのアラビア語は、国・地域によって異なる地域変種(ラハジャ)に分かれ、これには正字法が無い。日常会話はこの話し言葉で話されるが、私信などではこれを文字化して表現する。また、大衆向けの小説や演劇、詩歌は現代口語の諸変種で書かれる。
湾岸方言、ヒジャーズ方言、イラク方言、シリア方言、レバノン方言、パレスチナ方言、エジプト方言、スーダン方言、マグリブ方言、ハッサニヤ方言などに大別され、それぞれの地域のなかでも違いがある。地域によっては、宗派ごとに話されるアラビア語に差異があるなどする。また、生活形態によっても、地域を越えてそれぞれ共通の特徴がある。遊牧民方言、農村方言、都市方言の3つに分けられる。
現代アラブ世界での現代標準アラビア語と方言の関係は、中世のカトリック教会地域におけるラテン語とロマンス諸語の関係に似ている。後者が前者から派生し、フランス語、イタリア語、スペイン語など多くの変種に分かれていること。前者が日常語としては死語であるが、公的な話し言葉、書き言葉として通用し、後者は基本的に書かれることはまれであることが、その理由である。このことから、言語学においてアラビア語は二言語使い分けの典型的な例とされる。
エジプト方言、シリア方言、レバノン方言などはマスメディアで多用されるためアラブ世界各地で理解される一方、異なる地域同士の住民では方言での会話に支障が出ることもある。また、書き言葉が日常で話されることはほぼ皆無であり、読み書き・演説や報道番組での使用に限定される。従って、非ネイティヴが現地でスムーズな日常の会話を行うためには当地の話し言葉を習得する必要があり、読み書きも習得する場合には現代標準アラビア語と重ねて学習しなければならない。
多くの単語は、三つの子音を語根として分析することができる。そこに、母音や接頭辞、接尾辞、接中辞を付けて、語彙を派生したり、活用したりする。形態論的には屈折語である。
アラビア語の表記には、通常はアラビア文字が用いられる。フスハーはアラビア文字による正書法を持ち、アーンミーヤも文字化する際は一般にアラビア文字が用いられる。ただし、マルタ語はラテン文字による正書法を持つ。以下は、アラビア文字の主な特徴である。
アラビア語を公用語としている国家のうち、アラブ首長国連邦、イエメン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、バーレーン、パレスチナ、ヨルダン、レバノン、エジプト、リビア、チュニジアにおいては国民のほとんどがアラブ人で構成されており、公用語としてのフスハーと日常語としてのアーンミーヤのみを使用している。これはイスラム教徒以外のアラブ人も同様で、たとえばレバノンにはマロン派などのキリスト教徒も多数存在するが、民族的にはアラブ人であるためそのほとんどはフスハーとアラビア語レバノン方言を話す。アルジェリアにおいては国民の大半がアラビア語を話すものの、カビール語などのベルベル語諸語話者も存在する。ただし同国の公用語はアラビア語のみとなっている。アラブ人多数の上でベルベル人がかなりの数存在するのは隣国のモロッコにおいても同様であるが、モロッコでは公用語はアラビア語とベルベル語の2言語体制となっている。モロッコと領有権を争っている西サハラではアラブ語と共にスペイン語も使われる。イラクにおいては北部にクルド人が居住しているためにクルド語も公用語となっているが、アラビア語話者は多数派を占めている。モーリタニアはアラビア語を使用するムーア人が多数を占め、アラビア語が公用語となっているが、南部を中心にアラビア語を使用しない黒人も多く、また旧フランス領だったためフランス語の影響力も強い。スーダンもアラブ系が多数を占めるものの、西部のフール人などのようにアラビア語を使用しない民族も多く存在し、紛争が絶えない。公用語はアラビア語と英語の二言語使用となっている。
こうしたアラブ人が多数を占める国家に対し、住民のほとんどがソマリ語を話すソマリ人であるソマリアや、同じくアファル人とイッサ人が多数を占めるジブチ、スワヒリ語に近いコモロ語を主に使用するコモロなどのような、日常語としてアラビア語をほとんど使用しない地域においてもアラビア語が公用語とされることがある。これはこれら諸国がアラブ諸国との経済的・文化的結びつきが強く、またイスラム教徒がほとんどであるため典礼用言語であるフスハーを理解できるものが多く存在するためである。
アラビア語を公用語としている国家は増加傾向にある。これは、かつてイギリスやフランスの植民地だったアラブ人国家が独立後、公用語を英語やフランス語からアラビア語に変更する傾向が強いためである。特にアフリカにおいては、アラビア語圏以外のほとんどの新独立国が旧宗主国の公用語の使用を継続していることと明確な対比をなしている。こうした公用語の切り替えはアラブ人国家すべてで行われたものの、その深度や速度には国によって違いがみられた。旧英領諸国ではほとんどの国で公用語のアラビア語切り替えが実施されたものの、旧フランス領諸国ではモロッコやモーリタニアのように公用語をフランス語とアラビア語の2言語とする国家がいくつか存在し、アルジェリアのように積極的に言語切り替えが行われた国との差異が目立った。またアルジェリアにおいても、教育課程のアラビア語化は進んだものの官僚など政府の指導層がフランス語話者によって占有されている状況を打破することはできなかった。アラビア語教育によって大衆のアラビア語化は進んだものの、エリート層はフランス語話者のままだったため、この二言語の話者間に階層的な対立が生じた。さらにアルジェリアにおけるアラビア語化はイスラム主義と結びついていたために、イスラム主義の台頭を招き、1990年代のアルジェリア内戦へとつながっていくこととなった。
マルタ共和国のマルタ語は、現代アラビア語口語の一変種である。語彙などの面でヨーロッパ諸語、特にイタリア語からの借用が多く、またラテン文字で綴られる。現代アラビア語口語諸語の中で国家の公用語となっているのはマルタ・アラビア語のみである。
英国委任統治領時代のパレスチナにおいては、英語、アラビア語、ならびにヘブライ語の3か国語が公用語とされた。そして、1948年のイスラエル建国後は、アラビア語とヘブライ語のみがイスラエルの公用語とされ、英語は公用語ではなくなった。しかしながら、ユダヤ系イスラエル人の児童や生徒を対象とした初等教育ならびに中等教育機関においては、公用語であるアラビア語よりも公用語ではない英語の教育を重視している。アラブ系イスラエル人の児童や生徒を対象とした初等教育ならびに中等教育機関においては、ユダヤ系イスラエル人よりもアラビア語やアラブ文学などに割り当てられる時間数が多い。また、イスラエルにおける雇用条件において、多くの場合は「ヘブライ語と英語が話せること」が語学的な条件として課されており、公用語であるアラビア語は全く理解できなくても、イスラエル社会においては特に問題視されない。それ故、イスラエルにおけるアラビア語は、公式には公用語であるにもかかわらず、事実上はアラブ系イスラエル人というマイノリティのみが用いる言語になっている。イスラエルのアラブ人のかなりが、アラビア語のほかにヘブライ語も使用することができる。また、現在のイスラエルにおける通貨や切手などは、ヘブライ語、アラビア語、ならびに、英語の3か国語で記載される。このような状況は建国以来70年近く続いてきたが、ベンヤミン・ネタニヤフ政権は2017年5月7日にアラビア語を公用語から外して国語へと格下げし、ヘブライ語のみを公用語とする閣議決定を行った。この閣議決定に対し、同国のアラブ人政党からは強い反発が起こった。
イスラム教においてアラビア語は典礼用言語となっており、アラビア語のもの以外はクルアーンとして扱われないため、礼拝においては必ずアラビア語によってクルアーンを唱えることとなる。ただしクルアーンが翻訳されたものが注釈書として多くの言語圏において出版されているため、イス