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平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害とは?

【行方不明者】
-

【負傷者】
44

【建物等被害】

【全壊】
133 棟

【半壊】
122 棟

【一部損壊】
175 棟

【床上浸水】
1,301 棟

【床下浸水】
2,828 棟

【災害救助法
適用市区町村】
広島市
出典:
八木三丁目。現場より可部線梅林駅方面を望む
被災地の一つの八木三丁目(被災から3日目。大型重機も現場に入っている)
土砂崩れで壊れた福祉施設(八木八丁目)
被災した福祉施設は約3週間後に別施設の間借りで再開。その後2014年11月に、安佐北区亀山南にある広島県職員の旧独身寮に、5年間の無償借り入れの上で移転した。
破壊された車や電線(八木三丁目)

平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害(へいせい26ねん8がつごううによる ひろしましの どしゃさいがい)とは、2014年(平成26年)8月20日広島県広島市北部の安佐北区安佐南区の住宅地等で発生した大規模な土砂災害。「広島土砂災害」、「平成26年8.20広島市豪雨土砂災害」、「8.20土砂災害」などとも呼ばれる。

この災害の素因となった豪雨は、気象庁により「平成26年8月豪雨」と命名されている。

目次

  • 1 概要
  • 2 気象
    • 2.1 先行降雨と線状降水帯
    • 2.2 当日の降水量
  • 3 地理
    • 3.1 被災地概況
    • 3.2 八木地区
    • 3.3 災害伝承と報道
    • 3.4 地山と流出土砂
  • 4 行政側の不備
    • 4.1 砂防
    • 4.2 警戒区域指定
    • 4.3 避難勧告
  • 5 被害
    • 5.1 人的被害
    • 5.2 物的被害
      • 5.2.1 家屋
      • 5.2.2 家屋以外
    • 5.3 イベント
    • 5.4 観光
  • 6 被災例
    • 6.1 緑井七丁目周辺
    • 6.2 県営緑丘住宅裏
    • 6.3 八木ヶ丘団地裏
    • 6.4 可部東六丁目周辺
    • 6.5 洪水
  • 7 行政・皇室の反応
    • 7.1 沿革
    • 7.2 災害救助
    • 7.3 皇室
    • 7.4 政争
  • 8 復旧活動
    • 8.1 応急復旧計画
    • 8.2 災害廃棄物
    • 8.3 避難活動
    • 8.4 ボランティア
    • 8.5 支援・義援金
  • 9 災害後のとりくみ
    • 9.1 地域防災計画の見直し
    • 9.2 復興まちづくりビジョン
    • 9.3 「みんなで減災」県民総ぐるみ運動
    • 9.4 土砂災害防止法の改正
  • 10 脚注
    • 10.1 補足
    • 10.2 出典
  • 11 参考資料
  • 12 関連項目
  • 13 外部リンク

概要

2014年8月19日夜から20日明け方にかけて、広島市安佐南区八木緑井・山本および安佐北区可部を中心としたごく狭い範囲に集中豪雨が発生した。「数百年に1回程度より遥かに少ない確率」で発生した記録的集中豪雨であった。線状降水帯が発生し、3時間降水量は200ミリを超え、同時多発的に大規模な土石流が発生した。広島市災害対策本部のまとめでは、土砂災害166ヶ所、うち土石流107ヶ所・がけ崩れ59ヶ所、発生している。

1.記録的集中豪雨が、2.午前1時半から午前4時の真っ暗で対応の難しい時間帯に、3.新興住宅地など人家が密集する住宅地後背の山々を襲った、の3つの悪条件が重なったことで甚大な被害を出した「都市型土砂災害」。この土砂災害はそれ以前のものと一線を画し、単に砂防だけの問題でなく都市計画・地域計画・防災計画の様々な問題点が浮かび上がった。

行方不明者の捜索は約1か月間におよび、災害における直接死は74人(最終報)、これに2016年現在で災害関連死3人が加わり、死者77人となった。この災害死の数は、国土交通省の発表によると土砂災害による人的被害としては過去30年間の日本で最多であり、1983年7月に島根県西部で87人が死亡・行方不明となった豪雨(昭和58年7月豪雨)による土砂災害以来の大きな人的被害となった。広島市に限れば、1999年6.29豪雨災害における土砂災害被害を上回った。近年まれに見る死者数の多さから、社会問題として大きく扱われた。住宅被害、電気・水道・ガスなどに加えて交通網が集散する場所であったことからライフラインインフラ全てにおいて大きな被害を受けた。避難勧告の対象範囲は大きく、避難所へはピーク時で904世帯・2,354人が避難したものの、安全が確認されるまで長期にわたり避難所での生活を余儀なくされた。

ただ不幸中の幸いであったのが河川(洪水)災害は限定的であったことである。災害が起きた付近は古くから河川災害が頻発した地であったが、20日4時20分頃可部三丁目付近で根谷川が氾濫した以外は大きく被災しなかった。

行政対応の不手際から、1999年災害の教訓が生かせなかったと指摘された。特に、広島市からの避難勧告発令の遅さが批難された。土砂災害防止法の問題点が浮き彫りとなり、改正が行われた。

東日本大震災を機に作られた災害派遣精神医療チーム(DPAT)の初出動事例。

気象

広島
2014年8月15日からの大雨によって犠牲者が出た市町村役場位置。気象庁 平成26年度災害時自然現象報告書より。

先行降雨と線状降水帯

平成26年8月豪雨」も参照

広島市の気候区分は瀬戸内海式気候であり、例年8月は降水量が少ない特徴がある。ただ2014年は中国地方を含め、西日本・北日本の広い範囲で月平均降水量が平年の2倍を超える多雨となっていた。これは7月から8月にかけて台風12号台風11号によるもの、台風通過後から太平洋高気圧の再発達と中国東部沿岸部の気圧の谷の発達によって停滞前線(秋雨前線)が形成されたことによるもので、8月16日・17日には秋雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだことにより京都府福知山市・兵庫県北部などで集中豪雨が発生した。広島での災害はこれらより少し後のことになる。

広島で災害が発生した当時の産経新聞では県防災担当者の談話として、土砂災害発生地に最も近いアメダス三入観測所で災害発生直前にあたる8月19日までの19日間(先行降雨)で264.4ミリを記録し平年を100ミリ以上上回っており、数週に亘る雨によって地盤の緩みが進行していた、と報道している。実際2014年8月三入における月間日照時間65.8時間は三入の8月観測史上で最小であり、のちの土砂災害現場調査でパイプフローの痕跡が多数発見されたことから1ヶ月以上の降雨によって地山に大量の地下水が存在していたと考えられている。ただし台風による降雨を除外すると8月7日・11日・12日・13日・18日の5日は降水量0.5ミリ以下であり、17日から19日までの74時間降雨で37.0ミリと、洪水災害の原因となる先行降雨としては少なかった。

災害発生時の8月19日夜から20日朝、北海道付近から対馬海峡付近にかけて南西の方向に秋雨前線が延び、前線は日本海海上にあってその南に中国地方が位置し、前線に向かって日本の南海上から暖かく湿った空気が流れ込む状況にあった。このとき広島市付近では、上空の寒冷渦の影響などで大気が不安定であるとともに、下層(地表付近)では豊後水道を通って南から暖かく湿った空気が流入する一方、上空1,500メートル(850hPa)付近や3,000メートル(700hPa)付近では強い南西の風となっていた。下層の南風は、広島市の西方にあたる広島・山口県境付近の山地にぶつかって地形性の上昇気流を起こし、積乱雲を発生させる。これに上空の南西風がぶつかって積乱雲を強化しつつ、風下である北東の方向に押し流した。これにより、積乱雲が連続的に発生する「バックビルディング現象」が起きた。

←土砂災害発生地付近
広島・山口・島根県アメダス観測所のうち、20日02時台の1時間降水量が10mm以上観測された点のみを示す。観測値は気象庁/過去の気象データ検索より。

バックビルディングによる積乱雲列(線状降水帯)は南西に源を発して北東方向に延びる形状であり、19日から20日の間に少なくとも4本の積乱雲列が約10kmから40km離れた状態で発生し、発達さらに隣り合う積乱雲列が合体しながら広島市を通過した。土砂災害が発生する原因となった積乱雲列は短軸幅10から15km・長軸幅は最大100kmに一体化している。

なおバックビルディング形成された線状降水帯による豪雨は平成24年7月九州北部豪雨平成25年7月28日の島根県と山口県の大雨など比較的よく見られる事例である。ただこうした線状降水帯の予測は2015年時点の気象予報技術でも困難であった。

当日の降水量

災害日の降雨は、前半が19日19時頃-24時頃、後半が20日0時以降、と2つの事象に分けられる。

アメダス観測点19日20日の1時間降水量(mm)

観測点とソース

  • 岩国 : 山口県岩国市地図 積乱雲発生地点付近
  • 大竹 : 広島県大竹市地図 積乱雲発生地点付近
  • 広島 : 広島県広島市中区地図
  • 三入 : 広島県広島市安佐北区地図 土砂災害発生地点付近
  • 甲田 : 広島県安芸高田市地図
  • 三次 : 広島県三次市地図

気象予報用語では、10mm-20mmがやや強い雨、20mm-30mmが強い雨、30mm-50mmが激しい雨、50mm-80mmが非常に激しい雨、80mm以上が猛烈な雨。

【時
間】
降水量
【岩国】
【大竹】
【広島】
【三入】
【甲田】
三次
12 00000 00000 | 0.0 | 00000 00000 | 0.0 | 00000 00000 | - | 00000 00000 | 0.0 | 00000 00000 | 0.0 | 00000 00000 | 0.0
13  | 0.0 |  | 0.0 |  | - |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
14  | 0.0 |  | 0.0 |  | - |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
15  | 0.0 |  | 0.0 |  | - |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
16  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
17  | 0.0 | 
 | 0.5 |  | 0.0 |  | 0.5 |  | 0.0 |  | 0.0
18
 | 3.5 | 
 | 4.5 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
19  | 0.0 | 
 | 2.0 | 
 | 2.0 | 
 | 0.5 |  | 0.0 |  | 0.0
20
 | 0.5 | 
 | 4.0 |  | - | 
 | 1.5 |  | 0.0 |  | 0.0
21
 | 1.5 | 
 | 4.0 | 
 | 8.5 | 
 | 15.0 | 
 | 0.5 |  | 0.0
22
 | 8.5 | 
 | 19.5 | 
 | 41.5 | 
 | 3.5 | 
 | 2.5 | 
 | 1.0
23  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 13.0 | 
 | 8.0 | 
 | 4.5 | 
 | 1.0
24
 | 0.5 | 
 | 1.0 | 
 | 2.5 | 
 | 4.0 | 
 | 0.5 | 
 | 1.5
01  | 0.0 | 
 | 0.5 | 
 | 0.5 | 
 | 2.0 |  | 0.0 | 
 | 0.5
02
 | 12.0 | 
 | 10.0 |  | 0.0 | 
 | 28.0 |  | 0.0 | 
 | 1.0
03
 | 2.0 | 
 | 0.5 | 
 | 9.5 | 
 | 80.0 | 
 | 12.5 | 
 | 5.5
04  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 1.0 | 
 | 101.0 | 
 | 18.0 | 
 | 6.5
05  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 12.5 | 
 | 14.0 | 
 | 2.0
06  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 3.5 | 
 | 3.5
07  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
08  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0
09  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 0.5
10  | 0.0 |  | 0.0 |  | - |  | 0.0 | 
 | 0.5 |  | 0.0
11  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 |  | 0.0 | 
 | 3.0 |  | 0.0

前半は大竹市・廿日市市など広島市南西側の沿岸部で降り始め、線状降水帯の発達に伴い徐々に広島市内へと続いていった。この時点での1時間降水量は、廿日市市役所46ミリ(19:20-20:20)広島地方気象台45.5ミリ(21:20-22:20)と、どの地点でも50ミリを超えなかった。広島市中心部では19時30分頃から雷が鳴り始め、20時頃より雨が強くなり、20時から22時にかけて広島市内の約9,400軒が停電、平和大通りなどでは膝下まで道路が冠水(内水氾濫)、広島高速4号線上り線で中広出入口が冠水したため通行止(23時解除)、と市中心では様々な被害が出ていた。この時点でのちの土砂災害地ではそこまでの降雨はなく、20日0時ごろには市中心部から安佐南区・安佐北区まで降雨は確認されなかった。

後半は新たな線状降水帯が東進しながら急速に発達・合体したことによるもので、20日1時から4時に安佐南区・安佐北区を中心とした局地的領域に停滞し時間の経過ともに猛烈な雨が降った。20日1時30分から4時30分までの3時間降水量は、安佐北区役所・安佐北区上原・安佐北区三入東・安佐北区三入の4地点で200ミリを超え、150ミリを超えたのはその4地点を含めて約8km×約15kmのごく狭い範囲に集中した。

降雨記録(mm)
【観測地点】
【累積降水量】
最大降水量
【所在地】
【名称】
【1時間あたり】
観測時刻
安芸高田市 | 美土里(地図) | 089.0 | 047.5 | 20日02時18分
安佐北区 | 大林(地図) | 237.0 | 096.0 | 20日04時00分
三入 | 256.5 | 101.0
三入東 | 284.0 | 121.0
安佐北区役所(地図) | 264.0 | 102.0
上原(地図) | 287.0 | 115.0
安佐南区 | 高瀬(地図) | 215.0 | 087.0 | 20日03時00分
中区 | 広島 | 078.5 | 046.5 | 19日22時14分

三入の1976年-2013年のデータを元に年超過確率を計算すると1時間降水量・3時間降水量ともに再現年数は500年を越え、同様に高瀬の1975年-2013年データでも400年から500年を超える。毎日新聞では、広島地方気象台はこれほどの降水量は想定できなかったと答えた、と報道している。この20日未明から朝方の記録的集中豪雨が土砂災害を引き起こした。

地理

被災地概況

被災地

局所的豪雨の影響で、災害範囲は安佐南区と安佐北区の一部に集中した。

当地は太田川中流域と下流域の境目付近に位置し、その支流である根谷川・三篠川との合流地点付近でもある。太田川を挟んで南側が安佐南区八木・緑井地区、北側が安佐北区可部・三入・桐原・大林地区になる。3つの川の合流点であったことから、また広島城下から八木・緑井内の雲石街道(可部街道)を通って、そして可部で出雲・石見街道と分岐することから、古くから可部を中心として河川および陸上交通の要所として発達した。現在では国道54号・JR可部線(および芸備線)が市中心部から県北部への交通網として発達している。更に、市内の主要浄水場の一つ緑井浄水場中国電力太田川水力発電所、広島県災害拠点病院の一つ広島市立安佐市民病院と、生活に直結する施設があるところでもある。

当地は双方とも大部分が市街化区域に指定されている。1970年代から大規模な宅地開発が進み、市中心部へのアクセスのよさから人口は増えていった。安佐南区八木・緑井は2005年-2014年統計データによると、人口増加率は6.2%増、高齢化率は18.7%。新興住宅地として発達していた地区であり、阿武山・権現山の扇状地に住宅街が形成された。一方、安佐北区可部・三入・桐原・大林は2005年-2014年統計データによると、人口増加率4.0%減、高齢化率30.9%。南側と同様に宅地開発されてきた地区であるが自然や農地が多く残る地区である。

土砂災害はそこから更に南にも発生している。中でも安佐南区山本は大正15年9月広島豪雨災害を始めとして昭和初期まで災害が頻発しており、そこから対策が比較的進んだため近年大きな災害は発生していなかった。

1999年6.29災害・2014年8.20災害の比較

【-】
6.29災害 8.20災害
主な被災地  | 
1日最多雨量
(mm) 271.0
県戸坂 | 287.0
県上原
時間最多雨量
(mm) 81.0
公団八幡川橋 | 121.0
県三入東
がけ崩れ
(箇所) 186 | 59
土石流
(箇所) 139 | 107
死者/行方不明者
(人) 32 | 74

これらの地区は全て、1999年広島市で記録的な被害を出した土砂災害ではほぼ被害に遭わなかった。ただ1999年での主要な災害地は西側に隣接した地区であった。2014年災害後に市が行った安佐南区・安佐北区被災地住民アンケートでは、大雨・洪水に対して自分の居住地が危険・やや危険と認識していた人は48.2%(732人中)、がけ崩れ・土石流に対しては48.1%(717人中)と、半分以下の認識であった。がけ崩れ・土石流に対しての危険認識は地元紙中国新聞による調査では更に低く32%(50人中)だった。ただし住民の危機意識問題は情報提供不足という#行政側の不備も関係する。

八木地区

災害日。写真中央の県営住宅の左側が八木と緑井の境になる。
1971年(昭和56年)。この時点で山際の土地開発はほぼ現状と同じ。
1962年(昭和47年)。山際の宅地開発が進められており、県営緑丘住宅は完成、阿武の里団地の造成が終わっている。
1947年(昭和22年)米軍作成。八木用水を境に宅地と農地で別れている。
1925年(大正14年)旧陸地測量部が作成した地形図に記されている当時の地名を示す。黄色は2014年土砂災害の主な発生地点を示す。
ここでは特に顕著な被害が出た安佐南区八木地区について記載する。

この地区には貫くように八木用水が流れる。そばに太田川がありながら常時は土地より低い水位であり取水に困難であったため江戸時代に農業用水路として整備されたもので、阿武山北側にある取水口から途中で中国電力太田川水力発電所の放水を引き入れ、八木・緑井から太田川放水路と旧太田川の分流地点である長束まで流れる約16kmの用水路である。地区の都市化が進むにつれ農業用水から排水路へと重要度が移っていった。この八木用水から山側に向かって農地や古くからの住居が建ち、その更に山際が新興住宅地として開発が進み谷筋に沿って山嶺直下にまで建ち並んでいた。

この地区の過去の災害といえば、3つの川が合流する地点であることから河川災害であった。当時の八木学区自主防災会連合会会長は、2000年代中頃に太田川の堤防が決壊する寸前までの降雨を経験しており日頃から水害に対して注意を払っていた、と証言している。一方、土砂災害としては1980年に発行された佐東町史に「阿武山南部に位置する八木三丁目周辺は複数の扇状地で構成される『複合扇状地』で被災地は複数回の土石流で形成された扇状地であった」と明記してあるように、古くからこの地では起こっていた。ただしこれら地誌には頻発した水害(河川災害)の詳細は書かれているが土砂災害の詳細は触れられていない。近年で言えば、例えば1999年土砂災害ではこの地区では被害はなかった。

中国新聞報道によると、

また(少なくとも2015年までの)都市計画法では、市街化区域内の1,000m未満の土地は行政許可はいらず調整池などの規制はなく手続きが簡単である、といういわゆる「ミニ開発」という抜け道が許容されていた。八木や緑井の山側はまさ土(下記参照)という宅地造成しやすい土壌であったこともあり、ミニ開発が進んだ側面もある。

災害伝承と報道

八木には「蛇王池物語」というものがある。関ヶ原の戦いの後に廃城となるまで、今の安佐南区には安芸香川氏八木城があった。城主香川光景のころ香川勝雄なる剛勇の士が、阿武山の中迫という場所にいた大蛇を退治すると、その大蛇の首が転がり落ち血が川のように流れ、ついに沼が出来て首が沈んでいった、という言い伝えである。八木三丁目には蛇王池の碑が建立されている。地元小学校のホームページなどでも紹介されているが、災害以前まではあくまで伝説として紹介され災害との関連性には触れられていなかった。

これについて災害発生当時以下のように報道された。

なお広島市郷土資料館安佐南区役所は、報道に対し「蛇落地」・「悪谷」が存在したことを示す資料は無いと回答している。「上樂地」の地名は1897年(明治30年)頃/1925年(大正14年)/1977年(昭和52年)の旧陸地測量部・現国土地理院地形図で確認出来る。今回最大の土砂災害が起きた八木三丁目県営緑丘住宅周辺は上楽地ではなく「小原」と呼ばれていた。

これらの報道があった後である9月22日から10月3日に行われた市による安佐南区・安佐北区被災地住民アンケートで、祖先の言い伝えとして蛇に関することを回答したものもいる。

また緑井八丁目上組は昔「植竹」と呼ばれており、これも土砂災害に関連する地名であると指摘されている。植竹の地名は1925年(大正14年)旧陸地測量部地形図で確認できる。ここには「1804年夏に緑井村植竹山の土砂崩れで八木用水が埋もれた」という記録が残っており、緑井八丁目が少し台地状になっているのは土石流の堆積によって形成されたと考えられている。

地山と流出土砂

2014年災害の土砂災害数
(箇所)
【-】
【土石流】
【がけ崩れ】

安佐北区 39 | 20 | 59
安佐南区 67 | 36 | 103
その他の区 1 | 3 | 4
合計 107 | 59 | 166

広島県は県域の70%を山地が占める。地形を大別すると、中国山地を北域として高位である中国脊梁面ー中位の吉備高原面ー下位の瀬戸内面の3つからなる。広島湾周辺を中心とした県西部に見られる傾向として、南西から北東方向つまり右肩あがりで山列・断層谷が発達し、3つの地形が階段状に形成され、平野部が少ない、という特徴がある。1999年災害・2014年災害の被災地が右肩上がりなのはこうした地形的特徴に起因する。

また広島県は土砂災害危険箇所数が約32,000箇所と全国で飛び抜けて多い県である事実がある。その理由は平野部が少ないため山裾ギリギリまで宅地開発してきた点が挙げられる。もう一つの理由として、県土の48%を「広島型花崗岩」が占め、瀬戸内海式気候であることから花崗岩の風化が進行しやすいため、その風化残留土であり土砂災害に弱い「まさ土」が生まれやすい環境にある点が挙げられる。

可部東五丁目。花崗岩起源のまさ土の流出。
八木八丁目国道54号太田川橋の阿武山側。付加体堆積岩の流出。

今回の被災地一帯も白亜紀の広島型花崗岩が大部分を占める。この花崗岩の上部に、太田川中流域-阿武山-三篠川流域と北西から南東方向に沿ってジュラ紀付加体(変成岩ホルンフェルスチャートなどの堆積岩)、可部の白木山周辺から北東に向かって白亜紀の高田流紋岩が分布、さらに右肩上がりに断層帯が存在しており、比較的複雑な地形である。この土砂災害の大部分が広島型花崗岩起源のまさ土によるものであるため広島特有の問題と報道されたが、それ以外である付加体斜面での規模の大きなものや高田流紋岩のものも発生している。

この土砂災害では土石流が多かった。非常に強い雨が降ったため地中に浸透する前に地表を流れ渓流に流れ込んで土石流が発生した、特に規模の大きなものは先行降雨によって地山に地下水が飽和していたところへ非常に強い雨が降ったため被圧された地下水が土砂や岩を押し出した表層崩壊、と考えられている。

行政側の不備

砂防

1999年広島での土砂災害のときに大きな問題となったのが、新興住宅地での土石流被害であった。これは、広島市自体が平野部が狭いためニュータウンを整備する際に山裾ギリギリまで宅地造成していたにも関わらず、砂防ダムなど砂防施設が整備されていなかったことによるものである。これを機に国土交通省直轄による砂防施設整備が始まり、国交省および県によって砂防施設の整備が行われ、2000年以降に開発されたニュータウンでは砂防施設を予め設置した上で宅造が行われるケースが増えていた。この災害当時でも砂防施設が整備されていた場所では人的・物的共に被害を抑えられている。

ただこの災害では砂防施設が設置されていないところで大きな被害が発生した。特に多数の被害を出した安佐南区八木では国が砂防施設整備を進めていたが、当地が多数の古墳や遺跡がある地点であることに加えて国の予算の問題で工事がなかなか進まず、当時2基が工事中であったものの完成したものは1基も存在していなかった。

また緑井では斜面で保安林指定がされていたが八木では大半の斜面で指定されていなかったため、適切な森林管理や(県農林水産局管轄の)治山ダムなどの地山保全施設整備が行われていなかったと指摘されている。当地には元々アカマツが植えられていたが松くい虫で枯れたため、災害発生当時はマツより根張りによる土砂止効果が薄いシラカシなど常緑広葉樹が植えられていた。ただし、別の研究では樹木の根系補強による土砂止機能自体は効果が薄いという結果があること、なにより植生は他の土砂災害発生事例と比べて特別悪い状況ではなかったという意見もある。

この被災地一帯には土石流危険渓流は約190箇所あった。うち、砂防ダム・治山ダムが設置されていた渓流は34箇所ほどで全体の2割程度しか整備されていなかったことになる。

警戒区域指定

土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」も参照

1999年広島での土砂災害を機に、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律いわゆる「土砂災害防止法」が成立する。これ以降2000年代に入り行政は「土砂災害ハザードマップ」を作成、インターネットが身近なものになり始めた当時の試みとして「広島県防災情報システム」をネット上に公開し県内のハザードマップすべて閲覧できるサービスを始めた。また同時に「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」を指定し、危険度の高い地域は居住および建築制限を設けていた。ここで留意すべきこととして、土砂災害危険箇所の指定には法的規制はないが、警戒区域の指定には土砂災害防止法による法的手続きを踏む必要がある、という点がある。

当時(改正前)の土砂災害防止法の下での警戒区域指定にはいくつか問題点があった。まず基本指針に基づき5年ごとに警戒区域指定の前段階として基礎調査を行うと定められていたが、その箇所は私有地が多いため土地所有者との交渉などに時間がかかり自治体側の調査費用の問題もあって、基礎調査の段階からなかなか進まなかった。また法律的には指定に住民合意は必要なかったが住民の理解を得るために自治体判断で住民への説明が行われていたものの、指定箇所の改修に伴う住民側の金銭的負担や指定されたことで地価が下がるとして反対する住民もいるため、その交渉にも時間がかかっていた。

こうした状況から災害発生時点で、広島県内では4割弱しか警戒区域の指定がされていなかった。今回の災害時点で被害が起きた地区の内、警戒区域の指定が行われていたのは可部のみであった。最も大きな被災地となった安佐南区八木・緑井では当時土砂災害危険箇所が図示されたハザードマップは公開されていたが、警戒区域の基礎調査を終えて県による住民説明会を準備していたところであった。

避難勧告

この災害では、土砂災害の発生が20日03時過ぎから04時頃にかけて起こったにもかかわらず、最初の ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出典:wikipedia
2018/08/12 21:38

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