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日本国憲法第9条とは?

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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

日本国憲法 第9条(にほんこく/にっぽんこくけんぽう だい9じょう)は、資本主義憲法(ブルジョア憲法)の一種である日本国憲法の条文の一つ。憲法前文とともに「三大原則の1つ」である平和主義を規定しており、この条文だけで憲法の第2章「戦争の放棄」を構成する。この条文は、憲法第9条第1項の内容である「戦争の放棄」、憲法第9条第2項前段の内容である「戦力の不保持」、憲法第9条第2項後段の内容である「交戦権の否認」の3つの規範的要素から構成されている。日本国憲法を「平和憲法」と呼ぶのは、憲法前文の記述およびこの第9条の存在に由来している。

目次

  • 1 概要
    • 1.1 条文
    • 1.2 資本主義・資本主義憲法との関連
  • 2 立法の経緯
    • 2.1 本条の淵源
      • 2.1.1 発案者をめぐる議論
      • 2.1.2 ハーバート・ジョージ・ウェルズと日本国憲法
    • 2.2 不戦条約
    • 2.3 ポツダム宣言
    • 2.4 憲法改正要綱とマッカーサー・ノートとGHQ原案
    • 2.5 3月2日案と3月5日案
    • 2.6 憲法改正草案要綱
    • 2.7 憲法改正草案
    • 2.8 衆議院での審議と芦田修正
    • 2.9 貴族院での審議と文民条項
    • 2.10 審議過程での第9条への反対
    • 2.11 制定過程を巡る議論
    • 2.12 朝鮮戦争とアメリカの改憲・派兵要求
  • 3 第9条の解釈上の問題
    • 3.1 第9条の法的性格
    • 3.2 「日本国民」の解釈
    • 3.3 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」の解釈
    • 3.4 「国権の発動たる戦争」等の定義
      • 3.4.1 「国権の発動たる戦争」
      • 3.4.2 「武力の行使」
      • 3.4.3 「武力による威嚇」
    • 3.5 「国際紛争を解決する手段としては」の解釈
    • 3.6 「前項の目的を達するため」の解釈
    • 3.7 学説の分布
      • 3.7.1 峻別不能説(一項全面放棄説)
      • 3.7.2 遂行不能説(二項全面放棄説)
      • 3.7.3 限定放棄説(狭義の限定放棄説・侵略戦争放棄説・自衛戦争許容説・戦力限定不保持説)
    • 3.8 自衛権の問題
      • 3.8.1 自衛権の意義
      • 3.8.2 自衛権の行使
      • 3.8.3 憲法9条と自衛権
      • 3.8.4 集団的自衛権
    • 3.9 「戦力」の解釈
      • 3.9.1 「戦力」の内容
      • 3.9.2 「戦力」の判断基準
      • 3.9.3 不正規兵
      • 3.9.4 その他
    • 3.10 「交戦権」の解釈
      • 3.10.1 「交戦権」の内容
      • 3.10.2 峻別不能説・遂行不能説・限定放棄説との関係
      • 3.10.3 自衛力・防衛力との関係
        • 3.10.3.1 自衛行動の地理的範囲
        • 3.10.3.2 保有しうる兵器の範囲
        • 3.10.3.3 戦時国際法及び国際人道法の適用
    • 3.11 憲法改正権との関係
  • 4 第9条に関する有権解釈
    • 4.1 政府における解釈
      • 4.1.1 「戦力」についての政府解釈の変遷
      • 4.1.2 第9条に関する政府見解
        • 4.1.2.1 自衛権とその発動
        • 4.1.2.2 交戦権と自衛行動
        • 4.1.2.3 自衛力の法的限界
        • 4.1.2.4 自衛官と国際法上の地位
    • 4.2 判例における解釈
      • 4.2.1 時間的適用範囲
      • 4.2.2 警察予備隊違憲訴訟
      • 4.2.3 砂川事件
      • 4.2.4 恵庭事件
      • 4.2.5 長沼ナイキ事件
      • 4.2.6 百里基地訴訟
      • 4.2.7 沖縄代理署名訴訟
  • 5 第9条をめぐる歴史
  • 6 比較憲法的考察
  • 7 注釈
  • 8 出典
  • 9 参考文献
  • 10 関連項目
  • 11 外部リンク

概要

日本国憲法第2章「戦争の放棄」の条文。条文は一つだけで、戦争放棄・戦力の不保持・交戦権の否認が規定されている。第9条により「非戦憲法」、「戦争放棄条項」と呼ばれる。

自衛隊の発足で、その位置づけと第9条の解釈が問題となっている。自衛隊について「学説の多くは違憲論を支持している」とされる。一方で政府は、国家は固有の権利として正当防衛権(自衛権)を持つため合憲であるとする立場を取っている。

条文

第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

資本主義・資本主義憲法との関連

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』によると資本主義憲法(ブルジョア憲法)の中心的原理は、国民主権権力分立、および、自由権を中心とする人権(特に財産権等の経済的自由権)の保障である。都市工学者の井出智明によれば、日本の現代的民主化は、敗戦によって資本主義憲法である日本国憲法が半ば強制的に制定されることにより、ようやく実現した。

バード大学教授イアン・ブルマおよびヘブライ大学名誉教授アヴィシャイ・マルガリートによると、自由民主主義商業国に最適な政治制度とされている。このシステムでは競争し合い、利益の相違は交渉・妥協を通じて解決することが前提となっている(当然、そのような制度は「英雄的」ではなく、反民主主義からは「卑劣」「軟弱」「凡庸」「腐敗」等と見なされてきた)。トクヴィルの見解によると、民主主義下の市民(ゾンバルトの言う「ブルジョア」や「商人」)は、生命をかけて戦闘することを簡単には受容しない。

自由民主主義や資本主義は、「英雄的」信条とは異なり、自由思想(リベラル思想)に近い。観点によっては、自由社会(リベラル社会)は「凡庸さ」を奨励さえしている。国家社会主義(ナチズム)に属するアルトゥール・メラー・ファン・デン・ブルックは、リベラル社会では自由が与えられ、「際立った人生よりもありふれた日常」に重きが置かれると見ており、その点はトクヴィルにも類似している。すなわち自由(リベラル)な資本主義社会では、大多数の人々は「普通の生活」を送る。英雄主義や結束主義(ファシズム)等は、これに対立する。

資本主義革命(ブルジョア革命)」、「人権」、「経済的自由権」、「資本主義憲法(ブルジョア憲法)」、および「平和主義」も参照
その他

1928年(昭和3年)に締結された戦争放棄二関スル条約、いわゆるパリ不戦条約の第1条と、日本国憲法第9条第1項は文言が類似しているが、これをどの様に捉えるかは、本条の解釈において問題となる。この条文の日本国政府見解に拠れば、自衛隊は憲法第9条第2項にいう「戦力」には当たらない組織とされている。

立法の経緯

本条の淵源

本条の淵源については、立法経緯が複雑であることもあって様々な議論がある。憲法9条の発案において、その背景にあった、主な動機は、「連合国が参加する極東委員会の中の、中華民国オーストラリアフィリピンソビエト社会主義共和国連邦などの国家や、アメリカ国内世論からの『天皇制の保持』に対する批判を逸らす為であった。」という見解で、日本人もアメリカ人の学者も一致する傾向がある、とされる。

発案者をめぐる議論

このような条文を、憲法に盛り込む事が、一体誰の発案であったのかが議論になることがある。

マッカーサーは1951年5月5日のアメリカ議会上院軍事外交合同委員会での証言、1962年(昭和37年)12月10日の内閣憲法調査会の高柳賢三会長への書簡、1964年(昭和39年)の自身の回想録の中で本条は幣原喜重郎の発案によるものであると語っている。

ハーバート・ジョージ・ウェルズと日本国憲法

タイムマシン』を発表したSF小説家であり、思想家でもあるハーバート・ジョージ・ウェルズ(H.G.ウェルズ)は、日本国憲法の原案作成に大きな影響を与えたとされる。特に本条の平和主義と戦力の不保持は、ウェルズの人権思想が色濃く反映されている。しかし、ウェルズの原案から日本国憲法の制定までに様々な改変が行われたため、現在における本条の改正議論が行われる一つの原因となっている。

また、この原案を世界全ての国に適用して初めて戦争放棄と戦力の不保持が出来るように記されていることが根幹にある。そして、ウェルズも世界全ての国に適用しようと考えたが、結果として、日本のみにしか実現しなかったことで、本条の解釈に無理が生じたといわれている。

不戦条約

ハーグ平和会議の開催(1899年(明治32年)、1907年(明治40年))など19世紀末から、国際法上において侵略戦争を実定法により規制し平和を確保するための努力が進められ、国際連盟規約(1919年(大正8年))、ジュネーヴ議定書(1924年(大正13年))、不戦条約(パリ不戦条約、戰爭抛棄に關する條約)などが締結された。このうち不戦条約は第一次世界大戦後の1928年(昭和3年)に多国間で締結された国際条約である。同条約では国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、紛争は平和的手段により解決することなどを規定した。

;Kellogg-Briand Treaty
ARTICLE I
The High Contracting Parties solemnly declare in the names of their respective peoples that they condemn recourse to war for the solution of international controversies, and renounce it, as an instrument of national policy in their relations with one another.
ARTICLE II
The High Contracting Parties agree that the settlement or solution of all disputes or conflicts of whatever nature or of whatever origin they may be, which may arise among them, shall never be sought except by pacific means.
— Kellogg-Briand Treaty
;不戦条約
第一條
締約國ハ國際紛爭解決ノ爲戰爭ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互關係ニ於テ國家ノ政策ノ手段トシテノ戰爭ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ嚴肅ニ宣言ス
第二條
締約國ハ相互間ニ起ルコトアルヘキ一切ノ紛爭又ハ紛議ハ其ノ性質又ハ起因ノ如何ヲ問ハス平和的手段ニ依ルノ外之カ處理又ハ解決ヲ求メサルコトヲ約ス
— 戰爭抛棄ニ關スル條約

日本国憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段としては」の文言の解釈については、不戦条約にある「國際紛爭解決ノ爲」の文言との関係をどうみるべきかという観点から学説は分かれており、憲法第9条全体の解釈として一切の戦争を放棄しているとするのであれば「国際紛争を解決する手段としては」の文言についても不戦条約等の国際法上の用例に拘泥すべきでないとする説と憲法9条は平和という国際関係と密接な関連性を有するもので「国際紛争を解決する手段としては」の文言についても不戦条約等の国際法上の用例を尊重すべきであるとする説が対立している。

ポツダム宣言

日本国憲法第9条の立法に至る背景には、大西洋憲章(1941年)、ポツダム宣言(1945年)、SWNCC228文書(1946年)などが挙げられる。このうち1945年(昭和20年)7月26日に発表されたポツダム宣言では、日本軍の武装解除とともに、再軍備の防止を示唆する条項が盛り込まれた。

;Potsdam Declaration
(7) Until such a new order is established and until there is convincing proof that Japan's war-making power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.
(9) The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.
(11) Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those which would enable her to re-arm for war. To this end, access to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese, participation in world trade relations shall be permitted.
— Potsdam Declaration
;ポツダム宣言
第七條
右ノ如キ新秩序ガ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力ガ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ル迄ハ聯合国ノ指定スベキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スル為占領セラルベシ
第九條
日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ
第十一條
日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルガ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルベシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルガ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラズ右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルベシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルベシ
— ポツダム宣言

憲法改正要綱とマッカーサー・ノートとGHQ原案

終戦後、憲法改正に着手した日本政府は大日本帝国憲法の一部条項を修正した、陸海軍をまとめて「軍」とする、軍事行動には議会の賛成を必要とする、という規定のみを盛り込んで済ませるつもりであった。

1946年(昭和21年)2月8日に憲法問題調査委員会(松本烝治委員長)がGHQに提出した「憲法改正要綱」(松本案)では次の条文となっている。

;憲法改正要綱
第十一条中ニ「陸海軍」トアルヲ「軍」ト改メ且第十二条ノ規定ヲ改メ軍ノ編制及常備兵額ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムルモノトスルコト(要綱二十参照)
第十三条ノ規定ヲ改メ戦ヲ宣シ和ヲ講シ又ハ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約若ハ国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ヲ締結スルニハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要スルモノトスルコト但シ内外ノ情形ニ因リ帝国議会ノ召集ヲ待ツコト能ハサル緊急ノ必要アルトキハ帝国議会常置委員ノ諮詢ヲ経ルヲ以テ足ルモノトシ此ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ報告シ其ノ承諾ヲ求ムヘキモノトスルコト

これに対して、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)では戦争と軍備の放棄の継続が画策されていた。その意思は、憲法草案を起草するに際して守るべき三原則として、最高司令官ダグラス・マッカーサーがホイットニー民政局長(憲法草案起草の責任者)に示した「マッカーサー・ノート」に表れている。その三原則のうちの第二原則は以下の通り。

;マッカーサー三原則(「マッカーサーノート」)第二原則

(原文)

War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection. No Japanese Army, Navy, or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.

(日本語訳)

国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持するための手段としての戦争をも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸海空軍を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が日本軍に与えられることもない。

この指令を受けて作成された「GHQ原案」(マッカーサー草案)には次の条文が含まれていた。なお、この段階では現行の9条に相当する条文は8条に置かれていた。

;GHQ原案

(原文)

Chapter II Renunciation of War
Article VIII War as a sovereign right of the nation is abolished. The threat or use of force is forever renounced as a means for settling disputes with any other nation.
No army, navy, air force, or other war potential will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon the State.

(外務省仮訳)

第二章 戦争ノ廃棄
第八条 国民ノ一主権トシテノ戦争ハ之ヲ廃止ス他ノ国民トノ紛争解決ノ手段トシテノ武力ノ威嚇又ハ使用ハ永久ニ之ヲ廃棄ス
陸軍、海軍、空軍又ハ其ノ他ノ戦力ハ決シテ許諾セラルルコト無カルヘク又交戦状態ノ権利ハ決シテ国家ニ授与セラルルコト無カルヘシ

次のような点でGHQ原案はマッカーサー・ノートとは異なる。

  1. マッカーサー・ノート第二原則第2文「even for preserving its own security(自己の安全を保持するための手段としてさえも)」に該当する部分が削除された。
    これはすべての国は自国を守る固有の権利を有しており、自衛権の存在・行使を明文で否定することは不適当であるとGHQ原案の作成にあたった運営委員会の法律家らが考えたためとされる。マッカーサーも後年の回想録の中で憲法9条は自衛権まで放棄したものではないと述べている。
  2. 「The threat or use of force(武力による威嚇又は使用)」の文言が加えられた。
    これは前年に国際連合原加盟国によって調印されていた国連憲章2条4を受けたものとされている。
  3. 「forever(永久に)」の文言が加えられた。
  4. マッカーサー・ノート第二原則第3文に該当する部分については修正ののち前文第2項冒頭に回されることとなった。
  5. マッカーサー・ノート第二原則第4文に該当する部分については段落を分けないこととした。
  6. 「other war potential(その他の戦力)」の文言が加えられた。
    これは第一次世界大戦以後の戦争が国家の総力戦となったことを意識したものとされている。
  7. 「any japanese force(日本軍)」から「the state(国)」に文言がそれぞれ変更された。

なお、GHQ案の第一次案では二段落構成から一段落構成に改められていたが、最終案では二段落構成に戻されている。

3月2日案と3月5日案

GHQ原案を受けて日本政府が起草した3月2日案では次の文章となっている。

;3月2日案
第二章 戦争ノ廃止
第九条 戦争ヲ国権ノ発動ト認メ武力ノ威嚇又ハ行使ヲ他国トノ間ノ争議ノ解決ノ具トスルコトハ永久ニ之ヲ廃止ス。
陸海空軍其ノ他ノ戦力ノ保持及国ノ交戦権ハ之ヲ認メズ。

次のような点で3月2日案はGHQ原案とは異なる。

  1. 第1章に条文が追加されたため、第2章の第8条であった本条は繰り下がって第9条となった。
  2. 第1項の第1文と第2文はつなげられ一つの文となった。
  3. 「他国トノ間ノ争議ノ解決ノ具トスルコトハ」の文言が戦争にもかかるように解釈しうることとなった。
  4. 「廃棄」から「廃止」に改められた。
  5. 第2項の最後の部分が「之ヲ認メズ」に改められた。

さらに議論が重ねられ、3月5日案では次の文章となっている。

;3月5日案
第二章 戦争ノ抛棄
第九条 国家ノ主権ニ於テ行フ戦争及武力ノ威嚇又ハ行使ヲ他国トノ間ノ争議ノ解決ノ具トスルコトハ永久ニ之ヲ抛棄ス
陸海空軍其ノ他ノ戦力ノ保持ハ之ヲ許サス。国ノ交戦権ハ之ヲ認メス

次のような点で3月5日案は3月2日案とは異なる。

  1. 「国家ノ主権ニ於テ行フ戦争」という表現に改められた。
  2. 「他国トノ間ノ争議ノ解決ノ具トスルコトハ」の文言について、国家の主権において行う戦争と武力の威嚇・行使とが「及」で結ばれることとなったため、国家の主権において行う戦争にもかかることが明確になった。
  3. 「廃止」から「抛棄」に改められた。
  4. 第2項は「之ヲ許サズ」、「認メズ」と分けて書き改められた。

憲法改正草案要綱

1946年(昭和21年)3月6日に政府案として発表された「憲法改正草案要綱」には次の文章が含まれている。

;憲法改正草案要綱
第二 戦争ノ抛棄
第九 国ノ主権ノ発動トシテ行フ戦争及武力ニ依ル威嚇又ハ武力ノ行使ヲ他国トノ間ノ紛争ノ解決ノ具トスルコトハ永久ニ之ヲ抛棄スルコト
陸海空軍其ノ他ノ戦力ノ保持ハ之ヲ許サズ国ノ交戦権ハ之ヲ認メザルコト

憲法改正草案

1946年(昭和21年)4月17日に政府案として発表され枢密院に諮詢された「憲法改正草案」では次の条文となっている。

;憲法改正草案(政府原案)
第二章 戦争の抛棄
第九条 国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを抛棄する。
第二項 陸海空軍その他の戦力の保持は、許されない。国の交戦権は、認められない。

次のような点で憲法改正草案は要綱とは異なる。

  1. 条文が口語化された。
  2. 「戦争及」を「戦争と」に改めた。
  3. 「具」を「手段」に改めた。
  4. 第2項は二つの文に分離された。
  5. 「之ヲ」の文言を取り除き、第二項について「許されない」、「認められない」とした。
  6. 表題を「戦争の抛棄」とした。

枢密院での審議を受け、政府が若干の修正を行った上で1946年(昭和21年)5月25日に改めて枢密院に諮詢した案では次の条文となっている。

;憲法改正草案(政府修正案)
第二章 戦争の抛棄
第九条 国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを抛棄する。
第二項 陸海空軍その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権は、これを認めない。

衆議院での審議と芦田修正

憲法改正草案の案文は枢密院で可決され、1946年(昭和21年)6月25日に衆議院に上程された。そして、芦田均が委員長を務める衆議院帝国憲法改正案委員小委員会においていわゆる芦田修正が加えられた。

芦田修正は第90回帝国議会衆議院帝国憲法改正小委員会での審議過程において第9条に加えられた修正であり、第1項冒頭に「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」の文言を加えた。これは1946年2月3日にマッカーサーがホイットニー民政局長に示したマッカーサー・ノートにおける「日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる」が復活したもので、憲法前文第2項の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と一連のものであると考えられる。

第2項冒頭に「前項の目的を達するため」の文言を入れた修正を指す。特に第2項冒頭の修正を指して用いられることもある。

第90回帝国議会の衆議院帝国憲法改正小委員会は1946年(昭和21年)7月25日から8月20日にかけて13回にわたって開催された。帝国議会に提出された際の憲法改正案の案文は次のようなものである。

;憲法改正草案
第二章 戦争の抛棄
第九条 国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを抛棄する。
第二項 陸海空軍その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権は、これを認めない。

この案文については、積極的な印象がなく自主性が乏しいとの意見が出されたため、7月29日に芦田委員長は次のような試案を提示した。

;芦田試案
第二章 戦争の抛棄
第九条 日本国民は、正義と秩序とを基調とする国際平和を誠実に希求し、陸海空軍その他の戦力を保持せず。国の交戦権を否認することを声明す。
第二項 前掲の目的を達するため、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを抛棄する。

このうち「声明す」の文言については文語体であり口語体の条文にはふさわしくないとして「宣言する」に改められた。7月30日の小委員会は金森国務大臣が出席して開かれたが、この段階での試案の案文は次のようなものとなっていた。

第九条 日本国民は、正義と秩序とを基調とする国際平和を誠実に希求し、陸海空軍その他の戦力は、これを保持せず。国の交戦権は、これを否認することを宣言する。
第二項 前掲の目的を達する為め、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

この試案では原案(政府案)における第1項と第2項の順序が入れ替えられていたが、犬養健議員から第1項と第2項の順序をもとの原案(政府案)のままに戻し、その冒頭に「日本国民は・・・」の文言を入れてはとの提案がなされた。このほか、語尾の「宣言する」について、言い放つことで自主性が出るとして、「放棄する」に修正された。また、「抛棄」の字句が漢字制限の関係で「放棄」に改められた。 。その結果として次のような法文となった。

;日本国憲法
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

1946年(昭和21年)8月24日、衆議院本会議での委員長報告において芦田均はいわゆる芦田修正について「戦争抛棄、 軍備撤退ヲ決意スルニ至ツタ動機ガ、 専ラ人類ノ和協、 世界平和ノ念願ニ出発スル趣旨ヲ明カニセントシタ」ものであると述べている。その後、この修正について芦田は、自衛戦力を放棄しないための修正であり、このことは小委員会の会議録にも書かれていると発言している。ところが、のちに公開された小委員会の速記録 や『芦田均日記』からは修正の意図がこのような点にあったかは必ずしも実証的には確認できないといわれる。ただし、国際法の専門家である芦田が自衛のための戦力保持の可能性を生じることとなった点について気付いていなかったとは思われないとみる見方もある。このようなこともあって芦田の真意は未だに謎とされている。

芦田の真意の問題は別として、総司令部や極東委員会は芦田修正の結果として「defence force」を保持することが解釈上可能になったと考えられるようになったといわれる。

芦田修正について総司令部からの異議はなかったといわれる。これに対して極東委員会の反応は異なっていた。芦田修正については、自衛(self-defence)を口実とした軍事力(armed forces)保有の可能性があるとした極東委員会の見解が有名であり、この見解の下、芦田修正を受け入れる代わりに、文民統制条項(civilian)を入れるよう、GHQを通して日本国政府に指示し、憲法第66条第2項が設けられることとなった。

貴族院での審議と文民条項

貴族院では本条については修正されずこの案が最終的なものとなったが、本条の芦田修正との関係で貴族院での審議において憲法66条2項に文民条項が挿入されることとなった。

;日本国憲法
第六十六条
第二項 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

当初、このような条項を挿入することについては、軍隊のない日本においては無用であるとの議論もあった。金森国務大臣は「civilian」を「過去において職業軍人の経歴を有しない者」を意味するとの理解のもとに交渉にあたっていたが、新しい訳語をあてるべきと考えられたため、川村竹治委員の提案した「文民」の訳語をあてることとなった。そして、文民条項(日本国憲法第66条第2項)については、1946年(昭和21年)9月に普通選挙制(日本国憲法第15条第3項)とともに貴族院での審議を通して挿入されることとなった。

「文民」の意味については、軍人ではない者を意味するとする説や職業軍人の経歴を持たない者を意味する説などが唱えられている。これらの説に対しては、憲法9条により一切の軍が存在しないのであれば「軍人」というものはありえないので憲法66条第2項の文民条項は説明困難となり、仮に「文民」を職業軍人としての経歴を持たない者を指すとするならば憲法66条第2項の文民条項は経過規定として補則の章に置かれるべき規定だったということになると齟齬を指摘する見解もある。この憲法66条第2項の文民条項の存在については、限定放棄説の立場からその論拠として示されることがあり、百里基地訴訟第一審では憲法9条第2項前段の解釈において「「前項の目的」とは第一項全体の趣旨を受けて侵略戦争と侵略的な武力による威嚇ないしその行使に供しうる一切の戦力の保持を禁止したものと解するのが相当であって、みぎ第一項の「国際平和を誠実に希求」するとの趣旨のみを受けて戦力不保持の動機を示したものと解することは困難である。このような見解のもとにおいてこそ、憲法第六六条第二項の、いわゆる文民条項の合理的存在理由をみいだすことができるのである」と判示している。これに対し全面放棄説の立場からは、この規定の存在意義について、制定時の貴族院の審議では9条との関係では無用のものと考えられ、これを意味の有るものとするためにあえて「文民」の語について「過去に職業軍人であった者」と公定解釈されたものであるという経緯が指摘されている。

なお、文民条項については、その後の実力部隊(自衛隊)の創設によって新たな要素が導入されるに至り、通説では現役自衛官は「文民」ではないとされている(ただし、自衛官であった者については学説により見解が分かれている)。

また、2012年時点で、日本政府は、自衛隊を合憲とする根拠について「『戦力に至らない必要最小限の実力』の保持は合憲」とする解釈をおこなっており、芦田修正は政府の合憲根拠とは無関係であり、芦田修正が無くとも合憲であるとしている。

審議過程での第9条への反対

1946年(昭和21年)の憲法改正審議で、日本共産党野坂参三衆議院議員は自衛戦争侵略戦争を分けた上で、「自衛権を放棄すれば民族の独立を危くする」と第9条に反対し、結局、共産党は議決にも賛成しなかった。

また、南原繁貴族院議員も共産党と同様の「国家自衛権の正統性」と、 将来、国連参加の際に「国際貢献」で問題が生ずるとの危惧感を表明している。それは「互に血と汗の犠牲を払うこと」なしで「世界恒久平和の確立」をする国際連合に参加できるのか?という論旨であった。これらの危惧感は後の東西冷戦終結後、現実問題として日本に生じ、結果的にPKOなどの派遣を憲法の無理な解釈で乗り切ろうとする事態が生じている。(この憲法の推進を行ったダグラス・マッカーサー自身も日本再独立後にこの事項を作った事を戦後の米軍の負担増という点から後悔し、旧軍を最低限度の人数と装備で存続させるべきであったと一生の悔いにしていたとの逸話がある)

制定過程を巡る議論

法的有効性について次のような議論がある。

朝鮮戦争とアメリカの改憲・派兵要求

朝鮮戦争勃発によってアメリカから、日本を朝鮮戦争に派兵させるため改憲要求が出された。アメリカの要求に対抗するため総理大臣吉田茂は社会党に再軍備反対運動をするよう要請した。

第9条の解釈上の問題

憲法9条の規定については、憲法9条の法的性格、第1項の「国際紛争を解決する手段としては」という文言の意味、第2項前段の「戦力」の定義、同じく第2項前段の「前項の目的を達するため」という文言の意味、第2項後段「交戦権」の定義などについて議論がある。この部分については、日本国憲法#平和主義(戦争放棄)も参照。

第9条の法的性格

憲法9条の法的性格については、次のような説がある。

憲法規範には為政者を直接的に拘束する現実的規範と為政者の目標を示す理想的規範とがあり本条は後者にあたるとする。
憲法規範の規範的性格は各条項の間で同じではないとし、憲法規範には裁判規範と政治規範とがあり、本条は高度の政治性を有することなどから裁判規範性が極めて希薄な政治規範であるとする。
ただし、本説にいう「憲法の変遷」は、通常の憲法学における「憲法の変遷」の概念とは異なるものであるとの指摘がある。

「日本国民」の解釈

憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文で始まる。この「日本国民」とは個々の国民ではなく全体としての日本国民もしくは一体としての日本国民を指すとされる。本条の趣旨からみて個々の国民を指すとみるべきではなく、通例においても個々の国民を指す場合には「すべて国民は」(例として日本国憲法第25条日本国憲法第26条)あるいは「国民は」(例として日本国憲法第30条)の文言が用いられることが根拠とされる。そして、「日本国民」というこの文言は日本国と同義であるとされる。なお、この点については、日本国民と一体化した日本国政府と同義であるとみる説がある一方で、主権者としての日本国民を指すのであって日本国政府と同義ではないとする説もある。百里基地訴訟第一審判決では日本国政府を含むとしている。

以上のように「日本国民」は全体としての国民あるいは一体としての国民を指すとみるべきと理解されており、このことから個々の国民が自由な意思で各自の判断の下に外国軍隊や国連軍に志願し参加することは直接本条の問題とするところではないとみるのが多数説である。これに対して国連軍への参加の場合を除いてこのような行為は憲法の精神に反するとみる見解もある。しかし、この見解に対しては憲法は基本的には国民ではなく国家機関を直接の対象とする法規範であり(憲法の対国家性)、本条中の「国権の発動たる」の文言からも「日本国民」の文言に個々の国民を含めて考えるには無理があるとの批判がある。なお、本条の問題とは別に立法政策によってこれらの行為を禁止することは可能であると考えられている。

このほか国民が個人の立場で軍需産業に従事することは本条に反すると説く見解があるが、「日本国民」は個々の国民を意味するものではないとみる立場からはこのような解釈は妥当ではないという批判がある。

「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」の解釈

憲法9条第1項の「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」は戦争放棄の動機ないし目的について示したものと考えられ、マッカーサーノートの「日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高

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出典:wikipedia
2018/12/04 17:28

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