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安全保障とは?

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国家安全保障(こっかあんぜんほしょう、英語: national security)は、ある集団が生存や独立などの価値ある何かを、何らかの脅威が及ばぬよう何かの手段を講じることで安全な状態を保障することである。また、その目的のための体制・組織などを指す場合もある。国際関係における安全保障は主として他国からの防衛をその主眼に沿えるものである。

目次

  • 1 概説
  • 2 概念
    • 2.1 伝統的安全保障
    • 2.2 人間の安全保障
    • 2.3 総合安全保障
    • 2.4 集団安全保障
    • 2.5 共通の安全保障
    • 2.6 協調安全保障
  • 3 安全保障の歴史
    • 3.1 安全保障研究の第一次沈黙期
    • 3.2 安全保障研究の第二次沈黙期
    • 3.3 PFP協定と再保証型安全保障制度
  • 4 国際安全保障体制の理論
    • 4.1 平和理論
    • 4.2 覇権モデル
    • 4.3 勢力均衡モデル
    • 4.4 大国間協調モデル
    • 4.5 集団安全保障モデル
  • 5 軍事的側面
    • 5.1 軍事力
    • 5.2 核兵器
      • 5.2.1 核抑止の種類
      • 5.2.2 抑止戦略モデル
      • 5.2.3 演繹法的抑止戦略モデル批判
      • 5.2.4 相互確証破壊
    • 5.3 軍縮・軍備管理
  • 6 非軍事的側面
    • 6.1 非軍事的側面に関する議論
    • 6.2 経済の安全保障
    • 6.3 資源の安全保障
    • 6.4 環境の安全保障
    • 6.5 思想・文化の安全保障
  • 7 学派・視点
    • 7.1 脅威
    • 7.2 国益
    • 7.3 ネオ・リアリズム
    • 7.4 リベラリズム
    • 7.5 機能主義
    • 7.6 地政学
    • 7.7 構造的暴力
    • 7.8 シカゴ学派
    • 7.9 世界最終戦論
    • 7.10 ソフトパワー
    • 7.11 エアパワー
  • 8 国際連合と安全保障
    • 8.1 国連軍
    • 8.2 国連平和維持活動
    • 8.3 ガリ構想
  • 9 安全保障の抱える問題
    • 9.1 セキュリティ・パラドックス
    • 9.2 脅威の創出
    • 9.3 自由の抑圧
    • 9.4 脅威の誇張
  • 10 日本の安全保障
  • 11 安全保障の分野の専門・関連用語
  • 12 参考文献
  • 13 関連項目

概説

安全保障とは、ある集団・主体にとっての生存や独立、財産などかけがえのない何らかの価値を、脅威に晒されない様にから何らかの手段によって守ることを主に指すが、その概念は非常に多様である。歴史的・伝統的には軍事的な脅威に対するものが主であったが、冷戦後は大量破壊兵器拡散、国連平和維持活動、また発展的には経済エネルギー資源なども含めるものへと研究領域が拡大し、一部で環境問題人権を包括する主張もある。現代における国家間の主要な安全保障は軍事力の要素に基づきながらも、外交経済環境などを広範なものを含めるものである。

その研究対象の例を挙げると、軍事戦略、安全保障体制、文化政策(ソフトパワー)、広報・教育宣伝政策(プロパガンダ)、地域政策、経済政策・金融政策、人的国際交流、地政学(ジオポリティクス)、国際関係論エネルギー安全保障、宇宙政策、RMA(軍事における革命)、軍縮小火器に関する安全保障(DDRなど)、大量破壊兵器地雷環境人口問題、水資源、貧困問題、食糧問題などがある。特に貧困や民族・部族対立などの国内問題が安全保障問題に至るような事態になることを安全保障化という。

概念

現代において確固とした安全保障の定義は存在せず、そのことは多くの専門家によって指摘されてきた。

安全保障は古代ローマにおいて精神的な心の平穏を意味するSecuritasを語源とし、英語ではSecurityやフランス語ではSécurité、ドイツ語ではSicherheit、イタリア語ではSicurezza、スペイン語ではSeguridadと表記され、こうした欧州の概念を日本などが輸入した結果、漢字表記としての安全保障という概念が成立することとなった。古代ローマにおけるsecuritasという概念はストア哲学の基本概念のひとつであり、政治的社会的な意味を帯びた結果、ローマ帝国時代における「ローマによる平和」即ちパクス・ロマーナ(Pax Romana)という概念に結び付けられるようになった。

伝統的な安全保障概念とは、軍事的な意味での国家の平和と独立或いは国家間の関係の中でとらえられてきたが、今日では人間の安全保障をはじめとして非国家的・非軍事的な概念が派生しており、その概念は時代によって変化し、また文脈や使用者、学派、価値観によってもその意味が異なることがある。このため、正確に安全保障という概念をとらえる上で、使用には注意を要する。

近現代では理論上、安全保障と防衛は厳密に区別される。安全保障とは『脅威が及ばないようにすることで安全な状態を保障すること』を目的としているのに対し、防衛は『及んできた脅威に対抗し何らかの強制力によってそれを排除する』ことが目的である。

以下では、ここでは伝統的安全保障をはじめ、新たな安全保障概念を含めて今日、国際政治上、論議される代表的な安全保障の概念について解説する。

伝統的安全保障

伝統的安全保障とは国家の領土や政治的独立、外部からの脅威を軍事的手段による牽制によって守ることを主眼においた、最も基本的な安全保障の概念である。国防がこれに該当する。今日においても軍事力を用いて国家の生存と独立、国民の財産、安全を保証することは極めて重要な国家の役割の一つとされている。今日では国家総力戦核兵器の登場により戦争が割に合わない物になったため十分な抑止力を整備すれば、先進国同士の戦争は起きにくくなっている。

人間の安全保障

人間の安全保障とは国際社会の秩序を人間社会の延長として認識し、国家よりもむしろその最小構成単位である人間に注目し、武力行使を防ぐためのシステムを確立し、その基本的な人権平等民主主義の発展をグローバルな市民社会の協力によって目指し、平和を創出するグローバリズム学派の安全保障の概念である。またエイズ環境問題などを研究対象に含める場合もあるため、非常にさまざまな要素を包括する概念である。

総合安全保障

総合安全保障とは脅威に対する手段を軍事的なものに限らず、非軍事的なものも最大限に取り入れ、同時に対象となる脅威も国外だけでなく、国内や自然の脅威をも対象とする安全保障の概念である。1980年に大平総理の総合安全保障問題研究の政策研究会報告書において理論化された。

集団安全保障

集団安全保障とは国家連合において、軍事力の行使を原則禁止し、またその原則に違反して武力行使に至った国家に対しては構成国が連合して軍事的な手段も含む集団的制裁をかける安全保障の概念である。国際連盟において初めて採用され、現在では国際連合がこの集団安全保障を機能させる国際機関であるが、いまだ実現しておらず、国連憲章に定められた体制は整っていない。

共通の安全保障

戦争回避が共通の利益であるとの認識に基づいて、敵とも協力して戦争回避を目指す安全保障の概念である。冷戦ヨーロッパにおいて生まれた概念であり、従来の競争的対立的な安全保障を否定し、敵勢力との相互依存的な協力を重視する。この具体例として1975年の欧州安全保障協力会議(現在の欧州安全保障協力機構)が挙げられる。

協調安全保障

敵味方が流動的な不安定地域の国家が体制に加わり、各国の協調主義的な外交貿易によって危険や脅威を制御し、戦争を予防し、戦争が勃発した場合もその拡大を抑制することを目的とする安全保障の概念である。非軍事的な側面が重視されているものの、体制に潜在的適性国を含めてその地域のすべての主要国が参加する必要があること、さらに潜在的適性国を含めて域内の全主要国が共同行動に参加する意思を持つこと、また顕在的敵性国が体制内に存在しないことなどが体制が機能する前提条件となる。

以上から分かるように、安全保障の概念は時代、世界観、思想、政策などによって変化しているため、注意が必要な包括的な概念であることが分かる。

安全保障の歴史

古来から人類にとって生存は最重要課題であり、そのために歴史上の為政者たちは自国の安全を確保するために多大な労力を費やしてきた。

19世紀までの国際社会においては、対立する国家(同盟)間の力の均衡によって秩序が安定するという国際社会において、軍事力の造成と同盟の強化によってのみ自国の安全を保障するという個別的安全保障の考え方が支配的であった。故に当時の安全保障の研究領域は、国家軍事政策外交政策などにとどまっていた。

しかし、この個別的安全保障のもとでは、対立する国家間の軍拡競争が発生し、対立する国家間の緊張・不信感をいたずらに高めて戦争のリスクを高めることとなる。また小規模な紛争が世界戦争へと拡大する可能性も高めることとなる。第一次世界大戦は、個別的安全保障の危うさを示した最初の世界戦争である。

そこで、この第一次世界大戦後には、集団安全保障の考え方に基づく国際連盟が設立された。集団安全保障とは、全世界すべての国が体制に参加し、武力行使を原則禁止するとともに、これに違反した国に対しては構成国が協力して軍事力を含めて制裁する安全保障体制である。ただし集団安全保障の制度は、すべての国が参加することや、顕在的な敵国が体制内に存在しないことが条件となると考えられている。これによって国際緊張は緩和され、軍縮の可能性もありうる。

しかし国際連盟は権限や体制において欠陥があり、第二次世界大戦の開始を防ぎ得なかった。この歴史を踏まえ、設立された国際連合集団安全保障のための体制をいっそう整備強化した。しかし国連は米ソの対立によって当初考えられていたように円滑に機能することができなかった。冷戦に突入してからも国連も機能不全が起こり、また米国においてはソ連との対立があったため、ソ連に対する軍事政策の研究を中心に行ったために、軍事理論が中心であった。

安全保障研究の第一次沈黙期

1960年代後半から1970年代後半にかけて安全保障研究は沈黙した。この沈黙期は、米ソ緊張緩和外交の影響や特に危機的な紛争が起きなかった事の理由が強い。なお、1970年代以降の安全保障研究活発化は、米ソ緊張緩和外交の有効性が示されなくなった事の影響が強い。

安全保障研究の第二次沈黙期

1991年12月、ソ連が崩壊したが、これを予見できた研究者が居なかった。また崩壊が起きた後もそれを説明できる研究者が居なかった。以後、国際政治学者、その中でも安全保障を研究する人々は沈黙した。ソ連崩壊によって「安全保障研究は死んだ」と言う意見すら出回った。冷戦後は国際的な相互依存関係の強まりや、国際経済の発展を背景に、安全保障は広く政治的、経済的利益を、軍事的手段のみならず外交、経済力、文化などをも用いて守ることを指すようになった。

PFP協定と再保証型安全保障制度

ソ連の脅威が無くなり、西ヨーロッパが所有する戦術核7400発の多くは不要とされ、大部分は廃棄となった。これにより NATOの性質の変化が求められたが、NATO解体はむしろ地域情勢を悪化させるとして存続されることになる。1994年1月、NATO拡大とそれに強硬に反対するロシアへの妥協案として PFP協定が提唱された。1997年9月、日米防衛協定の指針の改訂作業が行われ、日本の本土防衛だけでなく「周辺事態(現・重要影響事態)」にも対応する事が決定される。この安全保障体制を 再保証型(リアシュアランス型)安全保障制度と言う。

国際安全保障体制の理論

国際社会という視点で、安定的な世界秩序を維持する国際体制に関する理論も安全保障において主要な課題である。ここでは代表的なモデルや理論を述べる。

平和理論

国際秩序は力の不均衡や、国際経済の影響などによって安定と不安定の状態を歴史上長年行き来してきた。ここではその安定した国際秩序が維持されている国際関係の定式化を行った理論について述べる。

単極平和論
圧倒的な力を持った大国の存在が世界を平和にするという理論である。この平和論の多くはパックス・アメリカーナを意味するが、中には世界政府思想などもある。
双極平和論
圧倒的な力を持った二ヶ国(勢力)の存在が、お互いに拮抗することで結果として世界を平和にすると言う理論である。この平和論の多くは米ソ冷戦期を意味する。
多極平和論
複数国による均衡、拮抗状態により世界秩序を平和に維持するという理論である。つまり、国連などの国際機関を中心とした平和論を意味する。
民主的平和論
民主主義政治体制を採用する国家同士では戦争に訴える可能性が少ないという学説である。主にブルース・ラセットによって論じられており、民主主義の国家が好戦的でないとは限らないが、歴史的な経験則においては民主主義の国家同士が戦争を行うことが比較的に少ない傾向があるとされる。従って世界中の国家の体制を民主化することによって、世界の安全保障は確保することができるという考え方の基礎となっている。相互に高度な民主体制を構築できれば、軍事バランスとは関係なく平和関係が維持できるという点で、他の安全保障論とは一線を画している。その発想の源流はカントの平和思想にあるといわれ、カント的国際主義とも言われる。しかしながら、なぜ民主主義体制が国際関係における戦争を抑制するのかについては議論の余地がある。

覇権モデル

覇権モデル(hegemony model)とは、ある地域内で他の国々を圧倒するだけの国力を持つ「覇権国家」が存在し、それが周辺諸国を主導的に指導する国際秩序のモデルのひとつである。

この覇権モデルはさらに二種類に区分される。直接的に軍事力などを用いて諸国を支配する「専制帝国」は周辺国を属国として扱い、属国の反抗があれば武力で鎮圧する。間接的に経済力などを用いて諸国を支配的に指導する「民主帝国」(別名「リベラル・エンパイア」もしくは「帝国的共和国」)は、周辺諸国の協力を得ながら広い地域に利害が共通する安全保障体制と、国際的な経済の枠組みを提供し、勢力圏の諸国の安定を目指す。

勢力均衡モデル

勢力均衡モデル(balance of power model)とは、一つの勢力(国家、国家群)が強大化した場合、その他の国々は連合化や軍事力の増強などによって、勢力を拮抗しようとする現象のモデルである。

この勢力均衡モデルはさらに「二極型勢力均衡モデル」と「多極型勢力均衡モデル」がある。二極型勢力均衡モデルとは、二つの勢力のみが主に勢力を均衡させようとするものであり、冷戦期の米国ソ連の関係がこれにあたると考えられているが、歴史的には稀な場合である。多極型勢力均衡モデルは、複数の勢力が同時に勢力を拡張し、均衡させようとするものである。歴史的にはこの場合が多く、第一次世界大戦第二次世界大戦はこのモデルに合致すると考えられている。

大国間協調モデル

多極型勢力均衡モデルの発展モデルであり、いくつかの大国が利害関係については相互に妥協・協調し、処理して秩序を維持するモデルである。1815年のウィーン会議以降から第一次世界大戦までの約1世紀の間のヨーロッパは基本的に多極型勢力均衡モデルであると考えられているが、同時に大国間協調モデルが並存していた時代でもあるとされている。しかし、アフリカ植民地分割を議題とするベルリン会議でどうしても協調できない問題が顕在化してしまい、三国同盟三国協商国際関係が成立した時点で多極型勢力均衡モデルへと逆行していった。

集団安全保障モデル

集団安全保障モデルとは特定の体制に国家が入り、原則的に武力行使を禁じ、もし構成国がこれを違反すればその他の構成国が協調して軍事経済などの手段によって制裁を加える国際安全保障モデルである。勢力均衡モデルによって世界大戦をもたらしたという反省に基づいて、このモデルが国際連合という形で実現化されることとなった。ただし地域連合においても、集団安全保障モデルが採用されている場合があり、米州機構アフリカ統一機構(現アフリカ連合)、北大西洋条約機構ワルシャワ条約機構が挙げられ、地域集団防衛条約機構と呼ばれる。

軍事的側面

現代においても、安全保障にとって軍事は非常に根幹的な存在である。なぜなら安全保障の本質的な課題である国家の生存、独立の保持、領土の防衛などは軍事力と今なお深い関係があるからである。

軍事力

軍事力(military capability)とは国家がその政治的目的、国益を達成するために用いる物理的な破壊力、支配力、強制力であり、広義の軍事力は軍隊だけでなく、さまざまな国力によって構成される。 安全保障における軍事力の役割は、強制、抵抗、抑止それぞれの機能を対外的に示し、攻撃に対し予期される損害や攻撃の戦略・戦術上の困難さを意識させることである。

核兵器

大量破壊兵器、特に核兵器は安全保障が特に注目するテーマのひとつである。ここでは核戦略に関する理論などについて述べる。

核抑止の種類

冷戦期における米ソ対立中にアメリカにて発展した核抑止には以下の種類がある。

存在的抑止(実存的抑止)
核兵器の場合、数発で国家を消滅させるほどの威力を持つ、よって核が存在すると言うだけで国家指導者、為政者の考え方や政策方針に関係無く抑制機能(抑止力)が働くという考え。
戦略的抑止
核兵器であっても、存在だけに頼るのでなく危機の場合にはちゃんと機能させて初めて抑止力が生まれるという考え。
懲罰的抑止
ソ連が侵略行為を行えば、ソ連の都市や工業地帯に懲罰・攻撃的報復を加えて抑止力を持たせるという考え。
拒否的抑止
ソ連の政治的、軍事的な目的の達成を拒否し、あるいは目的達成の為のコストが高過ぎることを認知させ抑止力を持たせるという考え。

抑止戦略モデル

敵性国家(または潜在的敵性国家)に対する抑止戦略。

演繹法的抑止戦略モデル
演繹法的に抑止戦略を立てることを言う、1970年代まではこの考え方が中心であった。
帰納法的抑止戦略モデル
帰納法的に抑止戦略を立てることを言う、1970年代からはこの考え方が中心となる。

演繹法的抑止戦略モデル批判

アレキサンダー・ジョージは 核抑止、地域紛争、危機の抑止の三つの抑止の内、核抑止以外は変動要素(目的、手段、選択肢、事態の悪循環の可能性)が多く、単純な損得勘定では戦争勃発を説明出来ないと批判した。これ以降、帰納法的抑止戦略モデルの考え方が主流となる。例えば旧日本軍南下政策や真珠湾攻撃は演繹法的抑止戦略モデルによる単純な利害論では説明出来ない。

相互確証破壊

安全保障は時に「いかに敵を攻めるか」「いかに敵に被害を与えるか」と言う事を考えて、逆説的に「いかに平和を保つか」を探る手段を用いる。有名な考え方は核兵器の「相互確証破壊」(mutually assured destruction、MAD)である。

1965年にソ連が抑止力としての核兵器から、攻撃としての核兵器に性質を変化させ、アメリカを攻撃した場合に、アメリカは報復核攻撃を行いソ連の人口の 25%、工業力の50%を破壊すると言う考え方である。しかし、この考え方が出てくるとソ連では対米確証破壊力の強化が打ち出され、ソ連の GNP15% を軍備に投資すると言う大軍拡を行った。 この間、米ソ間で核戦争が起きなかった事から「相互確証破壊論」は有効であったとの考え方が一時期主流になったが、相互確証破壊論による核抑止は結果として過剰な軍拡を引き起こしたため、その抑止のための軍備管理として SALTが行われ、特に米ソ間で軍縮が進んだ。 これを教訓に核による報復攻撃が果たして本当に価値があるのか、と言う対価値攻撃戦略(counter value strategy)の考え方が浮上した。1971年には核戦略は選択的に活用すべき、との考え方が広がり「相互確証破壊論」の「全面報復」の考え方は後退した。1974年に、柔軟目標設定が発表され、兵器の命中精度が高い(高くする)と言う前提で、敵対国からの攻撃に報復の段階を持たせた。

軍縮・軍備管理

詳細は「軍縮」および「軍備管理」を参照

軍縮(arms reduction、disarmament)とは戦争のリスクを抑制することを目的として軍備を縮小していくプロセスを指す。軍備管理(arms control)とは軍備に関する政策に課せられる抑制措置を指す。近年では軍備管理という方が主流になりつつある。

非軍事的側面

安全保障は冷戦後、非軍事的な側面に対する関心は高まりから経済資源環境などの分野にも研究領域を拡大した。

非軍事的側面に関する議論

ただし、安全保障の概念をどこまで拡大するかについては、「何にでも安全保障の概念が適応できるのか」という議論が残っている。例えば環境問題を安全保障の観点から研究する場合、その「安全を保障する対象」は、国家なのか、特定の地域なのか、地球全体なのか、もし地球全体を守る対象とする問題だとするならば、それは普通の「環境問題」であるのではないか、などの議論がある。

また、国政においては安全保障も政争の具であり、あらゆる事象、事柄を安全保障に結びつけることで危機感を煽り自らの権力拡大に役立てる政治手法が用いられる場合がある。しかし、全てを安全保障に絡めてしまうと、必要以上の危機感や不安感を多くの人々に与えてしまう場合がある。また、本来は対話などの平和的解決も安全保障に含まれているにもかかわらず、安全保障に偏った外交方針を敷くと外交が硬直化し、非妥協、非協力的な国家として孤立に結びつく可能性がある。同時に、集団的安全保障を敷く国においては同盟国への必要以上の譲歩に結びつき国益を損なう可能性もある。それは本来安全保障が目的とする「国家や人々の安全な状態を保つ」とは言えず、安全保障が「国家を危険な状態に追い込み、人々に不安な状態を呼び込む」と言った事態が生じてしまう。

経済の安全保障

経済安全保障の目的はその国家の経済、国民の経済生活を維持、改善することにある。経済とは国に住む人間の生活そのものである。故に経済力は極めて重要な国力であり、また国際経済における競争力を維持し、経済的な自立を達成することは国の存続に直接関わることであると言える。

経済における安全を定義することは軍事における安全とその性質が本質的に異なっているため難しい。市場経済は本質的に不安定性を内在するものであり、保護主義的な関税を設定するなどの手段で市場に過剰に介入することは国内産業の競争力を低下させる恐れがある。また市場を制御するために市場の独占が必要になるが、それは市場経済の原理そのものに反する行為である。国外からの直接投資輸入などを断絶して自給自足を目指すことも近年の経済の相互依存関係が進んでいるため、不可能に近い。故に経済の安全保障政策を行う場合はこのような経済の特性や市場の原理を十分に把握して実行することが極めて重要である。

資源の安全保障

資源エネルギー経済活動を行い、資本の価値を増殖させていくのに欠かせない国力の前提的存在である。歴史的に見ても、資源地域を巡る領土紛争は非常に多い。戦略的に重要な資源・エネルギーとしては、アルミクロムコバルトプラチナ石炭石油天然ガスなどが挙げられ、これらは近年の科学技術工業の発展、大量消費社会の拡大から重要な価値を持つようになっている。

資源の安全保障に対する脅威には、禁輸措置、供給量の削減による価格吊り上げなどがある。代表例として1973年のOPEC原油価格引き上げが挙げられる。また自然災害戦争などによる供給システムの停止という脅威も考えられる。第二次オイルショックイラン革命が主な要因となって引き起こされた。

資源の安全保障の手段として、自給自足の準備や国内における消費の抑制などの脅威の発生を予防する方法、さらに緊急事態に備えた備蓄、危機発生における対策準備などの脅威による被害の最小化を試みる方法がある。しかし、これらは大きな費用を伴う措置であるため、慎重に検討しなければいけない。

環境の安全保障

現代の大量生産・大量消費の経済活動と世界的な人口増加などが自然環境に大きな影響を及ぼしている。環境の安全保障はこうした自然環境への影響が人間の生存地に深刻な悪影響を及ぼすことがないように試みることにある。あらゆる環境問題が安全保障の対象になるわけではなく、基本的に国民の生存、国家の利益などに対する間接的・直接的に影響する可能性がある問題に限定される。 1990年代に環境安全保障が活発になり、特に米国では盛んに議論された。 しかし、米国での環境安全保障議論は、環境保護団体が軍隊の環境改善の為の工作部隊としての役割を期待し、 軍隊は、環境保護を理由に軍事予算の拡充や権限強化を狙った為、本来相反する存在のはずの軍隊と環境保護団体が共闘する傾向が強まった。 環境保護団体には、軍隊の非武装化を狙う非武装主義者も介入するようになり、 環境安全保障を理由に軍隊の弱小化を考える人々と、強化を考える人々の深刻な意見の亀裂が生じた。 また、しばしば環境安全保障が目的とする物やその実際の手段に混乱が見られた。 結果として、軍隊の権限強化や役割拡大には危険な面が多いとし、以後環境安全保障についての議論は低迷した。 現在は軍隊を用いない、市民活動や国家の役割、企業の環境に対する責務と言う観点からの環境安全保障の議論は現在も続いている。 しかし、具体的かつ明確化されたルールが確立されるまでには至っていない。

思想・文化の安全保障

思想文化の安全保障とは、統治原理・文化思想宗教・国民性などの思想的・文化的な国家の基幹的な要素を守ることである。選挙などを通じて大衆の政治への関係が大きくなれば、その行動や世論政治的影響力を持つようになる。また同時に交通通信が高速化、密接化が増大すれば国外の思想や文化が流入するようになる。そうすれば、これらを活用して宣伝・広報などを通じて世論を外部から間接的に誘導することが可能となる。例えば、マスコミを通じてその国の正統性を主張することによって、国際社会に対して好意的な印象を形成するなどが考えられる。宣伝を行う場合、あからさまな偽情報を流せば宣伝者の信頼性を減退させる。故に宣伝活動で流される情報は露骨な宣伝ではなく、さり気なく、かつ継続的・戦略的な大衆宣伝となる。ただし、近年は宣伝に客観性が求められるようになっており、広報との差異は曖昧になりつつある。ジョセフ・ナイは冷戦後の国際関係における問題として「脅威の種類と程度の曖昧性」にあると指摘している。

学派・視点

安全保障は観察者の視点によってもその内容が大きく変わる。ここでは主要な学派や安全保障観について述べる。

脅威

脅威とは安全保障において敵または潜在的な敵を指して使用する。脅威には政治的、思想的、経済的なものが各種存在するが、純粋に軍事的な脅威は「能力」と「意思」から判断されるのが一般的である。すなわち、ある国が自国に対して侵略する国家意思を有していたとしても、それを実行するための軍事力が存在しないのであれば、また自国の軍事力が圧倒している場合は、その国は脅威ではない。またある国が膨大な軍事力を保有していたとしても、非常に友好的な関係があり、侵略の国家意思がない場合はこれも脅威とはならない。

また非対称脅威という言葉がある。これは従来の国家対国家という対称的な脅威ではなく、国家対非国家という対称ではない脅威を言う。つまり対称脅威とは国家体と国家体の間に生じる脅威を言うが、非対称脅威とは、国家体と非国家体の間に生じる脅威について言う。

国益

国益とは国家にとっての価値または利益である。狭義には国家の生存と独立、広義には国家の経済的繁栄や国際社会での地位増進などが国益にあたる。現実主義理論の重要な概念の一つであり、あらゆる国家はこの国益を追求して行動していると考える。一方で理想主義リベラリズムでは一国の利益である国益を重視しない。何故なら、より国際的で共通的な利益、例えば国際公共財や国際レジームを重要視し、また国益が政策決定者の主観性によってその内容が変化するからである。

ネオ・リアリズム

ネオ・リアリズムとは国際構造があらゆる国家の行動に影響すると仮定した理論体系であり、これにはウォルツ (K.N. Waltz) による国際政治を無政府状態と勢力分布で説明する Theory of International Politics (1979)、またギルピン (R.Gilpin) による戦争だけが国際構造を変えるとする War and Change in World Politics (1981) などがある。

ネオ・リアリストであるウォルト (S. M. Walt) はバンドワゴン理論を打ち出した。これは同盟体制は脅威に対抗するだけでなく、脅威国に同調される時にも形成されるという考えであり、つまりバンドワゴン(勝ち馬に乗る)行動を示すことを述べた。 例えば1930年代に中欧バルカン諸国の中小国がドイツ(ヒトラー)に次々と与し、協力していった。また日英同盟日独伊三国同盟、現在の日米同盟などは勢力均衡理論に立った同盟ではなく、バンドワゴン理論に基づく同盟であると指摘している。

リベラリズム

機能主義

リベラルな国際政治学者は、「国家」とは個人の自由や権利を守る為の「必要悪」として考えており、その「必要悪」同士で議論の場を設けて平和構築や国際秩序の形成を狙った。(詳細は 機能主義 (国際関係) の項目を参照)

機能主義の反省と、リベラルな勢力によって 新機能主義 が提唱された。 要するに国家(国家体)ではなく、民間(非国家体)による外交と、国家の暴走の歯止め、多国籍企業、それらが発展し非国家体が国家体の国家主権の制約さえ可能と言う考えが出てくる。(詳細は 新機能主義 の項目を参照)

地政学

地政学の観点ではハートラン

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出典:wikipedia
2018/05/25 14:21

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