千葉県(ちばけん、英: Chiba Prefecture)は、日本の関東地方に位置する県。県庁所在地及び最大の都市は千葉市。
首都圏を構成し、都道府県人口・人口密度は全国第6位、面積は第28位の規模である。県の財政力指数は全国第3位、訪日観光客数は第1位であり、中心業務地区の幕張新都心、アジア地域有数の国際見本市会場である幕張メッセ、国際線旅客数および貿易額日本一の成田国際空港、日本三大貿易港の千葉港、日本三大漁港の銚子漁港、集客施設来場者数日本一のディズニーリゾート、自然豊かな南房総国定公園・水郷筑波国定公園などを筆頭とした観光都市・リゾート地、優れた社会基盤、恵まれた地域資源、バランスの取れた産業構造を核としている。
県の人口は6,268,585人、面積は5,157.61平方キロメートル(km)である。1920年(大正9年)10月1日、国勢調査での県の人口は約100万人であった。その後増加を続け、1983年(昭和58年)10月1日には500万人を超え、2002年(平成14年)9月17日に600万人を突破した。以降、引き続き人口は増加している。
県内の市町村数は54市町村 (37市16町1村)、県内の政令指定都市は千葉市、中核市は船橋市・柏市、業務核都市は千葉市・成田市・木更津市・印西市である。
日本の関東地方南東側に位置し、県域は東海道筋に古くから栄えた律令制以来の房総三国である上総国(南総)・安房国(房州)の全土と、下総国(北総)の一部から成り立っている。1873年(明治6年)6月15日に、北西部の印旛県と南部の木更津県が合併し、旧両県の境で千葉氏の本拠地でもあった現在の千葉市中央区(亥鼻城址周辺)に県庁が設置され、千葉県が成立した。
県内には100万規模の人口を有する政令指定都市の千葉市を筆頭に、中核市最大の人口約64万人を有する船橋市、50万都市の市川市・松戸市、40万都市の中核市である柏市、30万都市の市原市、20万都市が6市と中核市同等の人口を持つ自治体が多数存在することも特徴として挙げられる。千葉市は国家戦略特区・国際会議観光都市・都市再生特別地区・グローバルMICE都市に指定されており、国際機関を始めとした国の業務中枢機能と住宅中心の土地利用計画を大幅に見直した幕張新都心を中心に、関東地方において独自の重要性を持つ世界に開かれた国際都市の役割を担う。
平地の割合が大きく、可住地面積が広いことからも古くから住宅地開発が進んでおり、県北西部の人口は稠密である。特に高度経済成長と都市部の過密化により、通勤五方面作戦にて複々線化を行った総武本線・常磐線や京成線沿線に位置する都市は繁華街も多く、大規模商圏による拠点性・集積性のある駅周辺の人口増加が著しい傾向にある。近年では都市再開発が進み、全国813市区中財政力指数第1位の浦安市や第4位の成田市、全国住みよさ7年連続第1位の印西市、全国共働き子育てしやすい街第1位の松戸市など、財政・制度・施設が充実した都市も増えている。特に新通勤五方面作戦で提示された性格を継承して開業した京葉線沿線(新浦安、南船橋、幕張ベイタウンなど)や、つくばエクスプレス沿線(流山おおたかの森、柏の葉スマートシティなど)のほか、北総線・新京成線沿線(新鎌ヶ谷など)、東葉高速線沿線(八千代緑が丘、八千代中央など)、東京湾アクアラインにより利便性が向上した袖ケ浦市・木更津市(かずさアクアシティ)などでは、新興住宅地の開発が加速し、東京都心や成田国際空港・東京国際空港へのアクセスの良さからも、大規模なマンションや住宅街が林立し、商業施設の充実、整備された公共施設、自然豊富な住環境が整っている。買って住みたい街においても首都圏第1位の船橋市、第5位の柏市、第6位の流山市(流山おおたかの森)、第7位の習志野市(津田沼)と定住を目的としたファミリー層を中心に支持を受けている。
地域ごとに多様な特色を持っており、バランスの取れた産業構造(農業・漁業・工業・商業)である。太平洋ベルトを構成する京葉工業地帯(浦安市から富津市)の東京湾沿岸は都市化・工業化が進んでおり、日本三大港湾に係る基幹産業の大規模施設として、発電所、製鉄所、製油所、造船所のほか、コンテナターミナル、物流センター、LNG基地、石油コンビナートなどが立地している。工業製造品出荷額は中京・京浜・阪神工業地帯に次いで全国第4位である。一方、酪農発祥の地である嶺岡牧や日本三大漁港の銚子漁港など、太平洋や関東平野の地勢を生かした近郊農業・漁業が発達しており、平野部では畑作・稲作が盛んなほか、丘陵部では酪農が盛んである。農業産出額は全国第3位、漁業総生産量は第5位と全国有数である。貿易港としても貿易額日本一の成田国際空港や、日本三大貿易港である千葉港を有する。2015年度の県内総生産は20兆2186億円であり、世界の過半数の国の国内総生産より大きな規模を有している。
「千葉」という地名は、平安時代初期に編纂された勅撰史書『日本後紀』より、律令制以前の千葉国造(国造名)や律令制以来の千葉郡(郡名)にみることができる。
地名の由来については諸説あるが、現存の文書中最も古くにみえるのは、日本に現存する最古の和歌集である『万葉集』に防人であった下総国千葉郡の大田部足人が755年(天平勝宝7年)に詠んだ遠方へ赴いた兵士が故郷に残した切ない初恋の防人歌として、歌の冒頭に「知波乃奴乃(千葉の野の)」と記されている。また、奈良時代の『日本書紀』と『古事記』の両書には、応神天皇が大和国から近江国に向かう途中、山城の宇治野の丘で遠く葛野一帯を望んでの国見歌で現れる「千葉の」は「数多くの葉が繁茂する」の意で、葛の葉が良く繁栄したことから葛の枕詞として用いられたのだと、契沖(国学者)以来考えられており、「千葉」という地名に託した願い「土地と子孫の繁栄を願っての地名」を知る上での重要な資料とされている。
『万葉集』「第20巻4387番」より和歌の詳細については、以下を参照。
『日本書紀』「歌謡三四原歌」より和歌の詳細については、以下を参照。
『日本書紀』「歌謡三四原歌」より
- (原文)
- 知麼能 伽豆怒塢彌例麼 茂々智儾蘆 夜珥波母彌喩 區珥能朋母彌喩
- (和歌)
- 千葉の 葛野を見れば 百千足る 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ
- (訳)
- 千葉の葛野を眺めると、数多くの富み栄える民の家々も見える。国の中でもっとも繁栄したところにもみえる。
千葉県の県庁所在地である千葉市を中心にコンパスで円を書くと、南西諸島以外の日本列島は半径1,000キロメートル圏内にほとんど収まる位置にある。地理的特性として関東平野に含まれるが、南部は東と南を太平洋、西は東京湾と三方を海に囲まれた房総半島となっている。平野と丘陵が県土の大半を占め、海抜500メートル以上の山地がない日本で唯一の都道府県である。南に進むほど半島であるという地理的条件により、陸上交通中心の見地から袋小路的な閉鎖性が問題視されると同時に、外洋に面していることから古来より開放的で外来文化が渡来しやすいという良い側面もあった。また、隣接する都県とは利根川、江戸川、東京湾、太平洋によって画され、古くは外敵の進入を防ぐ役割や覇者の起死回生の地としての役割を担ってきた。近年では東京湾フェリーや東京湾アクアラインの開通によって半島性が緩和されている。
地勢上、広大な可住地と、長大な海岸線を有している。起伏の少ない県であり、関東平野の一部である北部は、海岸(東京湾・太平洋)や河川(利根川・江戸川など)沿いの低地と下総台地からなる。南部側は房総丘陵などの丘陵地帯だが、最高峰は標高408メートルの愛宕山であり、全都道府県のうち最高峰(点)が最も低い。そのため比較的温暖な気候に恵まれている。標高329メートルの鋸山や鹿野山等、観光地化されているところもあり、南房総国定公園、水郷筑波国定公園等、景勝地も豊富である。
房総半島の東京湾側は内房(うちぼう)、太平洋側は外房(そとぼう)と呼ばれ、東京湾沿いは埋立地が多く浦安市などでは面積が増加した。そのため、県の面積が一時、愛知県を上回っていた時期もある。東京湾口には館山湾があり、浦賀水道の対岸には三浦半島(神奈川県)がある。太平洋沿いは九十九里浜が面し、九十九里平野が広がる。半島南部には房総丘陵、半島中央部には上総丘陵と上総台地 、半島北部には下総台地があり、これらの台地や丘陵には縄文期の侵食によってできた谷底平野(谷津田)も見られる。一方で半島の北部から中部にかけて下総台地を囲む形で北西に江戸川低地、西に東京湾岸低地、北に利根川下流低地、東に九十九里沖積低地が分布する。
平均海抜は46メートルとなっており、これは沖縄県の43メートルに次ぐ低い数値である。そのため、縄文海進が最大規模となった紀元前4000年頃には、現在の古東京湾(南部)と香取海(北部)によって本州と分断されており、後に赤堀川・逆川が開削される微高地で繋がっている状態であった。
印旛沼は長門川と印旛放水路の二つの川と接続しており、長門川は印旛沼から利根川へ流れる河川であるが、印旛放水路は利根川の増水時に長門川による印旛沼の排水が困難になった際に東京湾に排水を行う役目を持つのが特徴である。
県の最端部は突出しているのが特徴である。県最北端は野田市の関宿地区(関宿藩の城下町)となっており、そのほかは海に突出する岬となっている。
第三紀層および白亜紀堆積層。県内には学術的貴重な地層を数多くみることができる。代表例として最東端の犬吠埼では1億3000万年前から1億年前の恐竜時代の地層(砂岩泥岩互層)を見ることができ、白亜紀浅海堆積物として国の天然記念物に指定されており、日本の地質百選にも選定されている。千葉セクション(市原市)では、約77万年前の地層を見ることができ、更新世の前期と中期の境界を示すものとして極めて貴重であり、国際標準模式層断面及び地点 (Global Boundary Stratotype Section and Point, 略称:GSSP) に内定している。「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」の名称で、国の天然記念物にも指定されている。
鋸山の周辺で採石される石は房州石(ぼうしゅういし)と呼ばれ、このうち鋸山頂上付近でとれるものを金谷石、元名石と呼び、高宕山でとれるものを高宕石と呼ぶ。これらは、上総層群の竹岡層からなる凝灰岩でできている。上総層群は三浦半島に分布する三浦層群と同時期に形成されたことがわかっている。南房総市荒川にて2009年に採石場で新鉱物(千葉石)も発見されている。
千葉県は大部分が平野部と低山で構成されているので、急な流れの川や大きな川は少なく、そのような川は多くが利根川のように他県から流れてくるものである。
利根川、夷隅川、養老川、栗山川、小櫃川、一宮川、小糸川、南白亀川、村田川、作田川、木戸川、塩田川、桑納川、手賀川
印旛沼、手賀沼、霞ヶ浦、大利根用水、両総用水、成田用水、東総用水、利根運河、利根川河口堰、黒部川水門、北千葉導水路、房総導水路、行徳可動堰、江戸川水閘門(江戸川水門)
亀山湖、高滝湖、豊英湖、八鶴湖、雄蛇ケ池、三島湖、与田浦、岩婦湖、浜の池、豊英湖
名洗港海岸、上永井海岸、北九十九里海岸、横芝海岸、一宮海岸、太東漁港海岸、日在・和泉浦海岸、興津港海岸、東条海岸、白渚海岸、千倉海岸、館山港海岸、富山海岸、勝山漁港海岸、富津岬、木更津海岸、千葉港海岸幕張の浜・検見川の浜・いなげの浜、千葉港海岸(船橋地区)船橋港親水公園
安房三名山(富山、御殿山、伊予ヶ岳)、愛宕山、鋸山、鹿野山、清澄山、安房高山、三郡山、嶺岡浅間、高宕山
千葉県内には多くの湧水地があり、久留里一帯では住民が管理する複数の井戸があり、名水として知られている。
熊野の清水(昭和の名水百選)、生きた水・久留里(平成の名水百選)
気象庁による年間平均気温は15.7℃(最高気温平均19.6℃、最低気温平均12.3℃)。
太平洋側の気候に属する。平野部が多く起伏の少ない県であり、山岳部の平均標高も低い。更に太平洋沖合いには黒潮(暖流)が流れており霜も少ない為、全体的には年間通して比較的温暖な気候に恵まれ、全域が太平洋側気候(海洋性気候)に属する。内陸性気候特有のフェーン現象や放射冷却の影響を受けにくく、真冬日の豪雪や冷害、真夏日の猛暑を観測することも少ないため、気象災害も起きにくい。
太平洋沿岸部などでは、海流や風の影響で涼しいため、真夏日日数も少ない避暑地である。一方、温暖な海洋性気候である南房総や北東部沿岸地域に対して、下総台地や山岳部(房総丘陵)等の内陸部は内陸性気候に近くなる。また近年では都市化の進行が著しく、都市部(主に県北西部)ではヒートアイランド現象が発生している。
天気予報などで示される地点は、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・