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夫婦別姓とは?

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夫婦別姓(ふうふべっせい)とは、夫婦結婚後もそれぞれのを名乗ることである。日本法では「」ではなく「」が用いられているため法的には「夫婦別氏」(ふうふべっし)という。夫婦別姓と夫婦同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、法的には「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし)と呼ぶ。

一方、婚姻時に両者の名字(氏)を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(ふうふどうせい)、法的には「夫婦同氏」(ふうふどうし)という。日本では現在、民法750条により夫婦同氏と定められ、夫婦別氏は国際結婚などの場合を除き認められていないため、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度の導入の是非が議論されている。

目次

  • 1 概要
  • 2 導入希望の背景
    • 2.1 旧姓通称利用
    • 2.2 事実婚
    • 2.3 国連女子差別撤廃委員会の勧告
  • 3 民法改正案
    • 3.1 法制審答申民法改正案(1996年)
    • 3.2 法務省民事局参事官室民法改正要綱試案(1994年)
    • 3.3 例外的に夫婦の別姓を実現させる会案
    • 3.4 民進党・社民党・共産党等による超党派案
    • 3.5 旧姓続称制度・他
  • 4 各国の状況
    • 4.1 東アジア
    • 4.2 南アジア・東南アジア
    • 4.3 南北アメリカ・オセアニア
    • 4.4 西ヨーロッパ
    • 4.5 北ヨーロッパ
    • 4.6 東ヨーロッパ
    • 4.7 中東
  • 5 日本の状況
    • 5.1 歴史
      • 5.1.1 中世まで
      • 5.1.2 江戸期
      • 5.1.3 戦前
      • 5.1.4 戦後
    • 5.2 夫婦別姓訴訟
      • 5.2.1 2011年訴訟
      • 5.2.2 2018年訴訟
    • 5.3 世論調査
    • 5.4 各種団体の賛否状況
      • 5.4.1 国政政党
      • 5.4.2 メディア
      • 5.4.3 学術団体
      • 5.4.4 民間団体
    • 5.5 年表
  • 6 論点
    • 6.1 賛否の議論点
    • 6.2 2015年最高裁判決についての論評
    • 6.3 夫婦創姓論・結合姓論
  • 7 脚注
    • 7.1 注釈
    • 7.2 出典
  • 8 参考文献
  • 9 関連項目
  • 10 外部リンク

概要

日本においては、現在、民法750条で夫婦の同氏が規定されており、戸籍法によって夫婦同氏・別氏を選択可能となっている国際結婚の場合を除き、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えない限り法律婚は認められていない。そのため、特に近年、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度を導入することの是非が議論されている。

過去には、ドイツオーストリアスイスインドタイ王国も同氏であったが、ドイツの民法が1993年に改正されるなどした結果、2014年時点で、法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみである。日本は2003年以降、国際連合女子差別撤廃委員会より、日本の民法が定める夫婦同姓が「差別的な規定」であるとして是正するべきとする度重なる勧告を受けている。なお、日本で夫婦同氏が定められたのは明治民法が施行された明治31年(1898年)からであり、明治民法施行以前は明治9年(1876年)の太政官指令によって「婦女は結婚してもなお所生の氏(婚姻前の氏)を用いること」とあるように、夫婦は別氏と規定されていた。

導入希望の背景

現在の日本においてはこのように夫婦同氏が民法で規定されているため、何らかの理由で当事者の双方が自分の氏を保持したい場合、結婚できない、という問題が生じる。現状ではそのような場合、婚姻をあきらめるか、旧姓の通称利用を行うか、事実婚を行う、といった選択肢しかないが、いずれもさまざまな問題が指摘されている。民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねているものの、2014年の時点では、妻の側が改氏する割合が96.1%にのぼるが、これは間接差別であるといった声がある。そのほか、多様な価値観、個人の尊重アイデンティティプライバシー男女共同参画人権、社会・経済コスト、少子化家名存続など様々な観点から選択的夫婦別姓制度を求める意見が出てくるようになった(詳細は夫婦別姓#論点を参考)。また、国際連合1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では夫婦同氏と夫婦別氏を選択することが可能な選択的夫婦別氏制度の導入が要求されるなど、国際的な要求も出てきた。このような背景から、選択的夫婦別姓制度の導入の是非に関する議論が、近年活発にされるようになった。また、これらの問題をめぐり、訴訟なども提議されるようになった。

旧姓通称利用

旧姓通称として利用することを旧姓の通称利用といい、婚姻によって氏名が変わることは仕事上不利でもあるため、仕事の便をはかるために認められることがある。1988年富士ゼロックスにおいて実施されたのに始まり、国家公務員でも2001年から認められるようになった。2010年の時点で、産労総合研究所の調査で回答があった192社のうち旧姓使用を認めているのは55.7%、従業員1千人以上の企業で71.8%となっている。しかし、旧姓の通称利用には、多くの問題点が指摘されている。

戸籍姓しか認められない職場も多く、旧姓通称利用できない人も存在すること、運転免許証等の証明書類や様々な公的書類上で旧姓を用いることができないこと、そもそも二重の姓を使い分けるのは不便であること、アイデンティティ上の問題があること、通称の利用は二つの名前の管理が必要であり企業の負担が大きくなることなど、様々な問題が挙げられる。

旧姓通称利用における問題点のより詳細については「通称#旧姓の通称利用」を参照

通称として旧姓を使用する権利を求めた民事裁判として国立大学夫婦別姓通称使用裁判がある。1993年に東京地裁は判決で、通称名も法的保護の対象になりうるが、同一性を把握する手段として戸籍名の使用は合理性があり、通称名が国民生活に根づいていない、また大学は業績の公表などで通称使用を配慮しており、よって大学側の規制に違法性はないとした。その後、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した。

通称」および「国立大学夫婦別姓通称使用事件」も参照

その後も、2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴。東京地裁は同年に「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」などとして請求を棄却。その後、控訴審で高裁より和解勧告が出され、2017年に学校側が、時間割などの文書や日常的な呼び方で旧姓の使用を全面的に認める形で和解が成立した。

事実婚

事実婚は、法的には婚姻に当たらないため、法的問題、日常生活上の不都合等、多くの問題が指摘されている。 子供がいる場合には戸籍非嫡出子(婚外子)として扱われ、片方の親のみの単独親権に服する(父母が共同で親権を行うことができない)こと、相続の問題、成年後見の問題、入院時などの家族関係の証明の問題、税法上や日常生活上の様々な不利益の問題、海外赴任時の配偶者ビザの問題、など、多岐にわたる問題がある。

事実婚の問題点のより詳細については「事実婚#事実婚における問題点」を参照

国連女子差別撤廃委員会の勧告

日本を含む130カ国の賛成で、国際連合1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では、選択的夫婦別氏の導入が要求されている。

国際連合女子差別撤廃委員会は、2003年2009年2016年の勧告で、日本の民法が定める夫婦同氏を「差別的な規定」と批判し、「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」(2009年)、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」(2016年)と勧告した。

2003年8月の勧告では、委員会は婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告した。日本国政府は2008年4月に選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう努めていると報告したが、2009年8月に再度、委員会は前回の勧告にもかかわらず、差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有すると勧告した。

日本国政府は、2014年8月に報告書を提出したが、2016年に委員会は再度、勧告が十分に実行されていないと勧告した。

国連女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、日本の夫婦別姓を認めない規定について、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」と述べている。

その他、米国国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書(2015年版)においても、日本の夫婦別姓を認めない民法規定が言及されている。

民法改正案

選択的夫婦別姓制度を導入する場合にどのような制度とするか、であるが、これまでいくつかの夫婦別姓案導入のための民法改正案が提案されてきた。主なものとして、1996年の法制審議会答申で出された民法改正案、 その法制審答申民法改正案に至る検討段階の1994年法務省民事局参事官室より提示された3案からなる「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」、自民党内で「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が2002年に提案した案、民進党などが2015年などに提示した案などがある。

法制審答申民法改正案(1996年)

1991年1月に設置された法制審議会身分法小委員会での5年にわたる審議を経て、法制審議会は、1996年の法制審議会答申において以下のような民法改正案を法務大臣に提示した。

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

2005年に法務省民事局参事官室が出した「婚姻制度等の見直し審議に関する中間報告」でも同様の案が提示されている。

法務省民事局参事官室民法改正要綱試案(1994年)

1996年の法制審議会答申に至る以前にも、1994年法務省民事局参事官室は、以下の3つの検討案を「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として提示している。

A案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする(同氏が原則)。ただし、この定めをしないこととすることもできるものとする(別氏夫婦)。
  • 別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、子が称する氏として定めなければならないものとする。
  • 別氏夫婦は、嬌姻後、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、夫又は妻の氏を称することができるものとする。
B案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称することができるものとする(別氏が原則だが、婚姻の際に特段の合意がされた場合にかぎり、同氏を称することができる)。
  • 婚姻後の別氏夫婦から同氏夫婦ヘの転換、及び、同氏夫婦から別氏夫婦への転換はいずれも認めない。
  • 別氏夫婦の子は、その出生時における父母の協議により定める。
C案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする。
  • 婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称とすることができるものとする。
  • 婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又妻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その呼称を廃止することができるものとする。

A案,B案について日本弁護士連合会は、夫婦同氏,別氏のいずれかを原則としているが、同氏夫婦、別氏夫婦に優劣をつけるべきではない、としている。C案については日本弁護士連合会は、氏の二重制を認めるものでわかりずらく、実質的平等を確保できておらず到底採用できるものではない、本来の選択的夫婦別氏制とすら言えない、として批判している。また、子供の姓については、日本弁護士連合会はその都度選択可能なB案を支持する、としている。 ただし、B案について、日本弁護士連合会は、協議が調わない場合又は協議をすることができない場合には家庭裁判所の審判で定めることを提言している。1996年の法制審議会答申はこれらの案をもとに作成されたものである。

例外的に夫婦の別姓を実現させる会案

2002年野田聖子自民党一部議員による「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」が提案した案は1994年民法改正要綱A案を基本としつつ、家庭裁判所による許可を必要とする、としている。

例外的に夫婦の別姓を実現させる会」も参照

この案は以下のようになっている。

  • 職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、別氏夫婦となるための家庭裁判所の許可を得ることができる。
  • 夫婦同氏が原則とし、別氏夫婦から同氏夫婦への転換は認める。逆は認めない。
  • 別氏夫婦は、婚姻時に「子が称すべき氏」を定める。

民進党・社民党・共産党等による超党派案

民主党(現・民進党)は2015年に、社民党共産党等と共同で、以下のような案を参議院に提出している。法制審答申民法改正案に日本弁護士連合会の提言をいれた形のものとなっている。

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
  • 別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとする。
  • ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。

旧姓続称制度・他

その他の案として、1997年野中広務が提案した「旧姓続称制度」がある。旧姓続称制度は、配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全ての場面で旧姓を使うことができるようにしようというもの。離婚後も婚姻時の姓を名乗れるという「婚氏続称制度」(1976年の民法改正で採用)を参考に、野中が1997年に自民党内に提案した。

また、2018年に国に対して提訴された訴訟では、原告は、婚氏続称制度を念頭に、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」を分け、戸籍法上の届け出をすれば旧姓を「称する」ことができるようにするべき、との主張をする予定とされる。

各国の状況

各国において、様々な夫婦の姓に関する制度がある。なお、夫婦別氏を認めず、夫婦同氏を法で規定している国家は、現在、日本のみである。中国朝鮮など儒教的な文化が強い文化圏では、父の氏の変更を伴う夫婦同姓は認められない(青山道夫ら)。大村敦志らは、血縁意識が強いからこそ、夫婦別氏が原則だったとしている。小檜山ルイらによれば、子供は夫の家系を絶やさないための跡継ぎという考えが強く、子供は多くの場合父親の姓になる。親も自分の娘の子供よりも、自分の家系に属する自分の息子の子供を重視する考えがある。離婚後に母親が引き取った場合も子供は法的には父親の家系に属していたが、韓国では2008年に改正された。離婚した後に子供を母親が引き取った場合には子供の姓を母親の姓にすることが可能になった。しかし、儒教を国教にしていた李氏朝鮮時代から血筋や家系図を重視するため、当時から別れた場合は女性が出ていくパターンが多いためあまり行われていない。

東アジア

日本
同氏制。明治9年太政官指令では夫婦別氏が規定されていたが、1898年(明治31年)に施行された明治民法により「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(民法750条)と変更された。以来、夫婦同氏が原則である。現民法でも、民法750条で、夫婦は同氏が原則とされており、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えなければ法律婚は認められない。なお、明治以前は、多様な氏姓制度が存在していた。
夫婦同氏を法で定めている国家は現在、日本のみである。前述のとおり、日本を含む130カ国の賛成で国際連合1979年に採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では、選択的夫婦別氏の導入が要求されており、夫婦同氏と夫婦別氏を選択することが可能な選択的夫婦別姓制度の導入について、近年議論が活発になされている。
なお、日本においても、国際結婚の場合は、夫婦同氏・別氏を選択することが可能である。
中華人民共和国
1950年の婚姻法(1980年改正)において男女平等の観点から「自己の姓名を使用する権利」が認められ、夫婦双方が自己の姓名を用いることができる。これは相手方の家族の成員になった場合でも妨げられない。また夫婦自らの意志で夫婦同姓や複合姓(冠姓)を用いることもできる。伝統的には子供の姓には父の姓が用いられることは多い。しかし、1980年婚姻法において子供の姓は両親のいずれかから選択することになり、さらに2001年改正でより夫婦平等な文言となった。
中華民国(台湾)
選択できるが、別姓が多い。1985年民法において、冠姓が義務づけられていたが、当事者が別段の取り決めをした場合はその取り決めに従うとされていた。その後1998年の改正で、原則として本姓をそのまま使用し、冠姓にすることもできると改められた。職場では以前から冠姓せず本姓を使用することが多かったという。子供の姓は、原則的に父系の姓が適用されていた(入夫の場合は逆)が、1985年の改正で、母に兄弟がない場合は母の姓にすることもできるようになった。このとき、兄弟が別姓となることも可能となった。しかしこの改正についても男女平等原則に反するとして、2008年戸籍法改正で父の姓か母の姓か両親が子供の姓を合意し、両方の署名を入れ役所に提出することとなった。合意に至らない場合は役所が抽選で決める。
韓国
各自の氏を称する。子に関しては、原則的に父親の姓を名乗っていたが、2005年改正により、子は、父母が婚姻届出の時に協議した場合には母の姓に従うこともできるようになった。なお、古代の律令制導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年血統主義に立脚した正当な理由のない制度であるとして廃止されている。

南アジア・東南アジア

インド
地域・宗教によって様々な習慣があり、ヒンズー教徒は夫婦同姓とするとされている。平成13年の男女共同参画会議基本問題専門調査会ではインドは「同氏制」とされ、妻は夫の氏を称すると報告された。しかし、K.B. Agrawalによれば、氏名を自由に変更することが可能で、結婚時の姓に関する厳密な法律的な規定は存在しない。なお、マハーラーシュトラ州では婚前の姓を名乗ってよいことが2011年に明文化された。
タイ
1913年の個人姓名法により国民全員が名字(姓)を持つことが義務化された。同12条では妻は夫の姓を用いると定められていたが2003年にタイの憲法裁判所は「夫の姓を名乗るとする条項は違憲である」との判決を出し、2005年に同12条が改正された。現行の同12条では夫婦の姓は合意によりいずれの姓を選ぶことができ、またそれぞれの旧姓を選ぶことも可能となった。
フィリピン
法律では、結婚時に女性側は、自分の姓を用い続け相手の姓をミドルネームとして加えるか、相手の姓を用いるか、相手のフルネームにMrs.をつけるか、を選ぶことが可能、とされていたが、2010年に、裁判所は、女性の権利を守る観点から、これらに加えて、相手の姓を用いず自分の姓のみを用い続けることも可能、との判断を下した。
ミャンマー
ミャンマーは基本的に姓が存在せず、アウン・サン・スー・チーはアウン・サン(父の名前)・スー(父方の祖母の名前)・チー(母の名前)と自由につけた姓である。
ベトナム
ベトナム社会主義共和国では、完全な夫婦別姓である。子供の名前を付ける時は、ミドルネームに当たる部分に、父親か母親の名前を入れることが一般的であるが、キン族以外の少数民族では例外もあり、正式名称がとても長くなる場合もある。そのため、苗字ではなく最後に付けられた名前を呼び合うのが、ベトナムでの習慣である

南北アメリカ・オセアニア

アメリカ合衆国
州により法律は異なるが、1970年代から選択的夫婦別姓が認められ、別姓の他にミドルネームなど概ね5つの選択肢が与えられている。
カナダ
州によって異なる。同姓、別姓いずれも可能である場合が多いが、ケベック州は夫婦別姓が法律で規定されている(婚姻による名前の変更は原則的に禁止)。子どもは、父の姓、母の姓、結合姓(ダブルネーム)のいずれも可能。
ジャマイカ
慣習では夫婦は同姓であるが、法で規定されているわけではないため、姓を変更せずに結婚することもできる。
ニュージーランド
伝統的には男性の姓を名乗ることが多いが、法的には、別姓、結合姓、同姓いずれも可能である。
オーストラリア
別姓、結合姓、同姓いずれも可能である。さらに、氏名の変更も比較的容易に可能である。

西ヨーロッパ

イギリス
不当な目的でない限りで自由に氏を選択できるが、妻が夫の氏を称するのが通例。
フランス
法的には規定がない。近代化に伴い、人民管理が容易となる「氏名不変の原則」が唱えられるようになり(それまでは明治以前の日本と同様、随時、氏を変えることは禁止されていなかった)、婚姻によって姓が強制的に変わるという規定はなく、妻には夫の姓を名乗る選択肢が与えられている。また、父母が別姓の場合には、子どもの姓は父か母の姓を選ぶことができる。
ドイツ
1993年の民法改正で、夫婦の姓を定めない場合は別姓になるという形で選択的夫婦別姓となった。子供に関しては、親権が父母それぞれにある場合には、どちらの姓とすることも可能であるが、子供一人ごとに姓を変えることはできない。婚姻で姓を変更して後離婚・死別した場合には、旧姓に戻す選択肢の他、旧姓を婚氏に加える二重氏を選択することもできる(ドイツ民法1355条)。
オーストリア
2013年までは、原則として夫または妻の氏(その決定がない場合は夫の氏)を称する(同氏)、あるいは自己の氏を後置することもできる(複合性)、とされていたが、2013年4月以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する、と変更された。夫の氏に変更、あるいは複合姓を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない。
スイス
2013年以前は、夫の氏が優先。正当な利益があれば、妻の氏を称することもできる(同氏)、あるいは自己の氏を前置することもできる(複合性)、とされていたが、2013年以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則として婚前の氏を保持する、と変更された。配偶者の氏に変更、あるいは複合姓を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない。
オランダ
夫の氏は不変。妻は夫の姓(同姓)または自己の姓(別姓)を称する。妻は自己の姓を後置することもできる。
イタリア
1975年までは、婚姻時に妻が夫の姓に改姓する、という民法の規定が存在していたが、1975年に民法が改正され、それ以後は別姓および結合姓が認められている。子の姓に関しては法的な規定はないが、これまで慣習法として父親の姓としていた。これに対し、母親の姓を子の姓として選択できるようにするべき、との判決が2014年欧州人権裁判所において出され、2015年現在、法改正へ向けて動いている。なお、イタリアは極めて離婚が少ない国として知られている。
スペイン
個人の名は、一般的には「名、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」であるが、1999年に「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」でもよい、と法律が改正された。婚姻によって名前を変える必要はないが、女性はその他の選択肢として「de+相手の父方の姓」を後置する、「母方の祖父の姓」を「相手の父方の姓」に置き換える、「母方の祖父の姓」を「de+相手の父方の姓」に置き換える、などの選択が可能である。
ポルトガル
2011年の時点では、既婚女性の60%が婚前の姓をそのまま用いている。

北ヨーロッパ

スウェーデン
選択制で、夫婦同氏もしくは別氏、自己の氏または相手の氏を中間氏とすることもできる(1983年氏名法)。

東ヨーロッパ

ロシア
1995年家族法典では同姓、別姓、結合姓が選択できる(第32条1項)。また、14歳以上であれば、姓も名前も父称(ミドルネーム)も自分の意思で変更可能である。
ポーランド
婚姻後の姓はどちらかの姓に統一しても良いし(同姓)、変えなくても良い(別姓)し、婚姻前の自分の姓の後に結婚相手の姓をつなげても良い(別姓、複合姓)。ただし複合姓にする場合、3つ以上の姓をつなげてはいけない(1964年)。

中東

トルコ
2001年の法改正により女性の複合姓も認められた。さらに、2014年には、最高裁において婚前の姓のみを名乗ることを認めないことは憲法違反、と判決が下された。

日本の状況

歴史

詳細は「氏姓制度」および「古代日本の戸籍制度」を参照

中世まで

飛鳥時代 - 平安時代初中期は、「」(うぢ、うじ)・「氏名」(うじな)と「」(かばね)があった。「藤原」が氏であり「朝臣」が姓である。大宝2年(702年)御野国加毛郡半布里戸籍、同年豊前国仲津郡丁里戸籍、養老5年(721年)下総国葛飾郡大嶋郷戸籍、延喜2年(902年)阿波国板野郡田上郷戸籍等には夫婦同氏と別氏が見られるが、寛弘元年(1004年)讃岐国入野郷戸籍・同年国郡未詳戸籍では19夫婦の全てが同氏となっている。日本には「同姓不婚」の習慣はなく、養老令の戸令にも改姓規定がないため、この同氏は同族婚とする見方がある。この時期、女性名には「刀自売(とじめ)」「二子」「定子」「犬子」などの型があった。但し嵯峨天皇期(809-823年)には下の名前の唐風化が行われ、「童名(わらわな)」(つまり幼名)と「諱(いみな)=実名(じつみょう)」(つまり成人名)の区別、男性の実名に「嘉字」(縁起のよい字)と「系字」が導入された。系字とは同一世代の男性に同じ一字を共有するもので、「正良」「秀良」「業良」のようなものである。これは父系親族組織内の世代序列を示すもので、「輩字」ともいう。女性の実名は「2音節の嘉字+子」が内親王に導入された。

平安後期 - 中世前期は、氏姓に加え名字が発生。系字は横(同一世代)の共有字であったが、11-12世紀頃に縦(父-子)の「通字(とおりじ)」へと変化した。これは「家」の形成に伴い、家系を示すものとされる。例えば桓武平氏の本流ではみな「盛」を通字として持っている。但し藤原摂関家で「忠実-忠通-基実-基通」のように「実」「通」を交互に継承した例も見られる。氏姓は夫婦別氏姓であり名字は夫婦同名字である。但し「北条」の子がそのまま「北条」を名乗るわけではなかった。名字はその世代限りのものであり、代々継承される永続的な組織の名(家名)ではなかった。鎌倉時代までは貴族・武士・庶民とも氏(姓)の使用の方が一般的であり、夫婦別氏であった。下の名前は、「頼朝」のような実名・諱のほか、「犬次郎」のような仮名(けみょう)・字(あざな)・通称を持ち、同一人物が社会関係に応じて両者を使い分けた。女性名は「刀自売」型から「鶴女」型へ移り、13世紀に比率が高まる。「二子」型は13世紀までは半分以上を占めるがやがて減少する。また「紀氏女」型が11世紀後半に現れた。男性名は「源次」のように氏(姓)を含む字、「和泉大夫」「左衛門」のように国名や役職名を用いる字、「犬次郎」のような童名の字、「西念」のような法名、その他「孫太郎」のような字などがあった。

中世後期は、家産家業などを継承する永続的な「家」が成立するとともに夫婦同名字が一般化し、名字が家名となった。摂関家も夫婦別氏・同名字であった。また父親の字「平三郎」が長男へ継承され続けたと思われる例が近江国菅浦(すがのうら)の文書(13世紀-16世紀)に多数見られ、そのような人名が家名化したとする説がある。庶民の女性名は「紀氏女」型も「二子」型も姿を消し、「鶴女」のような童名や「兵衛女」のように「男性名+女」の型、「妙賢禅尼」のような法名を名乗った。殊に戦国期以降はかなりの割合が童名型を生涯名乗るようになった。

江戸期

庶民の氏・苗字の使用は禁止。「名字」は「苗字」と書かれるのが普通になった。士分以外の者は一部を除き氏・苗字を公式に使用することが認められなかった。但しあくまで「名乗る」ことが禁止されていたのであり、氏・苗字を持つ庶民も多くいた。苗字は必ずしも生涯不変ではなく(本姓を除く)、何度も変える者もいたが、婚姻によって変えるという決まりもなかった。但し庶民の女性名は単に「女房」とだけ書かれることが多く、実態は明らかでないが、おそらく夫婦同苗字であったとされる。しかし、芦東山の妻が夫の幽閉赦免願書に「飯塚妱【女へんに召】」(いいづかちょう)と生家の苗字での署名があったり、松尾家に嫁いだ妻多勢(たせ)が平田国学に入門した際の誓詞帳に「松尾佐治右衛門妻 竹村多勢子」と実家の姓名で署名する例があったり、或いは夫婦別苗字の墓標があったりする(大藤(2012)、58ページ)など、氏も苗字も実家の父方のものを名乗るのが一般的という説もある。また妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸から東北にかけて広く分布する。なお「家名」として通用していたのは苗字ではなく通称(「○左右衛門」や「○兵衛」など)や屋号であったとする説がある。

戦前

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