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ファクシミリとは?

家庭用ファクシミリの一例

ファクシミリ(英語: facsimile)は、インターネットが普及する以前から存在する、通信回線を使用して画像を遠隔地に伝送する機器、あるいは仕組みのこと。呼び名としては、短縮語であるFAX(ファックス)が広く使われている。

インターネットの普及により陳腐化しつつあるが、企業商店、官公庁等で、注文書・見積書などの書類のやり取りに使用されるなど、依然として利用者が存在する。

目次

  • 1 概要
  • 2 名称
  • 3 規格
  • 4 送信受信手順の概略
  • 5 印刷方式
  • 6 歴史
    • 6.1 ベイン: ファクシミリの原型を発明
    • 6.2 カセル: ベイン方式の改良
    • 6.3 ベイクウエル: 現在のファクシミリの基本形を発明
    • 6.4 ハンメル: ベイクウエル方式の改良
    • 6.5 コルンとベラン: 電子式ファクシミリの発明
    • 6.6 ヘル: テレプリンター方式ファクシミリの発明
    • 6.7 日本
      • 6.7.1 丹羽と小林: コルン・ベラン方式の改良
      • 6.7.2 画像データの伝送標準化と回線開放
  • 7 ファクシミリ基本技術の推移
    • 7.1 スキャナ(送信側)
      • 7.1.1 振り子方式
      • 7.1.2 機械走査のドラム回転式
      • 7.1.3 オプチカル・ファイバによる平面走査
      • 7.1.4 フォト・ダイオード・アレイによる固体走査
      • 7.1.5 CCDによる固体走査
      • 7.1.6 密着イメージセンサによる固体走査
      • 7.1.7 フラットベッドタイプのスキャナ
    • 7.2 記録(受信側)
      • 7.2.1 振り子方式
      • 7.2.2 機械走査のドラム回転式
      • 7.2.3 OFT記録
      • 7.2.4 マルチスタイラスによる静電記録
      • 7.2.5 感熱記録
      • 7.2.6 レーザーによる電子写真式記録
      • 7.2.7 熱転写方式の普通紙記録
    • 7.3 データの圧縮
      • 7.3.1 1次元符号化方式(MH)
      • 7.3.2 二次元圧縮方式RAC
      • 7.3.3 2ライン一括符号化方式
      • 7.3.4 ALDC(自動線密度切り替え)
    • 7.4 通信関係
      • 7.4.1 蓄積交換システム
      • 7.4.2 順次自動ポーリング受信
      • 7.4.3 スーパー電送方式
      • 7.4.4 中継同報
      • 7.4.5 ECM(Error Correction Mode : 誤り訂正)
      • 7.4.6 モデムフォールバック・ステップアップ
    • 7.5 機能
      • 7.5.1 自動診断機能
      • 7.5.2 受信側FAXに対応した縮小送信
      • 7.5.3 相手側番号表示
      • 7.5.4 省電力
  • 8 メーカー
    • 8.1 日本
  • 9 類似の装置
  • 10 設置時の注意
  • 11 符号位置
  • 12 脚注
  • 13 関連項目
  • 14 外部リンク

概要

送信側の装置で原稿をスキャンし、デジタルデータに変換する。データ圧縮変調等の信号処理をして通信回線で送信し、受信側で信号を復調して原稿を復元する。通信回線としては、公衆交換電話網が利用されることが多いが、IP電話LANインターネットなどの電話交換機を介さないIP通信網を利用した、InternetFAX2000年代に入り利用されるようになった。市販されているFAXは、電話機と一体になっているものがほとんどである。

日本においては、有名人が結婚等の重大事項を公表する際、本人もしくは所属事務所がテレビ局や新聞社にFAXを送信することが多い。

名称

ラテン語fac simile(同じものを作れ)←{facere(為す)+simile(同一)}が語源である。本来、「FAX」はゼロックス社のファクシミリに附された登録商標であったが、商標の普通名称化により広く使われる言葉となっている。

なお、日本の電波法施行規則における「ファクシミリ」は「電波を利用して、永久的な形に受信するために静止影像を送り、又は受けるための通信設備」と定義されているが(電波法施行規則2条1項23号)、これは船舶向けのラジオファクシミリのことであり、有線電気通信設備としての定義ではない。

規格

ITU-T(旧CCITT)のファクシミリ規格
規格 公称
伝送
時間
A4
1枚
当たり
/ 使用
通信
回線 最大
解像度
dpi 特徴 伝送・変調方式 画像
圧縮
ITU-T勧告
モデム 最大
通信
速度
kbps 端末
特性 伝送
手順 制定年
G1 | 360 | 0.3-
3.4
kHz
音声
回線 | 100×
100 | アナログ伝送 | DSB AM |  | T.2 | T.30 | 1968
G2 | 180 | VSB AM |  | T.3 | 1976
G3 | 60 | 200×
200 | 全てのG3が対応 | V.27
ter | 4.8 | MH | T.4 | 1980
30 | 家庭用 | V.29 | 9.6 | 
20 | 業務用 | V.17 | 14.4 | MR | 
Super
G3 | 3 |  | V.34 | 33.6 | MMR
JBIG | 
カラーG3 |  |  |  |  | JPEG | T.30E | 
インバンドIP
FAX |  | IP電話 | VoIPでモデム音声を伝送 | V.29 | 9.6 | MH |  | 
Internet FAX |  | Internet Protocol |  | internet facsimile protocolパケットリアルタイム伝送 | MH
MR
MMR
JBIG | T.38 | 1998
基本的な機能を規定 | 電子メールTIFF添付ファイルとして
画像データSMTP
蓄積交換 | T.37 | Simple mode
送達確認・機器間の能力確認などの双方向
カラー伝送などの付加機能を規定 | MH
MR
MMR
JBIG
JPEG | Full mode | 1999
同一ローカルネットワーク内で
メールサーバ不要のリアルタイム直接通信 | ダイレクトSMTP | 2007
G4 | 3 | ISDN | 400×
400 | G3の機能も備える
しかし通信相手がひかり電話回線の場合
G3モードでも通信が出来ない制約がある | デジ
タル
モード | 64 | MMR
JBIG | T.6
T.503
T.521
T.563 | T.62
T.70
T.62bis | 1988

2011年現在では、家庭用・業務用とも、一般の電話回線やIP電話を利用したG3 FAXがほとんどである。同一メーカー同士の通信の場合には、メーカー独自の手法でデータを圧縮して通信時間の短縮を行っていることが多い。

送信受信手順の概略

原稿の読み取り部は、イメージスキャナである。

  1. 精細度や原稿の濃さを設定し相手先電話番号を入力する。業務用の複合機ではここで用紙を1枚ずつ送り込んで、イメージ情報として読み取られ、一度内部のメモリに記憶される。
  2. 交換機へダイヤル信号を送出し、相手のFAXに発信する。
  3. 受信側が応答しなかったり、話中の場合は、一定時間経過後にリダイヤルする。
  4. 送信側から受信側へ、CNG信号(CalliNG。0.5秒間の1,100Hzのトーンと3秒間の無音の繰り返し。「ポー」「ポー」(繰り返し)と聞こえ、多くの機材では回線接続前から発している)を送出する。
  5. 回線接続後、受信側では送信側からのCNG信号を検出し、必要に応じて電話/FAX切替器を動作させてFAX装置を起動。CED信号(受信側から送られる「ピー」と聞こえる2,100Hzの連続音。FAX専用の電話回線に接続されている場合、CNGの有無にかかわらずCED信号を出す装置も少なくない)を発して応答する。
  6. その後、送信側・受信側で互いに実装されている能力情報の受け渡しを行い利用可能な最大能力での通信速度・画像データの符号化・符号訂正方式などを決定、トレーニングによりモデムの調整を行う。
  7. 方式にあわせた画像信号形式で送信側からデータを送信する。家庭用など小型の機器はここで読み込みを開始し、同時にデータを送信する。
  8. 受信側のFAXからの受信完了信号を確認しながら送信側はデータを次々送信する。エラーの場合は、再送信を行う(送信側の設定で再送信せずに終了させることもできる)。
  9. 送信終了または、相手から一定時間応答無い場合、回線を切断する。
  10. 受信側では記録紙に印刷を行う(家庭用のように受信と同時に印刷する機種もあれば、業務用のように受信を完了した時点で印刷を開始する機種もある)。記録紙が切れた場合には内蔵メモリである程度まで受信(代行受信)を行う(対応機種のみ。代行受信できない機種の場合は異常終了として通信を切断する)。また、受信中は内蔵メモリで記録しておき、他のFAXやパソコンなどへの転送、ディスプレイでの確認を行った上で、必要なものだけ印刷することが可能なものもある。
  11. 送信側では、正常終了または異常終了のメッセージが出力される。

印刷方式

印刷部は、プリンターである。

初期には、放電破壊式が用いられた。表面に黒色の導電層と白色絶縁層の2層を塗布した放電破壊紙を使用し、走査を行う記録針に高圧を印加して導電層との間で放電させる。これにより表面の絶縁層を除去して内面の黒色を浮きだたせ、文字を印刷する物だった。印字中は放電に伴いオゾン臭がするという欠点があった。

暫くして、感熱紙を使用した感熱方式が登場するが、用紙の保存性が悪い物がほとんどであった(一部ではあるが保存性を向上させた感熱紙も存在した)。

この後、ヘリウム・ネオンレーザー管が普及すると、レーザーを用いた印刷方式が登場した。直接、印画紙やフィルムにレーザーを当てて感光させる物等は階調を必要とする写真電送ファックスとして普及した。

後に半導体レーザー素子が普及すると一気に低価格化が進み、レーザープリンターが普及するに至り、レーザー方式の複写機・プリンター・スキャナなどとの複合機が企業などで使用されるようになった。

印刷単価よりも機器の価格の安さが優先される家庭用は、当初は感熱紙タイプが用いられていたが、最近販売されている普通紙タイプのものは、単色の場合は熱転写インクリボン方式、カラー複合機の場合はインクジェット方式が使用されることが多い。

歴史

電信、電話など通信の発達と共に画像電送の要望も高まり、19世紀半ばには開発が始められた。

ファクシミリが発明されたのは、電話よりも30年ほど早い、1843年のことである。

ベイン: ファクシミリの原型を発明

1843年、イギリス人のアレクサンダー・ベインがファクシミリの原型を発明し、特許を取得した。

送信側では、振り子の振幅方向に平行な下部側面に絶縁板をセットする。その絶縁板上に金属の文字を置き、振り子の先に絶縁板に接触する金属針を取り付けて、左右に振り子を動かす。接触針は絶縁板を左右に移動して、絶縁部分に接触している時は“非導通”、金属部分に接触すると“導通”の信号を送る。1回の振幅毎に絶縁板を上方(又は下方)に少しずつ移動させて、絶縁板全体を走査させる。

受信側でも同様な振り子と接触針を設けて、化学反応によって変色する記録紙に接触針を走査させる。“導通”の信号のときに電流を流して、記録紙を変色させて送信側の絶縁板上の金属文字を再生させる。

送信側の読取走査と受信側の記録走査は、それぞれ別の振り子を利用しているので同期が難しく、記録位置にずれが発生して画像が乱れ実用化されなかった。

カセル: ベイン方式の改良

ベインの同期が難しいという欠点を改良したのがイタリア人カセル(Giovanni Caselli)である。1862年、カセルは送信側から振り子の同期信号を送り、受信側の振り子を電磁マグネットで制御して同期を取ることを発明した(Pantelegraph)。フランス郵便・電信公社で採用され、手書きの文字や図面や絵等の電送に使用された。用紙は111mm×27mmで、約25文字程度が電送でき、主に銀行のサイン照合に利用された。

ベイクウエル: 現在のファクシミリの基本形を発明

1848年、イギリス人ベイクウエル(Frederick Collier Bakewell)は、ベインの発明を大きく改良し、現在のファクシミリの基本形を発明した。

1851年のロンドン万国博覧会で展示された。送信側は、金属円筒に特殊な絶縁インクで書いた金属箔を巻き付ける。円筒の円周方向に固定して接触させた金属針(接触針)を設け、円筒を回転させて“導通”、“非導通”の信号を得る。円筒を回転しながら、接触針を円筒の片方の端から他端にむかって軸方向に少しずつ移動させることによって、円周面(金属箔)全体を走査して受信側に送る。受信側も送信側と同じ大きさの金属円筒と接触針を設け、電流が流れたときに変色する化学紙を巻き付け、送信側に同期して回転させる。送信側の導通・非導通の信号は記録紙に濃淡となって表示される。受信側の円筒の回転速度やスタート・ストップを送信側の円筒と同期することが難しく実用化されなかった。

ハンメル: ベイクウエル方式の改良

1898年、アメリカ人ハンメル(Ernest A. Hummel)はベイクウエルの欠点を改良した装置(Telediagraph)を発明した。8インチ径の円筒を用い、送信側の円筒が1周回転する毎に同期信号を発生し、その信号毎に接触針を軸方向に1/56インチ移動していく。受信側では送信側の同期信号を受けて同様な方法で円筒と接触針を制御して同期を取る。同時に送信原稿の信号を受けて記録する。送信原稿は薄い金属箔に非導通のワニスで記載し、受信側では2枚の白紙に挟まれたカーボン紙に記録する。原稿サイズは最大8×6インチ(203mm×152mm)で送信時間は20 - 30分、いくつかの米国新聞社で採用された。

コルンとベラン: 電子式ファクシミリの発明

その後、1876年にベル(Alexander Graham Bell)により電話が発明され、更に、1883年にエジソンにより真空管が発明、更に真空管から光電管が発明された。

1906年、ドイツ人コルン(Arthur Korn)とフランス人ベラン(Edouard Belin)がほぼ同時に、同様な方法で写真の電送に成功した。送信側の円筒に巻き付けていた金属箔を写真やイラスト、文字等が書かれた用紙に変え、接触針の代わりに光電管を使用した。回転するドラムに巻き付けた用紙の小さな一点にレンズで焦点を合わせて、光電管に光を送る。固定したレンズと光電管をドラムの軸方向に少しずつ移動させる。用紙に書かれた文字やイラスト等の“白”と“黒”およびその中間色の部分は光電管によって色の濃さに比例した電気信号に変わり、その信号を電話回線で送る。受信側では送信側と同期して円筒を回転させ、円筒に巻いた印画紙に、送られてきた信号に基づいた光を当てて感光させる。写真の中間調(ハーフトーン)電送を実現させた。

コルン式もベラン式も、両方の円筒(ドラム)の回転を一致(同期)させるために、送受信それぞれ別の2個の音叉を使い、その振動に合わせて両方のモーターの回転数を同じにするという原理を使っていた。送信側と受信側の温度や湿度の違いで、音叉の周波数が微妙に変わるためにモーターの回転数に誤差が生じ、画像が乱れるという問題があった。

コルンのシステム(photoelectric telephotography)は1910年からパリ・ロンドン・ベルリン間を電話回線経由で結ばれて運用され、ベランのシステム(Belinograph)は1930年代・1940年代にニュースメディアで使用された。

その後、日本電気の丹羽保次郎と小林正次が画期的なFAXの技術を開発(後述)し、1920年代後半から実運用が開始された。

ヘル: テレプリンター方式ファクシミリの発明

1929年、ドイツ人ヘル(Rudolf Hell)はテレプリンター方式をファクシミリに採用した新しい方式(Hellschreiber)を発明した。

タイプライタ型のキーボードで文字を入力する。その文字を7×7ドットのパターン(ピクセル)に分解して左側のドット列から順次ON-OFF信号として送信する。受信側ではカーボンコピー紙と記録紙を重ねたテープを円筒に接触させ、円筒の回転に合わせて移動させる。回転する円筒には螺旋状に等間隔な小さな突起が連なり、この突起列は円筒を2周している。円筒と記録用のテープが接する箇所にハンマーがセットされ、受信したON信号によりハンマーで円筒をヒットすると円筒の小さな突起部分がカーボン紙から記録紙に転写される。記録された文字は傾いているが充分可視、判読できる。有線、無線に対応できること、通信系のノイズや歪み、電文の漏洩(秘密の保持)に対して強いことで、1930年代の第2次世界大戦まではポータブルな装置(Feld-Hell)がドイツ軍に使用された。その後は1980年代までニュースの電送に使用された。

日本

日本では1924年(大正13年)6月、大阪毎日新聞東京日日新聞が日本で初めてドイツからコルン式の電送写真機を3台購入したが不安定。次いで、朝日新聞が1928年(昭和3年)6月フランスからベラン式の電送機を3台購入。実験は成功したが、いずれも画像乱れの問題があり、実用化されなかった。

丹羽と小林: コルン・ベラン方式の改良

NE式写真電送装置の送信装置。国立科学博物館の展示。
NE式写真電送装置の受信装置。国立科学博物館の展示。

1928年、日本電気の丹羽保次郎とその部下、小林正次はベラン式やコルン式の同期ずれによる画像乱れを改良したNE式写真電送機を開発した。NE式は在野の発明家安藤博による「同期検定装置」を採用。送信側の回転ドラムを交流モーターで回し、その交流を受信側に送って記録用のモーターを回し、電流の変化を真空管で光の変化に変換し光学的に同期を見ることで画像に乱れなく写真を電送出来た。大阪毎日新聞がNE式を採用した。

1928年11月10日に京都御所で行われた昭和天皇の即位礼を、京都から東京に伝送したのが実用化第1号であった。即位礼の時、速報を大阪毎日新聞社と朝日新聞社がかって出た。

しかし、ベラン式やコルン式では、信号の同期がとれないため画像が歪んでしまい、国は歪んだ画像を文書に載せ公開することを禁止する法律を制定した。朝日新聞社にドイツのFAXの技術者が、大阪毎日新聞社に当時の日本電気の技術者が就き、両社とも試験時はまったく成功せず、大阪毎日新聞社が本番のとき、初めて成功した。

朝日新聞社は、大阪毎日新聞社が速報を出した数時間後に、やっと成功した。

その後、NE式は新聞社から始まり官公庁や大企業で専用回線を使用した写真電送に使用され、一般向けでは逓信省が1930年(昭和5年)に「写真電報」という名でサービスを開始した。

1936年に開催されたベルリンオリンピックではベルリン - 東京間に敷設された短波通信回線により電送された写真が新聞紙面を飾り、それまでの飛行機便による速報写真は役目を終えていった。

1937年(昭和12年)にNE式は携帯端末となり、日中戦争の報道に使用された。NECの無線技術は高く評価され、後に日本陸軍の無線・通信設備を独占した。

戦後は、逓信省による東京 - 大阪間の公衆模写電信業務、電電公社の電報、気象庁の天気図、国鉄(現JR)による連絡指示事項を全国の駅に一斉同報、警察の手配写真、新聞報道の写真や記事伝送などに利用された。

画像データの伝送標準化と回線開放

FAXの普及が急速に進んだのはFAX画像データ伝送の全世界標準化と電話回線のデータ通信への開放である。

CCITT(現 ITU-T)において国際的なFAXの画像データ伝送方法(プロトコル)についての標準化が審議された。

最初に、1960年(昭和35年)に前述のコルンやベラン、小林らが開発した円筒・機械式走査の『写真電送装置の標準化』が行われた。

円筒の直径は66・70・88mmの3種が選定され、走査ピッチ(円筒軸方向の移動幅)は円筒直径を協約数(264または352)で除した数値(直径66mmで協約数264の場合の走査ピッチは0.25mm)とした。この規定により協約数が同一であれば、円筒径が異なる送受信機間でも画像乱れの無い通信が可能となる。その他、ドラムの回転速度(60・90・120・150rpmの4種)とその誤差、同期や位相、振幅変調や周波数変調等について勧告が出された。

平面走査タイプのスキャナや新しい記録方式の開発に対応して、1968年(昭和43年)G1規格(電話回線、データ圧縮無しでA4サイズ原稿を6分で送信)が勧告された。

G1規格は走査線密度は3.85本/mm、電話回線での走査線周波数は180本/分(3本/秒)、振幅変調(AM : Amplitude Modulation)と周波数変調(FM : Frequency Modulation)について規定している。スキャナで得られる画像信号はアナログで、振幅変調で送信する場合は、搬送周波数1,300 - 1,900Hzの範囲内で白を最大振幅、黒を最小振幅と定めている。周波数変調で送信する場合は、白が搬送周波数-400Hz、黒が搬送周波数+400Hzの範囲内と規定され、交換回線経由での搬送周波数は1,700Hzと規定されている。

1971年(昭和46年)の特定通信回線、1972年(昭和47年)の公衆通信回線を利用した通信の自由化(第1次通信回線開放)とともに、電話回線がデータ通信やFAX通信に広く利用され、東方電機(後の松下電送)・NEC東芝東京航空計器日本無線等が競ってFAXのG1適用機を商品化した。

さらに、1976年(昭和51年)にA4サイズの原稿を3分で送信するG2規格が勧告された。

走査線密度はG1規格と同じ3.85本/mmで、走査線周波数を360本/分にし、2倍の速度の標準化をしている。

画像信号のデジタル化と伝送時間を短縮するデータ圧縮技術が実用化されて、1980年(昭和55年)にA4サイズの原稿を1分で送信するG3規格が勧告された(数回の改訂があり最新版は2003年7月)。対象とする用紙はA4・B4・A3・レターサイズ・リーガルサイズで、その短辺幅を考慮して、走査幅は215・255・303mmの3種を規定している。走査の送り方向の走査線密度(垂直方向)は3.85本/mm(G1・G2を踏襲)、オプションとして7.7本/mm・15.4本/mmを規格化している。走査方向(水平方向)の信号はG1・G2規格ではアナログであるが、G3規格では細かく分割した画素単位(8画素/mm)で白と黒の2値にデジタル化される。オプションとしてインチ系の規格もあり、走査の送り方向(垂直方向)は100・200・300・400・600・800・1,200本/1インチ(25.4mm)の7種が、走査方向(水平方向)は100・200・300・400・600・1,200画素/1インチ(25.4mm)の6種が規格化されている。画像データのデジタル化にともない、データ圧縮や誤り訂正の技術やFAXにメモリーを内蔵しての種々の機能(一斉同報、機密保護通信、ポーリング受信、時刻指定通信、マルチドロップ、メモリー間通信等)が開発された。

G3規格ではオプションとして1次元符号化と2次元符号化、拡張2次元符号化によるデータ圧縮やECM(Error Correction Mode)などを規定することにより、1分送信を実現している。

1984年(昭和59年)にFAXデータを高速デジタル回線で送信するための標準化、G4規格が勧告された。

G4規格はG3規格を拡張して回線交換公衆データ網(CSPDN)、パケット交換公衆データ網(PSPDN)、ISDNに対応した規格である。

以上の規格の制定や回線開放と共に量産とコストダウンが進み、官庁や新聞社から大企業、さらに中小企業や個人へと使用が拡大した。

日本電信電話公社が販売していたミニファクス MF1

1981年には日本電信電話公社(電電公社)により、通信料金の安いファクシミリ通信網(Fネット)が開始された。同時に日本電気、日立製作所、富士通、松下電送、東芝が分担開発したミニファックスMF-1が電電公社から発売され、ヒット商品となった。1984年にはG3規格摘要の改良機MF-2を開発・販売を開始した,。

その間、現在の主力であるG3ファクスが開発され、また1985年電話機を始めとする端末設備の接続が自由化(端末の自由化)されると、中小企業や商店などで急速にファクスが普及し始めるとともに、パーソナルコンピュータなどのFAX内蔵モデムが登場する。

1988年に開催されたソウルオリンピックを目前に高解像度のカラーイメージスキャナーが登場し、同時に日本の主要都市に光ファイバーが敷設され、デジタル通信回線により高解像度の電送された写真が地方新聞社に送られカラー写真が紙面を飾った。

1990年代に入ると、コードレス留守番電話機と結合された形で、一般家庭でも使われるようになった。また、ファクシミリの機能を活用しあらかじめ決められたコード番号を入力することで様々な情報を受信することが可能なFAXサービスの提供が主な企業より行われた。

ファクシミリ基本技術の推移

スキャナ(送信側)

振り子方式

1843年、ベインは振り子の振幅方向に平行な下部側面に絶縁板をセット、その絶縁板上に金属の文字を置き、振り子の先に絶縁板に接触する金属針を取り付けて、左右に振り子を動かす方式を発明した。振り子の先の接触針は絶縁板を左右に移動して、絶縁部分に接触している時は“非導通”、金属部分に接触すると“導通”の信号を送る。1回の振幅毎に絶縁板を上方(又は下方)に少しずつ移動させて、絶縁板全体を走査させる。送信側の読取走査と受信側の記録走査は、それぞれ別の振り子を利用しているので同期が難しく、記録位置にずれが発生して画像が乱れ実用化されなかった。

1862年、カセルはベインの同期が難しいという欠点を改良した。1862年、カセルは送信側から振り子の同期信号を送り、受信側の振り子を電磁マグネットで制御して同期を取ることを発明した(Pantelegraph)。フランス郵便・電信公社で採用され、手書きの文字や図面や絵等の電送に使用された。

機械走査のドラム回転式

1848年、ベイクウエルは金属円筒に特殊な絶縁インクで書いた金属箔を巻き付け、金属針を接触させて、円筒を回転させて“導通”、“非導通”の信号を得る。円筒を回転しながら、接触針を円筒の片方の端から他端にむかって軸方向に少しずつ移動させることによって、円周面(金属箔)全体を走査(スキャン)してその信号を送信した。

1906年、コルンとベランはイラスト、文字等が書かれた用紙を回転する円筒に巻き付け、用紙の一点にレンズで焦点を合わせて、光電管に光を送る。固定したレンズと光電管をドラムの軸方向に少しずつ移動させて全体を走査する。用紙に書かれた文字やイラスト等の“白”と“黒”およびその中間色の部分を光電管によって色の濃さに比例した電気信号に変えて送信する。

ドラム回転式は原稿を1枚ずつセットするので操作が煩雑で多数の原稿に時間を要する等の問題があり、平面走査による操作性の改善が求められていた。

オプチカル・ファイバによる平面走査

オプティカル・ファイバは極細に引き延ばした糸状のガラスである。そのガラス糸の端面に光を当てると光は直進し、ほとんどロス無く他端に到達する。そのファイバ約1,500本を横(原稿幅)一列に並べて、読み取りする原稿に接触させる。原稿に光を当てて白・黒の反射光を対応する1,500本のオプティカル・ファイバで反対側に送る。反対側の終端はセンサ側で、配列の順序はそのままで円形に固定し、その円形に対向して円盤を配置、モータで円盤を回転する。円盤にはファイバ終端の円形に相当する位置に1本のファイバがセットしてあり、円盤の回転により1,500本のファイバをスキャンする。ファイバの他端から出た光はフォト・マルチプライア(光電子増倍管)で電気信号に変換される。このオプティカル・ファイバはライン・サークル・コンバータと呼ばれ、オリンパス光学が開発した。

フォト・ダイオード・アレイによる固体走査

原稿に蛍光灯の光を当てレンズでフォト・ダイオード・アレイに焦点する。アレイはフォトダイオード512個を一列に並べてLSI化したものである。主走査方向256mm幅の原稿を4分割し4個のフォトダイオードアレイ面に焦点を合わせる。4×512個のフォトダイオードの出力を順次取り出すことにより1ラインの画像信号をスキャンする。8pel/mmの解像度を得る。

CCDによる固体走査

原稿に蛍光灯で光を当てレンズで一列に並べたフォトダイオードに焦点を合わせる。各フォトダイオードに対応してCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)が配置されている。フォトダイオードが受けた光の強さを対応するCCDに伝えて記憶し、CCDを順次読み出すことによりスキャンする。

密着イメージセンサによる固体走査

照明を蛍光ランプからLEDアレイに変えて長寿命化、屈折率分布型レンズアレイを使用して光路長を30cmから1cmに短縮、センサにCdSタイプを使用したスキャナが開発された。大幅な小型化が図られ、読み取り部のユニット化が実現した。

完全な密着イメージセンサは京セラが1996年に発売したのが最初で、その後各社が開発し、各社のファックスで広く採用された。

フラットベッドタイプのスキャナ

本や雑誌、薄い用紙や小さい用紙等の原稿をガラス面に伏せてセットしてスキャンする。現在のコピーマシーンで採用されている自動給紙機構を持つ高性能ファックスが出現した。

記録(受信側)

振り子方式

1843年、ベインは振り子の振幅方向に平行な下部側面に接触針を設けて、化学反応によって変色する記録紙に接触針を走査させた。“導通”の信号のときに電流を流して、記録紙を変色させて送信側の絶縁板上の金属文字を再生させる。

機械走査のドラム回転式

1848年ベイクウエルは金属円筒に送信側と同じ大きさの金属円筒と接触針を設け、電流が流れたときに変色する化学紙を巻き付け、送信側に同期して回転させる。送信側の導通・非導通の信号は記録紙に濃淡となって表示された。

1906年、コルンとベランは送信側と同期して円筒を回転させ、円筒に巻いた印画紙に、送られてきた信号に基づいた光を当てて感光させた。写真の中間調(ハーフトーン)電送を実現させた。

OFT記録

OFT(Optical Fiber Tube)は表示面にオプティカル・ファイバ(極細に引き延ばした糸状のガラス)を束にして板状にしたプレートを使用したCRT(ブラウン管)である。内面に塗布された蛍光体に電子が衝突して発光し、ファイバを直進して表示面に出てくる。表示面に記録紙を密着して感光させる。一般のCRTは光が発散するが、OFTではファイバの方向へ光が直進するので、レンズにより焦点を合わせる効果と同様な解像度の良い画質となる。FAXに使用するOFTは表示面が扁平な形状で、横幅は用紙の幅(A4の場合約210mm)、縦方向は約1cmである。

記録用紙(ZnO紙)を帯電器に通した後、OFTのファイバー・プレートに密着して少しずつ移動する。帯電した用紙はOFT表示面からの光に当たったところが放電(露光)して潜像をつくり、次工程で黒色微細粉をいれた液体で湿したローラと接触(液体現像 : ローラ現像)させることにより、記録紙の帯電していない箇所に黒色粉が付く(現像、定着)。

マルチスタイラスによる静電記録

マルチスタイラスは32本の針状電極を微細間隔で一直線に並べてブロック化したものである。そのブロックを64個並べて1列2,048本とし、静電記録紙に密着させる。白・黒の信号により金属針の電圧をオンオフして記録紙に帯電させて潜像をつくる。記録紙を現像器に通すと帯電した箇所に黒色微細粉が付く。その記録紙をローラに通して圧力をかけ、黒色微細粉を紙の繊維間に押し込んで定着させる。

感熱記録

感熱記録紙は熱により黒色を発色する。FAXの場合は8個/mmの間隔で横一線に並べた発熱体(サーマルヘッド)を記録紙に密着させて画像を得る。多くの普及型FAXで採用されている。構造が簡単でコストが安いが、記録紙が長期保存により退色する短所がある。

レーザーによる電子写真式記録

感光ドラムを「帯電」させ、レーザーで照射すると、照射された箇所の電荷が放電して電荷像(潜像)を作る。帯電させた黒色の微細な粉末(トナー)を感光ドラムに近づけると電荷のない部分にのみトナーが付着する(「現像」)。感光ドラムに用紙を押しつけて、トナーを用紙に「転写」する。ドラムを通過した用紙に強いフラッシュ光を当てトナーを用紙に溶着させて「定着」をする。印字品質が良く印刷速度が速いが、複雑な構造で、コストが高い。現在ではレーザー・プリンタで使用されている。

熱転写方式の普通紙記録

普通紙の上にフィルム状の熱転写リボンを重ねて発熱体(サーマルヘッド)に接触させると、熱が加わった箇所にリボンの色(FAXの場合は黒)が転写される。初期のFAXはロール紙が使用されていたが、最近ではA4またはB4サイズのカット紙が使用されている。

データの圧縮

1次元符号化方式(MH)

詳細は「MH符号」を参照

1ラインごとに画像データを処理してデータを圧縮する符号化方式である。一般の文書の画素データ(pel)は黒または白の連続が多いことを利用したデータの圧縮方法である。黒(または白)画素の連続した数(ランレングスという)をコードに変換して送信し、受信側で元の画素に復元する。出現頻度の高いランレングスから順番に短いコードに変換して、画像データを符号化することにより、送信データを短く(圧縮)することができ、送信時間を短縮することができる。FAXでは従来の1/6になりA4原稿を約1分で電送できる。

1980年CCITTにおいて、G3規格の中でMH(Modified Huffman)符号化方式としてランレングスに対するコードが標準化され、「1次元符号化方式」として制定された。

二次元圧縮方式RAC

文字や簡単な図形が中心の原稿は、画像データの上の行と下の行はほとんど同じで、変化は少ない。この性質を利用してデータ量の大幅な圧縮を図ったのがRAC(Relative Address Coding)である。RACは下の画像データを一段上のデータ(参照ライン)と比較して、変化している箇所を検出し、その位置を符号化してデータ圧縮をする方式である。

参照ラインのデータが圧縮なしの場合にMR(Modified Read)方式、参照ラインのデータがMH方式(上記「1次元符号化方式」)で圧縮されている場合はMMR(Modified Modified Read)方式という。1980年CCITTによるG3規格の中では上記「1次元符号化方式」のオプションとして「2次元符号化方式」として制定された。

2ライン一括符号化方式

1次元符号化方式(MH)は“白”と“黒”の2種の変化であるが、この方式は二ラインの“白・白”、“白・黒”、“黒・白”、“黒・黒”の4つの組み合わせがある。この組み合わせの変化とランレングスのデータを送信する。2走査線一括ランレングス符号化方式とも呼ばれている。

ALDC(自動線密度切り替え)

ファクシミリのG3規格には標準モードとオプションとしてファインモードがある。標準モードでは装置の縦方向(副走査)はmm当たり3.85ライン、ファインモードで7.7ラインであり解像度が良い。しかし、ファインモードはデータ量が2倍で、伝送時間が2倍長くなるという短所がある。ALDC(Adaptive Line Dencity Control)は、複雑な図や細かい文字かどうかを送信データのランレングスで判定してファインモードと標準モードに自動的に切り替える機能である。

通信関係

蓄積交換システム

FAXの送信データを蓄積交換装置に送ってメモリーし、後宛先FAXに送信する。1979年に商品化された蓄積交換装置は現在のFAXへ継承されている下記のように多数の機能を実現している。

自動送信
OMRシートやワンタッチキーにより自動送信する
同報サービス
複数のFAXに同一電文を送信する
列信サービス
受信した複数枚の原稿を纏めて送信する
優先サービス
優先度の高い電文を先に宛先のFAXに送信する
代表サービス
複数のFAXをグループ化して、一つの電話番号で送信し、空いているFAXで受信できる
機密保護サービス
受信側FAXのパスワード入力により送信する
代行サービス
宛先のFAXが障害等で受信できない場合、予め設定されている他のFAXへ送信、又はメモリーに一時蓄積する
通信証明サービス
送信が完了した文書に送信済みスタンプを、受信した文書に受信時間等を印字する
トレースサービス
電文の状態を追跡させる

上記の機能は1982年にはフロッピー・ディスク内蔵のファクシミリに受け継がれ、1986年にはRAMを画像メモリーとしたファクシミリ引き継がれた。

順次自動ポーリング受信

受信側のFAXから要求して送信側FAXのデータを送信させる機能である。受信側FAXのキー操作により、登録されたFAXに接続し、文書等を送信させて受信する。電話料金が安価になる遠距離・夜間等の通信に利用された。1980年に実用化された。その後、1984年以降では、メモリーを内蔵するFAXが商品化され、同報装置無しでこの機能を実現した。

スーパー電送方式

FAXの画像データをメモリに蓄積し、宛先のFAXのメモリに高速で伝送する。1982年に世界で初めてフロッピーディスク内蔵のFAXが商品化され、A4サイズを世界最高速の9秒で電送(G3規格は1分)した。この方式を「スーパー伝送」と呼んだ。電話回線を利用してのファイル転送の先駆けとなった。

中継同報

同報先の1台のFAXにデータを送信し、そのFAXから近隣のFAXに同報する。国際回線や東京・大阪間等の遠隔地の多数のFAXに同報する場合に効率が良く、低コストで伝送できるシステムである。1982年に商品化された。

ECM(Error Correction Mode : 誤り訂正)

FAXの画像データを圧縮して送信する際、途中の通信回線でノイズやひずみ等でデータが間違った場合、受信した画像が大きく乱れる。この対策として、受信データの間違いを修正する方法がECMである。FAXの画像データを分割して、その一つ一つの後に数ビットの補正データを附加して送信する。受信側では受信した画像データと補正データを照合

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出典:wikipedia
2020/02/20 08:03

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