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ブタとは?

ブタ
ブタ

分類
 | : | 動物界 Animalia
 | : | 脊索動物門 Chordata
亜門 | : | 脊椎動物亜門 Vertebrata
 | : | 哺乳綱 Mammalia
 | : | 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目 | : | イノシシ亜目 Suina
 | : | イノシシ科 Suidae
 | : | イノシシ属 Sus
 | : | イノシシ S. scrofa
亜種 | : | ブタ S. scrofa domesticus

学名
Sus scrofa domesticus
和名
ブタ
英名
Pig
豚の剥製
(岐阜市畜産センターのビジターハウス内に展示)
子豚
(岐阜市畜産センターにて)
仔豚に母乳を与える豚
豚小屋で飼育されている放牧豚

ブタ(、学名:Sus scrofa domesticus(仮名転写:スース・スクローファ・ドメスティクス)、英名:pig)は、哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科動物で、イノシシ(Sus scrofa)を家畜化したものである。主に食用(豚肉)とされる。

目次

  • 1 生物学的特徴
    • 1.1 ブタの知性
  • 2 家畜としてのブタ
    • 2.1 飼育数
    • 2.2 家畜としてのブタの一生
      • 2.2.1 種雄豚
      • 2.2.2 子取り用雌豚
      • 2.2.3 新生子豚-肥育豚
        • 2.2.3.1 新生子豚への外科的処置
          • 2.2.3.1.1 歯切り
          • 2.2.3.1.2 断尾
          • 2.2.3.1.3 雄豚の去勢
      • 2.2.4 動物愛護に関する各国のガイドライン・法規制
        • 2.2.4.1 妊娠ストール
        • 2.2.4.2 歯切り・断尾
        • 2.2.4.3 去勢
    • 2.3 ブタの飼育史
      • 2.3.1 中東
      • 2.3.2 ヨーロッパ
      • 2.3.3 アジア
      • 2.3.4 オセアニア
      • 2.3.5 日本列島
        • 2.3.5.1 縄文・弥生時代のブタ
        • 2.3.5.2 古墳時代・古代のブタ
        • 2.3.5.3 中世・近世のブタ
        • 2.3.5.4 近現代のブタ
    • 2.4 品種
    • 2.5 ブランド豚
      • 2.5.1 洋種系
      • 2.5.2 沖縄種系
      • 2.5.3 中国種系
  • 3 ミニブタ
    • 3.1 ミニブタの餌
    • 3.2 ポットベリーのペットとしての歴史
    • 3.3 ミニブタの所轄官庁
  • 4 野生ブタ(野ブタ)
  • 5 ブタを含むことわざ・慣用句・隠語
  • 6 ブタにちなんだ言葉・事物
  • 7 ブタを主人公またはモチーフにした作品
  • 8 脚注
  • 9 参考文献
  • 10 関連項目
  • 11 外部リンク

生物学的特徴

野生のイノシシと同様、土中の植物球根を掘り返して食べるため、他の家畜と違って硬い鼻先と強大な背筋を備えている。木製の柵では横木を鼻先で押し上げて壊してしまう。オスも強い背筋を生かせるよう上向きに生えており、人間のような丈の高い動物を敵と認識すると、突進して鼻先を股ぐらに突っ込み、頭部を持ち上げながら強くひねる。野生時代の名残ともいえるこの行動を「しゃくり」といい、まともにしゃくり上げられると大人でも数メートル飛ばされたり、で深く傷つけられたりする。太ももの内側を走る動脈が傷つけられると、失血死するほどの大量出血を招くこともあり、日本で小規模養豚が多かった時代には、年に数人は、しゃくり上げによる死者が出ていた。

肥満者への蔑称として使われることが多い。なお、野生ブタの体脂肪率は13パーセントほど。ガツガツと食事を取る人物を指して「ブタのように食べる」、散らかっていて汚い部屋を「豚小屋」などと形容することがあるが、ブタの生命力が強いため荒れた飼育環境でも飼育できることからなどによる。ブタは知能が高く、清潔を好む生物であり、排泄をする場所は餌場や寝床から離れた決まった一ヶ所に決める習性がある。類人猿イルカゾウカササギヨウムに加えてブタも鏡の存在を認知できる「鏡映認知」が確認された数少ない動物である。

ブタは類人猿以上に体重皮膚の状態、内臓の大きさなどが人間に近い動物である。そのため現在では異種間移植の臓器提供用動物として、研究が続けられている。大学の医療系学部・学科では解剖学の実習において生体解剖に利用されている。

ブタの鳴き声は、日本語では「ブー」「ブヒッ」などと表現されるが、英語では「oink(オインク)」と表記され、中国語での漢字では「嗷(アオ áo)」などが使われる。

ブタの知性

ペットとして飼われていたブタが、心臓発作を起こした飼い主のために、道路に出て横たわり助けを求めた事例がある。

家畜としてのブタ

家畜としてブタを飼育することを養豚といい、仕事としての養豚を養豚業、また養豚業に従事する人々のことを養豚業者という。ウシウマヒツジヤギといった家畜は原種が絶滅、またはかなり減少してしまっているが、ブタは原種であるイノシシが絶滅せず生息数も多いまま現存しているという点が特徴的である。免疫力が強く、抵抗性だけでなく環境への適応性にも富んでいるため飼育は容易である。豚肉や脂肪を食用とする他、皮革などを利用するために多くの国で飼育されている。豚肉料理が発達している日本の沖縄県では「鳴き声以外は全部食べる」と言われるほど、豚の利用箇所は多い。ただし、イスラム教圏においては豚肉食だけでなく、豚由来成分を含むものも忌避される。

詳細は「ハラール」を参照

高級食材で知られるトリュフを掘り起こすのに、かつてはメスブタが使われていた。トリュフにはオスブタの持つフェロモンと同じ成分が含まれており、トリュフの匂いを嗅ぎつけ興奮したメスブタが掘り返すのである。しかしメスブタがトリュフを食べてしまうことも多いため、最近ではイヌを用いるようになってきた。

アメリカの砂漠地帯では除けのためにブタを飼っている家もある。

オセアニアではブタの牙を切らずに飼っている例が多い。牙が伸び、湾曲して円形になったものは、アクセサリーや貨幣として用いられることもある。

ブタを数える際の単位(数量詞)は、またはと、かなりあいまいである。同じ新聞で、ブタに関することで発行された記事においても、頭と表現した例と、匹と表現した例がある。

飼育数

(2014年8月4日時点)

【順位】
【国名】
【2013年飼育数(百万頭)】
【2012年】
【2011年】
【2010年】
2005年
1 |  中国 | 482.2 | 474.0 | 471.0 | 476.3 | 407.2
2 |  アメリカ合衆国 | 64.8 | 66.4 | 66.4 | 64.9 | 61.0
3 |  ブラジル | 39.0 | 38.8 | 39.3 | 39.0 | 34.1
4 |  ドイツ | 27.7 | 28.1 | 26.8 | 26.5 | 26.9
5 | ベトナム | 26.3 | 26.5 | 27.1 | 27.4 | 27.4
6 |  スペイン | 25.5 | 25.3 | 25.6 | 25.7 | 24.9
7 |  ロシア | 18.8 | 17.3 | 17.2 | 17.2 | 13.4
8 |  メキシコ | 16.0 | 15.9 | 15.5 | 15.4 | 15.3
9 |  フランス | 13.5 | 13.8 | 14.0 | 14.3 | 15.0
10 |  カナダ | 12.9 | 12.7 | 12.8 | 12.7 | 14.8
11 |  オランダ | 12.2 | 12.2 | 12.4 | 12.3 | 11.2
12 | デンマーク | 12.1 | 12.3 | 12.9 | 13.2 | 13.5
13 |  フィリピン | 11.8 | 11.9 | 12.3 | 13.4 | 12.1
14 |  ポーランド | 11.2 | 11.6 | 13.5 | 14.9 | 18.1
15 |  ミャンマー | 10.5 | 10.5 | 10.5 | 9.4 | 5.7
16 |  韓国 | 9.9 | 9.9 | 8.2 | 9.9 | 9.0
17 |  日本 | 9.7 | 9.7 | 9.8 | 9.8 | 9.6
18 |  インド | 9.3 | 9.4 | 9.5 | 9.6 | 12.3
19 |  イタリア | 8.7 | 9.4 | 9.3 | 9.2 | 9.0
20 | インドネシア | 8.2 | 7.9 | 7.5 | 7.5 | 6.8
 | 世界計 | 977.0 | 969.9 | 968.0 | 973.1 | 884.2

家畜としてのブタの一生

種雄豚

繁殖用の種雄豚は、8年前後、種付けに用いられた後に廃用され、雄臭が強いため、主に皮革や肥料などとして利用される。

子取り用雌豚

分娩ストールで飼育される繁殖用雌豚

繁殖候補として選ばれた子取り用雌豚(繁殖用雌豚)は管理しやすいように妊娠ストールストール(閉じ込め枠)飼育される(日本の農場では88.6パーセントで妊娠ストールが使われている)。ストールの面積は1頭当たり1平方メートル前後である。

個体識別繁殖の管理のため、子取り用雌豚は耳刻や入墨が入れられる。雌豚は、生後8カ月で初めて交配される。豚は自然交配の方が受胎率が高いことから、人工授精率が牛に比べて低い。牛の人工授精率99パーセントに対し、豚は40パーセント程度。 妊娠した雌豚は、約114日の妊娠期間を経て、1回につき十数頭の子豚を産む。母豚による子豚の圧死を防ぐため、母豚は、分娩から離乳まで、行動範囲を制限する分娩柵を両側に取り付けられた分娩豚房(分娩ストール)に移される。分娩後、産んだ子豚への3~4週間の哺乳期間を経た後、次の交配が行わる。2年間で4~6回ほど分娩する。繁殖用として役目を終えた雌豚(平均3歳)は、「飼い直し」をしても肉質の向上が見られないため、ソーセージなどの加工品に利用されることが多い。

新生子豚-肥育豚

新生子豚への外科的処置
歯切り

新生子豚には8本の鋭い歯が生えており、母豚の乳頭の取り合いをする際に、他の子豚や母豚の乳房を傷つける可能性がある。また、母豚が乳頭を噛まれ授乳を拒否したり、急に立ち上がったりすることにより、子豚のけがや圧死の原因となる可能性もある。歯切りは、このような事故等を防止するための手段の一つと考えられている。日本の農家の88.1パーセントが歯切りを実施しており、そのうち8割はほぼ根元から切断される。歯切りは生後7日以内に無麻酔で行われることが一般的である。またその道具として日本の農家の9割以上がニッパーを使用している。神経感染症や出血、骨折等の痛みや重傷を引き起こす。歯肉炎を引き起こし痛みで授乳や人工乳を食べなくなることがある。歯切りについて、ニッパは元来針金を切る道具で歯を切るのに適さない、子豚を傷つける、悪い環境で育てているために歯切りが必要になる、といった批判がある。

断尾

77.1パーセントの農家で断尾が実施されている。豚舎での過密飼い、換気の不備、梅雨時期の多湿や夏場の高温等、豚がストレスを受けた場合に、他の豚の尾をかじる行動や、耳や腹を噛む等の行動が見られることがある。特に、尾かじりの行動が起きた場合には、その行動は群内にすぐに広まる。尾かじりを受けた豚は、ストレスにより飼料の摂取量や増体量が低下したり、怪我がひどい場合には死亡したりすることがある。断尾も一般的に生後7日以内に無麻酔で実施される。

雄豚の去勢

ほぼ100パーセントの雄豚に無麻酔で実施される。これは食肉とされた時の雄独特の雄臭を防ぐためである。雄臭のため、去勢していない豚は食肉格付評価が下がる。去勢は生後8日以上後に実施されることが多い。

新生子豚は、21日 - 24日の授乳期を経て1カ月程度で離乳させる。その後、肥育豚として主に配合飼料を給餌し、豚舎内で群飼肥育される。豚の寿命は10年から15年ほどだが、食用豚は6 - 7ヶ月で105 - 110キロ・グラム程度に仕上げられ、屠畜される。

動物愛護に関する各国のガイドライン・法規制

妊娠ストール

欧州連合(EU)は理事会指令「豚保護のための最低基準(COUNCIL DIRECTIVE 2008/120/EC of 18 December 2008 - laying down minimum standards for the protection of pigs)」において2013年1月1日から妊娠ストールを禁止した。アメリカではフロリダ,メイン,ロードアイランド,オレゴン, アリゾナ,カリフォルニア,コロラド,ミシガンが妊娠ストールの廃止を決定した。

歯切り・断尾

デンマークスウェーデンノルウェーフィンランドリトアニアでは麻酔なしでの尾の切断を禁止あるいは規制しており、カナダでは2016年7月1日から、年齢にかかわらず痛みを制御する鎮痛剤を用いて行われなければならないとされている。歯の切断については、欧州連合(EU)では日常的に行うことを禁止しており、デンマーク、ノルウェーでは歯の切断自体を禁止している。

去勢

欧州連合(EU)では、2018年からは自主的に、外科的去勢を「原則」終了することとしている。カナダでは2016年以降麻酔なしでの豚の去勢は禁止、ドイツでは2019年1月から国内外の子豚の無麻酔去勢が禁止される。また去勢をほとんど行っていない国もある(去勢率:イギリス2%、ポルトガル12.5%、スペイン15%、オランダ20%)

ブタの飼育史

中東

イノシシの家畜化は、8,000年以上前からユーラシア大陸の東西で行われ、各地で独立に家畜のブタが誕生したと考えられている。今はイスラム圏となった古代オリエント古代エジプトでも豚を食用としていた。古代エジプトではブタを飼う民は賤民とされていたことが、エジプトを脱出した古代イスラエル人と、その宗教を受け継いだユダヤ人ユダヤ教カシュルート、およびユダヤ教の影響を受けて誕生したイスラム教においては、豚肉肉食食のタブーとなった原因とする説がある。実用上の理由としては、過去に生の豚肉を食べて食中毒になる人が多かったからという説がある。宗教上の理由としては、ユダヤ語聖書レビ記』では、「四足の獣のうち、反芻しないもの」の肉を食べることが禁じられ、イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)ではブタは不浄な動物であるとされているからである。補給の都合上、イスラエル軍やイスラム国家の軍でも糧食として用いられる例があるが、豚肉のみの専門の食器を使い、食後は全て破棄している。

ヨーロッパ

古代ローマ人も豚を食べなかった訳ではないが、ブタの飼育が発達したのは北方森林地帯のゲルマン人ケルト人の食文化においてだった。日照時間が短く寒冷で、土壌のやせたヨーロッパでは、穀物の生産性が低い。このため、秋になるとナラ(オーク)の森にブタを放してドングリを食べさせて太らせ、それを屠畜して食塩硝石で処理して主要な保存食にしたのである。後にアメリカ大陸からジャガイモトウモロコシがもたらされると、土地の面積当たりの収穫量が多いそれらがブタの飼料として利用されることになる。ドイツスペインイタリアなどのハムベーコンソーセージはこういった伝統を受け継ぐ。

アジア

東アジアでは中国新石器時代からブタは家畜化されていた。中国南部を発祥地とするオーストロネシア語族南太平洋にまでブタを連れて行った。満州民族の先祖である挹婁人、勿吉人、靺鞨人は寒冷な満州の森林地帯に住んでいるので、ブタを盛んに飼育し、極寒時にはブタの脂肪を体に塗って寒さを防いでいた。

豚は現代中国台湾でもよく食べられ、中華料理で重要な食材となっている。中国語で単に「肉」といえば豚肉を指すほどで、飼育量も世界最大である。これに対して、中国で牛肉は農耕用に使われた廃牛や水牛を利用する程度で、食用としては硬すぎたり筋張ったりし、それほど好まれなかった。

朝鮮半島(特に韓国)では、縁起の良い動物とされている。漢字の「」を朝鮮語読みした「トン(2000年式ローマ字転写:don、MR式ローマ字転写:ton)」が、「お金」を意味する朝鮮語(固有語)と綴りが同じためである。ブタ型の貯金箱に人気があり、「ブタの夢を見るとお金が貯まる」と言われ、宝くじを買ったりする。なお、朝鮮語の固有語では「豚」は「テジ(돼지、dwaeji / twaeji)」といい、イノシシは「メッテジ(멧돼지、metdwaeji / mettwaeji)」という。

ベトナム料理でも祝い事やへの供物などに子豚の丸焼きを用意したり、ティット・コー(豚の角煮thịt kho)や、焼豚を載せたライスヌードルであるブン・ティット・ヌオン (Bún thịt nướng) が日常的に食べられたりするなど、中国文化を受けてブタは食材として重要である。中国語同様、ベトナム語でも単に「肉(thịt)」といえば豚肉(thịt heo)を指す。

現代中国語では、「ブタ」は「(=繁体字)/(=簡体字)」と表記され、チュー(zhū)と呼ぶ。古語では「」(シー shǐ)が使われた。西遊記に登場する猪八戒はブタに天蓬元帥の魂が宿った神仙で、「猪(豬)」は「朱」(zhū、中国ではよくある姓)と音が通じるために姓は「朱」にされていた。しかし代に皇帝の姓が「朱」であったため、これを憚ってもとの意の通り「猪(豬)」を用い、猪八戒となった。

韓国やベトナムを含め、日本を除く東アジア漢字文化圏では、原則として亥年は「豚年」である。

オセアニア

南太平洋諸島の文化において、ブタは唯一の大型食用家畜として重要視された。元々これらの島々にはブタは生息していなかったが、紀元前10世紀頃から始まったオーストロネシア語族の拡散にともなってブタも海を渡り、メラネシアポリネシアの多くの島々で重要な家畜となった。一方で、オーストラリアニュージーランドイースター島トゥアモトゥ諸島などのようにブタが持ち込まれなかった島々も存在する。また、ミクロネシアの一部諸島のように、いったん持ち込まれたブタが何らかの理由によって絶滅したところも存在する。ブタの飼育された島々においてブタは儀式の際などに屠られる特別な食料となり、またバヌアツなどにおいてはブタのが富の象徴とされた。この際、ブタの牙はできるだけ長く伸びているものほど珍重され、高い価値を持った。長く伸び円弧を描いたブタの牙は、富の象徴としてバヌアツの国旗にも描かれている。

日本列島

日本の獣肉食の歴史」を参照
縄文・弥生時代のブタ

日本列島では縄文時代、主にシカやイノシシを対象とする狩猟が行われていた。縄文時代の遺跡から出土するイノシシ骨では飼養段階の家畜利用を示す家畜化現象の骨が出土していることが指摘され、日本列島における家畜化の可能性も考えられている。一方で、イノシシ飼養はいずれも限定的なもので疑問視する見解も見られる。

弥生時代には日本列島においても本格的な稲作農耕が開始される。中国大陸では農耕はブタやウマウシなど家畜が伴うものであるのに対し、日本列島における弥生期の遺跡からは長らく家畜の痕跡が見られないことから、家畜利用を欠いた「欠畜農耕」であると理解されていた。

1988年-1989年には大分県大分市下郡桑苗遺跡において弥生時代の完形のイノシシ類頭蓋骨3点とブタ頭蓋骨が出土し、さらに九州や本州の遺跡においてブタやニワトリの出土事例が相次いだ。

また、縄文時代の本州においてはシカとイノシシの出土比率がほぼ1:1であるのに対し、弥生時代には「イノシシ」の比率が増加し、また成獣よりも若獣が多く出土している傾向が指摘されていた。この弥生時代の「イノシシ」に関しては、西本豊弘が下郡桑苗遺跡出土のイノシシ類骨に骨の家畜化現象が認められることから、野生のイノシシではなく家畜としての「ブタ」であるとした。その後、弥生ブタの発見事例が相次ぎ、1999年時点で10箇所以上からの弥生遺跡において弥生ブタが確認されている。弥生時代の遺跡において「イノシシ」の出土比率が高く、中でも若獣が多い点は「イノシシ」の骨の中に家畜化されたブタが混在している可能性が指摘された。

弥生ブタに関しては縄文時代からイノシシが家畜化されてブタになったのではなく、中国大陸から家畜としてのブタが持ち込まれたとする説があり、1991年と1993年に西本豊弘により指摘された。これは、縄文時代に過渡的な段階のイノシシが見られず弥生時代に突如として家畜化されたブタが出現している点や、日本列島のイノシシの個体サイズが地域的に差があるが弥生ブタはこれとかけ離れたサイズである点などが理由とされる。

2000年には小澤智生が、中国産ブタとニホンイノシシは255塩基対のうち塩基座502により区別が可能であるとし、現生の中国と日本のイノシシ、ブタに関してミトコンドリアDNAの分析を行い、日本国内の弥生ブタとされる資料12点のうち11点がニホンイノシシと同タイプの塩基配列を持ち、弥生ブタはニホンイノシシそのものであるとした。

これに対して、2003年には石黒直隆らが、塩基座502によるイノシシとブタの区別自体に疑義を唱え、新たに255塩基対を含む574塩基対による系統解析を行い、10資料のうち6資料が現生イノシシと同じグループに、4資料は東アジア系家畜ブタと同じグループに含まれ、大陸から持ち込まれた家畜豚は九州・四国の西日本西部地域に限られている点を指摘した。

古墳時代・古代のブタ

続く古墳時代の遺跡からもブタの骨は出土している。『日本書紀』『万葉集』『古事記』にみられる「猪飼」「猪甘」「猪養」などの言葉の「猪」はブタの意味であり、ブタが飼われていたことがわかる。

天武天皇675年に、ウシとウマ、イヌニホンザルニワトリ肉食の禁止を定めた。だが、これは正確に言えば、肉食の全面禁止を目的としたのではなく、稲作を促進し安定した税収を確保する観点から出された、稲作に役立つ動物の保護を目的として出された命令であり、禁止期間は稲作が行われる4月-9月に限定されていた。しかも、当時の肉食の中心であったイノシシやシカをはじめとして、この勅令で指定されなかった動物の肉を食べることは一年を通して禁止されておらず、豚肉を食べることは禁止されてはいない。しかし、律令体制の確立の上で、米を税の中心()とする観点から、米の神聖さが強調されるようになった。当初は、稲作に役に立つウシやウマの肉を食べることが稲作の妨げになると考えられたが、時代が立つにつれて、ウシやウマに限らず、肉食そのものが稲作に害をもたらす穢れと見なされるようになり、ブタの飼育も途絶えてしまった。イノシシが採れる山間部では猪肉がぼたん鍋と称してわずかに食べられることもあった。

中世・近世のブタ

中世に琉球王国に属した沖縄県鹿児島県奄美地方では、古来からブタの飼育や食用が行われており、沖縄料理は「豚に始まり豚に終わる」ともいわれる。1385年に渡来したという黒豚のアグー(島豚=シマウワー)が有名で、現在の沖縄料理では最も重要な食材となっている。17世紀以前は牛肉も同様の座を占めていたが、羽地朝秀の改革によりウシの食用が禁止された。その後は中国からの冊封使節団を接待するため王府によりブタの大量生産が奨励されたことなども相まって、牛肉に代わる存在となっていった。しかし、昔は肉食はそれほど容易ではなく、「ハレの日」の料理として扱われていた。琉球王朝時代、豚は「ふーる」と呼ばれる所で飼育されていた。第二次世界大戦前の沖縄では、豚肉料理が食べられるのはせいぜい年に数回であり、普段はラードが豚肉の代用としてよく使われていたという。戦後、沖縄がアメリカ合衆国に統治されると、米兵が多く食していたポーク・ランチョンミート缶詰が広く利用されるようになり、現代の沖縄家庭料理に欠かせない素材となった。

奄美地方を支配した薩摩藩でもブタを飼って食べており、佐藤信淵著『経済要録』(1827年)には、薩摩の江戸藩邸で豚を飼って豚肉を売っていたと記録されている。西郷隆盛も豚肉が大好物であったと伝わっている。江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜は父徳川斉昭島津斉彬から豚肉を送られていた(1845年5月2日(6月6日)の書簡)ためか、豚肉を好んで食べたので豚一様(好きの橋様)と呼ばれた。新選組西本願寺駐屯時に松本良順のすすめで神戸から子豚を持ち込み養豚していた。解体は木屋町の医者南部精一の弟子に頼んでいた。

長崎においても、鎖国中で数少ない外交窓口であったことから、駐在する中国人の食用として豚が飼育されていた。卓袱料理にも取り入れられて、一部は日本人の食用としても供給され、司馬江漢がこれを食べた記録がある。多くの日本人にとっては忌み嫌われ、中国人の豚好きを揶揄した「楊貴妃は きれいな顔で 豚を食い」という川柳がある。

近現代のブタ

明治維新以後、肉食は一般化していった。まず普及したのは牛鍋(すき焼き)にみられるように牛が圧倒的であり、豚肉の需要はすぐには伸びなかった。豚の飼育は増えたものの、これは東京近郊の農家が肥料を得るためで、食用が主目的ではなかった。しかし、日本政府が富国強兵策として1900年より養豚事業を開始し、1904年日露戦争開戦により兵士に支給される食肉が増加、それに伴う牛肉の不足からの豚肉食の奨励が行われた。また大正元年(1912年)にコレラの流行が起きると、警視庁がコレラの流行を食い止めるためにの生食を制限し、火を通すことが前提である肉食を奨励した。この際、上述のように豚が多く飼育されていた東京関東地方において安価であった豚肉が注目された。これによって、それまで牛肉が主であったカツレツが豚に置き換えられて豚カツが誕生するなど豚肉料理がこの時期に多く誕生し、豚肉の需要が急増して、ブタも日本各地で再び飼われるようになった。特に関東大震災後に関東地方で養豚ブームが起き、供給量が増えて安価になった。琉球の島豚は1902年にバークシャー種、ハンプシャー種が入り純粋種はなくなったが名護市奄美大島などで復元されている。

品種

主な品種 (breeds) に大ヨークシャー種、高座豚富士幻豚に代表されるヨークシャー種(俗称「中ヨークシャー種」)、ランドレース種デュロック種、黒豚に代表されるバークシャー種、ハンプシャー種などがある。近年では、これらの品種の二つか三つ(三元交配)を掛け合わせて肉豚を生産することが多い。肉質の良い品種、子豚を多く生む品種を使いハイブリッド豚も作られている。黒豚と中ヨークシャー種は肉が特に美味だとされるが、小柄で肥育に日数を要する(アメリカ系バークシャー種を除く)。

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出典:wikipedia
2018/09/16 00:34

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