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セクシャルハラスメントとは?

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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

セクシャルハラスメント(英語: sexual harassment)は、日本語で「性的嫌がらせ」という意味で用いられる言葉であり、相手の意に反する「性的言動」によって不利益を受けたり、労働環境などが害されるハラスメントである。セクシュアルハラスメントともいう。日本では、略してセクハラと言われることもある。

以下では特に断り書きがない限り、主に日本での事例について述べる。

目次

  • 1 概念の起源と普及
  • 2 概説
    • 2.1 男性に対するセクハラ
  • 3 実態
    • 3.1 職場
    • 3.2 学校
  • 4 タイプ及び事例
    • 4.1 対価型セクハラ
    • 4.2 環境型セクハラ
    • 4.3 妄想型セクハラ
  • 5 法的観点
  • 6 加害者に対する処分と責任
  • 7 判断の難しさと被疑者保護
    • 7.1 疑似恋愛セクハラと腹いせセクハラ
  • 8 被害者支援
  • 9 日本が関係した事例
    • 9.1 日系企業等が関係した日本国外における事例
      • 9.1.1 米国三菱自動車セクハラ事件
      • 9.1.2 北米トヨタ自動車セクハラ訴訟
      • 9.1.3 有名日本料理店におけるセクハラ訴訟
    • 9.2 日本の教育機関でのセクハラ例
      • 9.2.1 千葉大学
      • 9.2.2 大阪大学
      • 9.2.3 京都教育大学
      • 9.2.4 東京大学
      • 9.2.5 近畿大学
    • 9.3 公益法人でのセクハラ例
      • 9.3.1 日本青年会議所
    • 9.4 その他のセクハラ例
      • 9.4.1 アデランス
      • 9.4.2 協同組合つばさ
  • 10 韓国が関係した事例
    • 10.1 ミスアジア・パシフィックワールドでのセクハラ例
    • 10.2 韓国芸能界におけるセクハラ例
  • 11 世界における事例
    • 11.1 PKO隊員による性交渉の要求
  • 12 パワーハラスメントとの境界線
  • 13 参考文献
  • 14 関連項目
  • 15 出典
  • 16 外部リンク

概念の起源と普及

「セクシャルハラスメント」は1970年代初めにアメリカの女性雑誌『Ms』の編集主幹でラディカル・フェミニストグロリア・スタイネムらが作り出した造語とされる(裁判所による法律との整理は、1845年代から始まっていると主張する学者もいる)。

アメリカでは1986年合衆国最高裁判所がヴィンソン対メリター・セービングス・バンクの裁判で初めて、セクハラ行為が人権法に違反する性差別であると認められた。

日本では、1980年代半ば以降に使用されるようになった。1986年(昭和61年)に起きた西船橋駅ホーム転落死事件で、起訴された女性を支援する女性団体がセクハラという言葉を使い出した。このときは、酔っ払いとそれに絡まれた女性との間で起きた偶発的な刑事事件ということもあり、セクハラという概念も言葉もあまり広がらなかった。

1989年8月に福岡県の出版社に勤務していた晴野まゆみが上司を相手取りセクハラを理由とした日本初の民事裁判を起こした。職場を舞台にした上司と部下との間で起きた事件ということで普遍性があり、これまで日本の職場でセクハラと意識されず、何気なく行われて来た女性に対する行為や発言がセクハラになるのかといった身近な話題となり、テレビや雑誌で盛んに扱われた。こうして、1989年の新語・流行語大賞の新語部門・金賞を「セクシャルハラスメント」が受賞。授賞式で表彰されたのは、2年前の1987年に裁判を終えている西船橋駅ホーム転落死事件の弁護士だった。これは1989年の流行語のきっかけとなった福岡県のセクハラ訴訟が当時は係争中で決着していなかったためである(民事裁判は1992年に原告である晴野側の全面勝訴によって決着した)。

その後、セクハラは一過性の流行語で終わらずに、

  • 1990年に部下に強制猥褻行為をした上司への慰謝料支払命令、福岡事件。
  • 1992年に嘘の異性関係について噂を流布した上司と会社への慰謝料支払い命令。
  • 1994年に問題化した就職氷河期の新卒女子へのセクハラ面接。
  • 1996年に巨額の訴訟で話題になった米国三菱自動車セクハラ事件。
  • 1997年4月からAIU保険会社日本支社が発売開始したセクハラ保険。

など、1990年代を通じて日本語として浸透、定着していった。また1992年に晴野まゆみが上司を相手取りセクハラを理由とした裁判で全面勝訴し、今日のセクハラ防止ガイドラインが生まれる起爆剤にもなった。

政府などの対応としては、男女雇用機会均等法の1997年改正で性的嫌がらせへの配慮を盛り込み、2007年の改正で範囲を拡大、男性への性的嫌がらせも配慮の対象としている。ただし、(雇用機会均等などと比べ)官庁、政治家、裁判所ともにあまり厳罰に処そうといった考えはなく、性的嫌がらせを性差別としては扱っていないという。

概説

セクハラは労働問題の中でも数の多いトラブルであり、労働局に寄せられる男女雇用機会均等法に関する相談では4割を超えている。また、スクール・セクシュアル・ハラスメントも日常的に発生しており、例えば2016年度に「わいせつ行為及びセクシュアル・ハラスメント」で懲戒処分を受けた教育職員は226人であった(男性223人・女性3人)。

職場におけるセクハラにおいては、男女雇用機会均等法に違反するため企業は解決のための措置を取らなければならない。一方で刑法上の規定はないため、加害者に対しては、各組織によって懲戒処分がなされ、悪質なケースでは強制わいせつ罪等で対応する。なお、職場や学校のガイドライン等ではセクハラの定義をやや抽象的に留め、「相手の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言葉や行為」と具体的な言及は避けることがある。この場合はセクハラを防ぐ注意喚起のためのものと考えられ、特定の行為がセクハラに当たるか否かの判定基準は人事院規則などが別に定める。注意喚起の例としては例えば、「職場に限らず一定の集団内で、性的価値観により、快不快の評価が分かれ得るような言動を行ったり、そのような環境を作り出すことを広く指して用いる」といった形が挙げられる。そしてこのような定義を踏まえて、より具体的な事例として、異性にとって性的に不快な環境を作り出すような言動(職場に水着写真を貼るなど)をすることや、自分の行為や自分自身に対して相手が「不快である」と考えているのも関わらず、法令契約の履行以外での接触を要求すること等が定義される。このように定義がやや曖昧になる性質から、行為者が自己の行為をセクシャルハラスメントに当たるものと意識していないこともあり、「認識の相違」と「個人の主観」によって人間関係の悪化が長期化、深刻化する例も見られる。

対象・被対象者の性別については、男性から女性のセクハラのみならず、女性から男性、また女性から女性、さらに、従来は半ば公然と行われてきた「体育会系」の雰囲気の中で行われる男性から男性への性的いじめなど、同性愛を伴う性的嫌がらせもセクハラになる。

今日では、生物学的な性別と性同一性とが異なるために、性別によって文化的・社会的な取扱いが区別されるような場面で、自己の同一性と異なる振る舞いや性役割を要求され精神的苦痛を被るという性同一性障害を抱える人々の問題や、性的指向を同性とする人々すなわち同性愛者に対する差別的言動の問題もセクシャルハラスメントを論ずる際に欠かすことができない視点となりつつある。2014年7月からは同性愛やトランスジェンダーなどLGBTに対する差別的言動もセクハラであるとし、雇用主は措置義務をおうこととなった。

男性に対するセクハラ

用語の本来の意味では性別は無関係だが、実際には「男性から女性」に対する行為を指すことが多い。しかし、2007年4月1日施行の改正男女雇用機会均等法により、「男性・女性から男性」へのセクハラが禁止対象になったほか、雇用管理上必要な「措置」をとるよう事業主に義務付けられた。従来の「配慮義務」より厳しくなり、是正指導に応じない場合は企業名が公表される。したがって、男女問わず従業員が他の従業員に聞こえるように男性の噂話をすることは、環境型セクハラとして違法行為となりうる。

しかし、対象になってからまだ日が浅いこともあり、十分な対策を講じていない企業もあり、部下や同僚の男性に猥談を強要することや、風俗店に無理やり誘うこと、女性従業員の噂話などは組織によっては未だ残っている。そのためセクハラ被害を訴え出ることが恥ずかしい、相談しにくいと感じ、内在化しやすい。またセクハラ被害を訴えると「男らしくない」とセクシュアリティを侮辱されるなど、二次被害や二重の性差別に遭う事もある。ただし、特に二次被害や二重の性差別については、女性に対するセクハラにおいても根強い。

実態

職場

労働局に寄せられたセクハラ相談件数は、2014年度で11,289件であった。このうち相談者の内訳は、女性労働者からが59.6%、男性労働者からが5.5%、事業主からが16.4%、その他からが18.6%である。セクハラ相談件数は、男女雇用機会均等法に関する相談のうち45.4%にあたる。

しかし、一般に性犯罪の被害申告率は低く、盗難や強盗が概ね6割以上であるのに対し、性犯罪は1割強である。そのためセクハラの暗数も相当数存在すると考えられ、実際に例えば、労働政策研究・研修機構によると正社員のセクハラ経験率は34.7%だという。

学校

2016年度にわいせつ行為及びセクハラで懲戒処分を受けた教育職員は226人で過去最大であった。加害者の内訳は、男性が223人、女性が3人であり、被害者の内訳は、自校の児童・生徒(元生徒を含む)が52.6%、自校の教職員が16.8%等である。ただし、特に生徒が被害に遭うケースでは、加害者である教師に口止めされたり、親を心配させまいとしたりと子どもが声を上げづらい構造があり、明るみに出るのは氷山の一角とされる。

タイプ及び事例

厚生労働省の分類では、対価型セクハラと環境型セクハラの2つのタイプに分類される。

対価型セクハラ

職場や学校などにおける立場・同調圧力・階級の上下関係と自身の権限を利用して、下位にある者に対し性的な言動や行為を行い(強要し)、相手が拒否などを示したことによって、降格・解雇、減給や更新拒否などの不利益を与えるセクハラのことである。

パワー・ハラスメント」も参照
  • 酒席で、酌を強要すること。
  • 学校で、教師としての立場を利用して、教師が学生(または学生側の者)に、猥褻行為・性行為・愛人契約の強要すること。
  • 就職活動で、利害関係を利用して、求人側の担当者(または求人側の関係者)が求職者(または求職者の関係者)に、性行為や猥褻行為の強要すること。
  • 職場で、職務上の立場を利用して、上司(または上司側の関係者)が部下(または部下側の者)に、猥褻行為・性行為愛人契約を強要すること。
  • 商取引で、利害関係を利用して、買い手側の関係者が売り手側の関係者に、猥褻行為・性行為・愛人契約を強要すること。

環境型セクハラ

性的言動により相手の環境を悪化させるセクハラのことである。

  • トイレや休憩室、従業員の前などにおける本人及び他人を含めた容姿や恋人関係などに関する噂話。
  • 職場や学校、商業施設などで、ヌードカレンダー、水着ポスター、ポルノ雑誌、お色気漫画など、人によっては不快感を起こすものの掲示や陳列、性的な冗談、容姿、身体などについての会話。
    • 恋愛経験や貞操について執拗に尋ねる。
    • バストや性器のサイズなどについて聞く。
    • 猥談への参加を強要したり、勧めたりする。
  • その他性的なネタへの強制参加
    • 慰安旅行での旅館・ホテルなどでの浴衣などの着用の強要。酌の強要。
    • 性的魅力をアピールするような服装やふるまいを要求する。
    • 上司から部下への誘い。
    • ソープランドなどの風俗店にむりやり誘う。
    • 裸踊りの強要。
  • 結婚ネタ
  • 「(性別)のくせに・・・」「(性別)なら・・・」と言うフレーズ
    • 男性に対して「男のくせに根性がない」「男ならしっかりしろ」と言う。
    • 女性に対して「女のくせに生意気だ」「女ならそろそろ結婚でもすれば」と言う。
  • 職場における男性・女性ランキングを作って公開する。

妄想型セクハラ

厚労省の2つの分類に加え、LINEやSNS、メールなどでの連絡が原因で起こる「妄想型セクハラ」も増加している。妄想型セクハラは「思い込み型セクハラ」や「疑似恋愛型セクハラ」とも言われており、主にLINEなどのSNSで連絡を取っているうちに関係性が深まったと思い込みセクハラ発言に至ることである。妄想型セクハラの場合は、セクハラ加害者にはセクハラの自覚が全くなく、セクハラ被害者の拒否や周囲の仲裁が全く聞こえていないことがある。

  • 休日にも関わらず業務連絡と見せかけて「休日は何をしているんだ」などプライベートに踏み込んで詮索する
  • セクハラ発言を拒絶しているのに「自分のことが好きに違いない」と勘違いして、セクハラを継続して行う

法的観点

法律的には、2つの段階に区分される。

  • 一次被害 - 強要(例。部下・同僚の異性の「意思に反して」性的関係を求める)。意に反するとは、「要求を受け入れないと昇進させない」などと対価を示した場合は相手が拒まなくてもセクハラになりえ、そうでない場合は相手が拒んだ後にしつこく強要した場合がセクハラになるという指針を人事院が作成している。
強制わいせつや強姦(婦女暴行)などの刑事案件についても、場合によってセクハラに含められることがある。
  • 二次被害
    1. 中傷(例。上記を断られた報復に、社内外に事実無根のことを流され、噂を理由に仕事を外されたり、解雇される)
    2. 周囲の同調(例。中傷を信じた周囲の異性達が続々と性交を要求したり、断られた報復に集団で被害者潰しにかかる)
    3. 被害者のPTSD(例。中傷を耳にした人達から白眼視され、いじめられ、心に深い傷を負う)
    4. 被害者の精神障害(例。美しくあることで傷つくと無意識のうちに記憶、美しく装うこと・異性を極度に恐れる。
    5. 被害者の生活の破綻(例。職場でひどい目にあった記憶が強すぎて社会復帰できず、生活が困難になる)
    6. 被害者の人間不信による人間関係の破綻(例。信頼した人々から傷つけられた結果、引きこもり化)

(1)(2)は労働事件(刑事事件)、(3)〜(6)は民事事件(損害賠償請求訴訟)に相当する。

弁護士には得意分野・専門分野があるため、労働問題に強い弁護士の対処が望ましい。

犯罪被害者支援団体は、『被害者が上記(3)〜(6)に陥った場合、被害者が加害者に立ち向かうことは精神的・経済的に不可能であるため、行政主導による被害者救済が求められる。』と主張している。なお、セクシャルハラスメントとしての明確な法律は存在しないため、法的にも未整備な部分が多く、犯罪としての立件がほとんどできないのが現状となっている。

加害者に対する処分と責任

セクハラの概念が知られるきっかけとなった西船橋駅ホーム転落死事件では、男性の都立高校体育科教員によるいやがらせを女性が避けようとして身体を突いたところホーム下に転落し、そこに進入してきた電車に巻き込まれて死亡した。この事件の裁判では女性の正当防衛が認められ、女性の無罪が確定した。

最近ではセクハラの加害者に対する制裁が増えてきており、ニュースでも報道される。一般会社や公務員の就業規則でも禁止や注意が盛り込まれるケースが多く、職場にはセクハラ防止委員会が設置されるようになった。またセクハラを理由に懲戒解雇ないし長期の停職などで処分され、退職を余儀なくされるケースも少なくない。特に教育機関で生徒に対してのセクハラについては懲戒解雇を前提の処分にし、教員免許を抹消すべきだとの批判がある。一方で公立中学ではセクハラ冤罪により懲戒解雇が取り消された事例もある。例えば、生徒にマッサージをしたのがわいせつ目的だとされたが、静岡県の人事委員会は、学校の判断を覆しマッサージ目的だっと事実認定しなおした。セクハラだと騒いで教師に圧力をかけようとする事例を排除するためには、被害者の主観に配慮しつつも、証拠や証言の矛盾点など客観性に配慮した事実認定が欠かせない。逆に、3度もセクハラで問題を起こした人間が理事長になっている学校もあり、特に教授や、理事など権限の強い上層部に対しては処分が非常に甘い(社員公平扱いの原則違反)との批判が強い。

判断の難しさと被疑者保護

「セクハラ」か否かの区別において被害者の主観が重要視されること(ただし、判例では客観性が重要だとされ、一般通常人の判断が基準とされている)を逆手に取って、仕事や人間関係で対立していたり、単に気に入らないといった人間を陥れたり嫌がらせをする為の「便利な言葉」として乱用される場合も少なくない。この場合、「セクハラ」という言葉さえ使えば、客観的に見れば「職場いじめ」にあたる場合でもそれを回避できる為、いっそう問題の解決が困難な状況となっている。悪質な場合は虚偽申告などで貶める事例も存在する。

当初は合意での宴会参加や食事等を、上司から叱責されたり業務上の注意を受けたりした後から「実は嫌だった」となる例や、普段の差し障りないコミュニケーションでさえ、関係がこじれたのちにはセクハラだとなる例がある。これを見極めるには、当時の電子メールや陰口などの精査が必要である。

このような問題点を生じさせないための対策としては、下記が挙げられる。

  • 調査委員会の公平な構成
  • 「notice and hearing」(告知と聴聞)が基本的には必要
  • 被疑者への被害内容の告知・・・ただし事前に被害内容が伝わることによる証拠隠滅や被害申立者に対する圧力防止の必要がある
  • 被疑者の権利に対する配慮・・・「疑わしきは罰せず」の原則

疑似恋愛セクハラと腹いせセクハラ

「セクハラ」とされるものには、「疑似恋愛セクハラ」と「腹いせセクハラ」と呼ばれるものもある。前者は部下の好意があると誤解した上司が起こすセクハラ、後者は、上司から叱られたり振られたり上司が他の部下とも仲よくしていることを知って不愉快になってから、腹いせとして親しかった当時の合意の上でのことを一方的なセクハラであるとでっちあげる訴えである。なお、「疑似恋愛セクハラ」と「腹いせセクハラ訴え」の区別は難しい。

疑似恋愛型セクハラについては、相手(上司)に好意があると誤解したことにつき過失がない場合(部下がちやほやする積極的発言を行い上司を誤解させた場合)はセクハラは成立しない。腹いせセクハラでっち上げは名誉棄損になる可能性があるばかりか、部下から上司を誘っておいて後に嫌だったと罠にはめる「ハニートラップ」の可能性もある。疑似恋愛型セクハラでは、うまくいっていると上司が思い込んで部下にアプローチをしている当初から部下の不平不満が聞かれる。腹いせセクハラでは、仲の良い当時においては、部下からの積極的な言動(アプローチ)があるのみで不満は聞かれず、不仲になった後に「実は初めから嫌だった、断れなかった」と訴え(讒訴)が出される。腹いせの場合は、あら捜しのように軽微なことを針小棒大に訴える傾向があり、判例でもさして悪意のない言動をセクハラだと訴えた場合、部下から好意をほのめかしておいて後になってから合意がなかった・セクハラだと訴えた場合にセクハラの成立が否定されている。セクハラは被害者の主観が重要だと人事院が述べてはいるが、判例では客観性が重要だとされ、一般通常人の判断が基準とされている。最低でもセクハラ認定に際し、当事者双方が親しい間柄にあったかどうかの「経緯」を調べる必要がある。厚生労働省の事業所に対する指針措置では、被害者加害者の主張が異なった場合には、第三者への聞き取り調査などさらなる事実確認が必要である。経緯を調べずに処罰をした場合、会社と訴えた部下の側が、逆に提訴されることもある。。

その他恋愛破綻型セクハラと言うのがあり、真実の恋愛関係が破たんしたのちの上司による交際継続申し出のことをセクハラだと言われるケースである。

被害者支援

菊池 (2010) は、「被害者の不快を加害者に伝えることで速やかな行動改善につながる場合も少なくない。具体的には被害内容と意思表示した手紙を内容証明郵便で送るなどの方法がある。(支援者が被害者と)協働して文案を作成すると良いだろう」と述べた。

また、証拠資料の整理、リーガル・アドバイス、職場の環境調整などの準備とともに、被害者への心理的支援も重要である。

さらに菊池 (2010) は、関係調整の重要性に言及し、「セクハラ被害の回復援助では、多種の関係調整を行う。①関係機関や専門職(弁護士、医師)などのリソースと本人をつなぐ。②加害者との関係調整(例:職場復帰の際の約束事を公正証書化するまでの条件調整の支援を被害者の側にたって行う)。③職場復帰の関係調整(早めから管理職などに二次被害や被害者の反応についての教育も含めた関係調整を折々に行う)」と述べた。

なお、セクハラ被害が心的外傷となり、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) といった症状が出る場合もあり、その際の治療・心理的ケアも重要である(詳細は「心的外傷後ストレス障害 (PTSD) #治療」を参照)。

日本が関係した事例

日系企業等が関係した日本国外における事例

米国三菱自動車セクハラ事件

1996年、MMMA(米国三菱自動車製造)は米国政府機関の雇用機会均等委員会 (EEOC) に公民権法違反で提訴され、「日本企業では、女子社員はゲイシャであることを求められている」との日本文化論、大規模なジャパンバッシング、消費者からの不買運動を経て、最終的には約48億円の支払いで和解。

北米トヨタ自動車セクハラ訴訟

詳細は「北米トヨタ自動車セクハラ訴訟事件」を参照

2006年、北米トヨタ自動車の元社長秘書(日本人女性)が、同社社長(日本人男性)によるセクハラと同社の対応の不備に対して両者などに1億9000万ドルの損害賠償請求訴訟を起こした事例。その後トヨタ側から巨額の和解金(一説には50億円)が支払われた。

有名日本料理店におけるセクハラ訴訟

コムスン事件で問題となったグッドウィル・グループニューヨーク市で経営するレストラン「MEGU」における事例。2006年9月、同店のアジア系女性従業員が、勤務中にセクハラを受けたとして2000万ドルの損害賠償請求訴訟を起こした。AP通信によると、女性は長期に渡って同店の日本人料理長から調理道具や手で乳房女性器を触られたり、性的な言葉をかけられたという。また、同店でのパーティーの際、別の調理師(事後に解雇)により店外に連れ出されレイプされたという(『USFL』2006年9月22日[6])。

日本の教育機関でのセクハラ例

千葉大学

千葉大学は2008年3月17日、女子大学院生にセクハラ行為をしたなどとして、同大大学院融合科学研究科の40代の准教授を同日付で停職12カ月の懲戒処分にしたと発表した。辞職願が提出され31日付で退職。准教授は大学院入試でこの女子院生に不適切な出題も行っていた。同大によると、准教授は昨年6月12日と19日、自宅で女子院生に対し「自分の半年間の恋人になれ」と性的行為を求める発言をした。また、「自分の援助なしでは卒業できない可能性がある」などと力を誇示し、脅迫めいた発言もしていた。

大阪大学

大阪大学は2007年11月20日、医学系研究科の男性教授(47歳)が教え子の女子学生にセクハラ行為をしたとして諭旨解雇処分にしたと発表した。

京都教育大学

2009年2月にコンパで酔った女子学生に対して集団準強姦を行ったとして同年6月2日に京都教育大学の男子学生6名が逮捕された事件(のちに不起訴)について、男子学生の逮捕直後からmixiなどのインターネットで被害者とされた女子学生に対するセクシャルハラスメントが京都教育大学の学生や他大学の学生(例えば立命館大学)により行われた。書き込みを行った学生は各大学の処分を受けた。しかし同種の行為が継続したため「キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・全国ネットワーク」が京都教育大学への申し入れおよび文部科学省への申し入れを行っている。

なお本事件については、事件を理由とする無期停学処分の無効確認を求める裁判を男子学生4名が起こしており、京都地裁および大阪高裁での判決では、集団準強姦でなく同意のもとでの集団猥褻行為であったと認定されており、大学側が強姦事実があったかのように男子学生を取り扱い、名誉を棄損したアカデミックハラスメントの事例としても知られる。

東京大学

関西地区の私立大学に所属する30歳代の女性研究者は、2009年東京大学大学院医学系研究科の48歳の男性医師と知り合い、共同研究を行うようになったが、この医師は社会的地位を背景に、女性研究者に暴力を伴ったセクハラやパワハラを行うようになり、これが元で女性研究者は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥った。女性研究者はこの講師を相手取り神戸地方裁判所に提訴。男性医師は「セクハラではない」と主張したが、2015年7月30日に同地裁は女性研究者の訴えを認め、当該の男性医師に計1,126万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

近畿大学

近畿大学ボクシング部の29歳の男性監督が、特定の女子部員に対し、性的行為を求めるなどのセクハラ行為をしていたことが2017年7月に明らかとなり、当該の監督は自宅待機を命じられた。

公益法人でのセクハラ例

日本青年会議所

1998年7月25日、社団法人日本青年会議所神奈川県横浜市で開催したイベント会場で、客席100人ほどのステージにビキニ姿のコンパニオン2人が水着ショーの後、体にバスタオルを巻きつけてビキニを脱ぎオークションにかけていたとして市民団体などに苦情があった。神奈川人権センターはセクハラ問題として日本JCに対し事実調査と公表を求める申し入れ書を提出し、抗議した。後援した横浜市も事実関係の調査に乗り出し、日本JC側は事実を確認し、謝罪した。

その他のセクハラ例

アデランス

2008年3月に、アデランス大阪市内の店長を務めていた男性が、兵庫県内の店舗の従業員指導に携わった際、当時従業員であった女性に対し、「ノルマを達成できなければ、自分の彼女になるか、研修もしくは転勤だ」などと言って、無理矢理キスをしようとしたり、体を触るなどのセクハラ行為をしていたことが、2015年1月20日、新聞各社により報じられた。女性は警察への被害届提出を同社幹部から止められたと主張。PTSDと診断され休職したのち、2011年9月に退職を余儀なくされた。女性は同社を相手取り、約2,700万円の支払いを求め大阪地裁に提訴していたが、2014年11月28日付で、解決金1,300万円を支払う(うち半分は男性が負担)ことで和解が成立。和解条項には、男性の勤務地や出張先が、女性の居住地域にならないよう同社が努めることも盛り込まれた。

協同組合つばさ

2015年6月には、外国人研修制度上の技能実習で来日し茨城県行方市内のシソ農家で働いていた中国人女性が、セクシャルハラスメントを受けた上、残業代も一部のみにとどまっているなどとして、水戸地方裁判所に当該のシソ農家およびその農家が加盟する受け入れ団体『協同組合つばさ』に対する訴訟を提起。また、この女性を助けようとして受け入れ団体を解雇されたとして、団体の元職員も訴えを起こしている。

韓国が関係した事例

ミスアジア・パシフィックワールドでのセクハラ例

韓国が主催している世界各国の女性を集めたミスコンテストである「2011 ミスアジア・パシフィックワールド」において、韓国人大会関係者が参加している女性達に対して「優勝するために、どうすればいいか分かるだろう」など発言したり、上着を脱がそうとしたり、体に触ってきたりなどのセクハラ行為をおこない、参加女性らが途中で帰国する事件が発生したことが中央日報BBC等により報道された。イギリスやガイアナの代表女性はYouTubeTwitterにおいて大会主催者への怒りの告白動画をアップロードし、大会参加への注意を呼びかけた。これに対し、韓国の大会関係者はセクハラの訴えを否定し、「韓国式挨拶を誤解された」と釈明した。

2014年には、「ミスアジア・パシフィックワールド」で優勝したミャンマーの女性が優勝後に「アルバム発売の資金集めのために財界の大物を接待するように求められた」「頭からつま先まで整形手術を受けるよう圧力をかけられた」と告白した。また、コンテストの主催者からは実際には16歳の年齢を「18歳」と偽るよう求められたことも明かし「(これについては)抗議しなかったことを後悔している」と語った。

韓国芸能界におけるセクハラ例

2009年、韓国人女優のチャン・ジャヨンが自殺。その後、「31人に100回以上性的接待を強要された」と書かれた手紙が発見された。当初警察は筆跡鑑定から本人のものと断定していたが、後に国立科学捜査研究員の鑑定によると別人のものとされた。チャンに性的強要をしたとされる捜査対象者20名がいたが、性的強要のような行為は特別な問題意識なしに慣行的な行為(いつもよくあることで誰の事やらいつのことやら解らない行為)で当事者らの記憶が薄れており証拠がないとして全員不起訴となった。

2010年、当時未成年であったモデルのチェ・ウンジョンに対し、所属事務所の代表が胸を触り、ホテルへ誘うなどのセクハラ行為をしたとして起訴され有罪判決を受けている。

韓国人権委員会が韓国内の女優111人に行ったアンケートによると、60.2%の女優が何らかの接待を強要され、このうち21.5%の女優が性的接待(枕営業)を求められていたという調査結果が出ている。

世界における事例

PKO隊員による性交渉の要求

2015年6月、国連のPKO隊員が支援物資と引き換えにハイチリベア南スーダンなどの現地女性に性交渉を要求していたことが報じられた。訴えは6年間で480件に上り、ハイチ地震 (2010年)の起きたハイチでは220人以上が薬やベビー用品などと引き換えにPKO隊員との性交渉に応じていた。

パワーハラスメントとの境界線

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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2015年9月)

ほとんどの場合、「立場(権力)の強い者」が「立場の弱い者」にセクシャルハラスメントを行う。自身の立場が上であること利用したパワーハラスメントが根底にある。下の立場の者が上の立場の者に対してセクシャルハラスメントを行った例は非常に稀であるため、セクシャルハラスメントだけでなくパワーハラスメントも重要視して考える必要性が指摘されている。

セクハラはパワハラの一種であり、1つの典型例とする説もある。これによると、パワハラ一般は立証が難しく、加害者にも自覚がないため対抗手段が取りにくい場合が多いが、セクハラについては立証しやすく、被害者に有利な法理で、加害者が厳しい処分を受けることに共通認識があるという。しかし根底にはパワーハラスメントあってのセクシャルハラスメントのため、パワーハラスメントを厳しく取締まらなければ、セクシャルハラスメントだけの議論は希薄だと指摘がある。またセクハラは過敏に反応する被害者の問題もあり、セクハラ冤罪論もありうる。

参考文献

関連項目

出典

  1. ^ セクハラの相談先と相談件数|3つのセクハラ対処法まとめ”. あなたの弁護士 (2017年3月27日). 2018年4月20日閲覧。
  2. ^ 『裁判と社会―司法の「常識」再考』著:ダニエル・H・フット 訳:溜箭将之 NTT出版 1994年10月 1ISBN:9784757140950
  3. ^ : Vinson
  4. ^ : Meritor Savings Bank
  5. ^ 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!! (PDF)”. 厚生労働省. 2018年4月26日閲覧。
  6. ^ わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況(教育職員)(平成28年度) (PDF)”. 文部科学省 (2017年12月27
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    出典:wikipedia
    2018/05/18 18:11

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