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最低賃金法とは?

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
【最低賃金法】


日本の法令
【通称・略称】
最賃法
法令番号
昭和34年法律第137号
【種類】
労働法
【効力】
現行法
【所管】
厚生労働省
【主な内容】
最低賃金について
【関連法令】
労働基準法賃金の支払の確保等に関する法律
【条文リンク】
e-Gov法令検索

最低賃金法(さいていちんぎんほう、昭和34年法律第137号)は、最低賃金制度等について定める日本法律である。

労働基準法において定めていた最低賃金制度を独立させる形で、1959年4月15日に公布された。

目次

  • 1 構成
  • 2 目的・定義
  • 3 最低賃金の決定
    • 3.1 地域別最低賃金
    • 3.2 特定最低賃金
    • 3.3 派遣労働者
    • 3.4 減額特例
  • 4 最低賃金審議会
  • 5 監督
  • 6 罰則
  • 7 船員に関する特例
    • 7.1 適用業種
  • 8 経緯
  • 9 評価
  • 10 脚注
  • 11 関連項目
  • 12 外部リンク

構成

目的・定義

この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする(第1条)。

この法律においての以下の語は次のとおり定義される(第2条)。

最低賃金の決定

最低賃金額は、時間によって定めるものとする(第3条)。賃金が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によって定められている場合は、当該賃金が支払われる労働者については、次の各号に定めるところにより、当該賃金を時間についての金額に換算して、第4条の規定を適用するものとする(施行規則第2条)。

  1. 日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額
  2. 週によって定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)で除した金額
  3. 月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額
  4. 時間、日、週又は月以外の一定の期間によって定められた賃金については、前三号に準じて算定した金額
  5. 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、当該賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間。以下この号において同じ。)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によつて労働した総労働時間数で除した金額

つまり、月給制や年俸制で働く労働者であっても、その賃金を時給に換算した額によって判定するのである。また勤務形態は問わないので、正規雇用・非正規雇用問わずすべての労働者に適用される。

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす(第4条1項、2項)。

ここでいう「賃金」には、以下のものは含まない(第4条3項)。

  1. 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(施行規則第1条1項)
    • 臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金
  2. 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(施行規則第1条2項)
  3. 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

賃金が通貨以外のもので支払われる場合又は使用者が労働者に提供した食事その他のものの代金を賃金から控除する場合においては、最低賃金の適用について、これらのものは、適正に評価されなければならない(現物給与等の評価、第5条)。

最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない(第8条)。この規定により使用者が労働者に周知させなければならない最低賃金の概要は、次のとおりとする(施行規則第6条)。

地域別最低賃金

賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない(第9条1項)。地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない(第9条2項)。この労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする(第9条3項)。

厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない(第10条1項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、1項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない(第10条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第10条1項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その意見の要旨を公示しなければならない(第11条1項)。第10条1項の規定による最低賃金審議会の意見に係る地域の労働者又はこれを使用する使用者は、第11条1項の規定による公示があった日から15日以内に、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる(第11条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない(第12条)。

特定最低賃金

労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、当該労働者若しくは使用者に適用される一定の事業若しくは職業に係る最低賃金(以下「特定最低賃金」という。)の決定又は当該労働者若しくは使用者に現に適用されている特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をするよう申し出ることができる(第15条1項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、1項の規定による申出があった場合において必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該申出に係る特定最低賃金の決定又は当該申出に係る特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をすることができる(第15条2項)。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、2項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない(第15条3項)。

特定最低賃金は、地域別最低賃金において定める最低賃金額を上回るものでなければならない(第16条)。もっとも、特定最低賃金と地域別最低賃金の双方が適用される労働者については、そのいずれか高いほうが適用されることになり(第6条)、実際にも地域別最低賃金が特定最低賃金を上回ったために地域別最低賃金が適用される事例は少なからず存在する。

第15条1項及び2項の規定にかかわらず、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、同項の規定により決定され、又は改正された特定最低賃金が著しく不適当となったと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる(第17条)。

派遣労働者

派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第44条1項に規定する派遣中の労働者)については、その派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金・特定最低賃金を適用する(第13条、第18条)。

減額特例

使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する(第7条)。この許可を受けようとする使用者は、許可申請書を当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出しなければならない(施行規則第4条1項)。

  1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
    • 精神又は身体の障害がある労働者であっても、その障害が当該労働者に従事させようとする業務の遂行に直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可しないこと。
    • 当該業務の遂行に直接支障を与える障害がある場合にも、その支障の程度が著しい場合にのみ許可すること。この場合に、支障の程度が著しいとは、当該労働者の労働能率が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうちの最下層の能力者の労働能率にも達しないものであること。
    • 当該労働者に支払おうとする賃金額は、最低賃金額から当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうちの最下層の能力者より労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならないこと(平成16年3月16日基発0316002号)。
  2. 試の使用期間中の者
    • 「試の使用期間」とは、当該期間中又は当該期間の後に本採用をするか否かの判断を行うための試験的な使用期間であって、労働協約、就業規則又は労働契約において定められているものをいうこと。したがって、その名称の如何を問わず、実態によって本号の適用をするものであること。
    • 当該業種、職種等の実情に照らし必要と認められる期間に限定して許可すること。その期間は最長6ヶ月を限度とすること(平成16年3月16日基発0316002号)。
  3. 職業能力開発促進法第24条1項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
    • 「厚生労働省令で定めるもの」とは、職業能力開発促進法施行規則第9条に定める普通課程若しくは短期課程(職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させるためのものに限る。)の普通職業訓練又は同条に定める専門課程の高度職業訓練を受ける者であって、職業を転換するために当該職業訓練を受けるもの以外のものとする(施行規則第3条1項)。
    • 職業訓練中であっても、年間を通じて1日平均の生産活動に従事する時間が、所定労働時間の3分の2程度以上である訓練年度については、許可しないこと。なお、訓練期間が2年又は3年であるものの最終年度については、原則として許可しないこと。
    • 当該労働者に支払おうとする賃金額は、上記の生産活動に従事する時間に対応する程度の額を下回ってはならないこと(平成16年3月16日基発0316002号)。
  4. 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
    • 「厚生労働省令で定めるもの」とは、軽易な業務に従事する者及び断続的労働に従事する者とする。ただし、軽易な業務に従事する者についての許可は、当該労働者の従事する業務が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者の従事する業務と比較して特に軽易な場合に限り、行うことができるものとする(施行規則第3条2項)。
    • 「軽易な業務に従事する者」として許可申請の対象となる労働者は、その従事する業務が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者のうち最も軽易な業務に従事する層の労働者の業務と比較してもなお軽易である者に限られること。
    • 常態として身体又は精神の緊張の少ない監視の業務に従事する者は、軽易な業務に従事する者に該当するが、これらの者に次いで最低賃金額が時間によって定められている場合は、許可の対象として差し支えないものの、最低賃金額が日、週又は月によって定められている場合において、当該労働者の所定労働時間が、当該最低賃金の適用を受ける他の労働者に比して相当長いときは、許可の限りではないこと(平成16年3月16日基発0316002号)。
    • 「断続的労働に従事する者」として許可申請の対象となる労働者は、常態として作業が間欠的であるため労働時間中においても手待ち時間が多く実作業時間が少ない者であること。最低賃金の時間額が適用される場合を除き、当該労働者の実作業時間が当該最低賃金の適用を受ける他の労働者の実作業時間数の2分の1程度以上であるときは許可しないこと(平成16年3月16日基発0316002号)。

改正前の適用除外許可及び改正後の減額特例許可の件数の推移は、中央最低賃金審議会の資料に示されていて、改正前の許可が失効し切り替えが多数行われた2009年度(平成21年度)を除き、おおむね改正後も改正前と同水準で許可が行われている。

最低賃金審議会

厚生労働省に中央最低賃金審議会を、都道府県労働局に地方最低賃金審議会を置く(第20条)。最低賃金審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項をつかさどるほか、地方最低賃金審議会にあっては、都道府県労働局長の諮問に応じて、最低賃金に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を都道府県労働局長に建議することができる(第21条)。

最低賃金審議会は、政令で定めるところにより、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもって組織する(第22条)。ILO諸条約および労働基準法第113条の「公労使三者構成の原則」を本法でも採用している。

最低賃金審議会に会長を置く。会長は、公益を代表する委員のうちから、委員が選挙する(第24条)。2019年(令和元年)7月就任の中央最低賃金審議会現会長は、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授の藤村博之

監督

厚生労働大臣は、賃金その他労働者の実情について必要な調査を行い、最低賃金制度が円滑に実施されるように努めなければならない(第28条)。厚生労働大臣及び都道府県労働局長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、厚生労働省令で定めるところにより、使用者又は労働者に対し、賃金に関する事項の報告をさせることができ(第29条)、使用者又は労働者は、最低賃金に関する決定又はその実施について必要な事項に関し厚生労働大臣又は都道府県労働局長から要求があったときは、当該事項について報告しなければならない(施行規則第12条)。

厚生労働大臣は、都道府県労働局長が決定した最低賃金が著しく不適当であると認めるときは、その改正又は廃止の決定をなすべきことを都道府県労働局長に命ずることができる。厚生労働大臣は、この規定による命令をしようとするときは、あらかじめ中央最低賃金審議会の意見を聴かなければならない(第30条2項、3項)。

労働基準監督署長及び労働基準監督官は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる(第31条)。労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法の規定による司法警察員の職務を行う(第33条)。労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。この規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない(第32条1項、3項)。

労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる(第34条1項)。使用者は、この申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第34条2項)。

罰則

第34条2項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(第39条)。

第4条1項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、50万円以下の罰金に処する(第40条)。

次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する(第41条)。

  1. 第8条の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)
  2. 第29条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
  3. 第32条1項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第39条~第41条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する(第42条)。

船員に関する特例

第6条第2項、第2章第2節、第16条及び第17条の規定は、船員法の適用を受ける船員に関しては、適用しない。船員に関しては、この法律に規定する厚生労働大臣、都道府県労働局長若しくは労働基準監督署長又は労働基準監督官の権限に属する事項は、国土交通大臣地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)又は船員労務官が行うものとする(第35条)。船員に関しては、この法律に規定する最低賃金審議会の権限に属する事項は、交通政策審議会等が行う(第36条)。つまり、船員については、地域別最低賃金は適用されずに、特定最低賃金のみが適用される。

船員の最低賃金は船舶の大きさによって、国土交通大臣が決定するものと地方運輸局長が決定するものがあり、国土交通大臣が決定するものは全国一律に、地方運輸局長が決定するものは当該地方運輸局管轄地域内で適用される。また、船員の最低賃金は月額で定められる。

適用業種

内航鋼船運航業及び木船運航業(サルベージ業に従事する船舶を除く)
海上旅客運送業
漁業

経緯

1947年に制定された労働基準法は、行政官庁が最低賃金審議会の調査および意見に基づき一定の事業または職業について最低賃金を定めることができる、と規定していた(施行当時の労働基準法第28条~第31条)。しかし、同法は、最低賃金を定めるか否かを行政官庁(労働大臣)の裁量(「必要があると認める場合」)に委ねていたところ、同官庁は、戦後の経済の疲弊と復興の必要性にかんがみ、1959年の最低賃金法の制定にいたるまで、ついに最低賃金を定めることをしなかった。

1959年に最低賃金法制定。完全な最低賃金制へ移行するまでの過渡的な「基盤づくり」の制度として、業者間協定に基づく最低賃金を中心として制定。ここでは、最低賃金の決定方式として、①業者間協定に基づく最低賃金、②業者間協定に基づく地域別最低賃金、③労働協約に基づく最低賃金、および、④最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金を規定した。

1968年、前年の中央最低賃金審議会による改正答申に基づき、最低賃金法を改正。業者間協定による方式を廃止し、ほとんどもっぱら最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金となった。この規定に基づいて、「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」という2つの制度が成立したが、中心となったのは前者である。

地域別最低賃金は、各都道府県の地方最低賃金審議会の審議に基づき、労働省(後に厚生労働省)の都道府県労働基準局長(後に都道府県労働局長)が決定する、当該都道府県のすべての労働者に適用される最低賃金である。1972年より各都道府県で順次この最低賃金が設定されていき、1975年には全都道府県がこの最低賃金をもつにいたり、ここでようやくすべての労働者に最低賃金制度が適用されるようになった。

2007年の改正では実際上利用可能性のほとんどない労働協約に基づく最低賃金制度(旧11条等)を廃止し、最低賃金審議会の審議に基づく最低賃金のうち、「地域」に関するもの(地域別最低賃金)を必置の最低賃金制度として明文化した。また、同審議会の審議に基づく最低賃金のうち「事業」と「職種」に関するもの(産業別最低賃金)は、「特定最低賃金」という補足的制度(任意の設置、罰則なし)として明文化した。この改正は、従来、最低賃金法の法文上は制度の名称等が全く現れず、中央最低賃金審議会の答申等でのみ名称や決定の要件・手続きが規定されてきた最低賃金の制度を法文上明示し、最低賃金を国民に分かりやすい制度にした。

評価

この法律について、制定から60年後に書かれた評伝で、

1959年に岸信介首相の経済政策の最後の総仕上げとして中小企業減税などを通じて中小企業育成と企業間の賃金格差是正のために日本に導入された。前年12月に国民健康保険法の改正を行って国民皆保険、昭和34年4月に国民年金法公的年金の恩恵がなかった農漁業従事者や中小企業や自営業にも年金が支給される国民年金と共に成立させられて現在の日本の社会保険制度になった。

という評価をしている人がいる。

最低賃金の経済的波及の1つとして、失業率の増加が揚げられている。賃金の支払いは、それを担う組織・営利団体等の維持に直接的に影響するものであり、本来的には、組織・営利団体内の職務・役割分担とその効果配分のバランスで個別・独自に取り決められるべきものである。しかし、一方で、同一内容あるいは同系統内容の職務・役割においての賃金差が一定あるいは相当性を甚だしく欠く場合には、いわゆる人権の1つであり、近時、特に最高裁判所の判例で取り扱われる「投票権における1票の格差」と法的には同性質の問題が生じるため、この問題を補正する一方法としての意義が、最低賃金法の立法趣旨には包含されている。

脚注

  1. ^ 現行の労働基準法第28条は、「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる。」と定める。
  2. ^ 高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者については、労働基準法上の「労働時間」という概念はないので、その者の賃金を健康管理時間で除して、時給に相当する額を求める。
  3. ^ 中央最低賃金審議会, 厚生労働省 (2014-06-18). “資料一覧 参考資料1 改正最低賃金法の運用状況について” (PDF). 第1回目安制度のあり方に関する全員協議会. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000048571.pdf
  4. ^ 令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)厚生労働省
  5. ^ 日本の最低賃金制度の歴史と課題 社会運動ユニオニズム研究会 2016.4.27 木住野徹
  6. ^ 昭和43年法律第90号(最低賃金法の一部を改正する法律)
  7. ^ 平成19年法律第129号(最低賃金法の一部を改正する法律)
  8. ^ 『叛骨の宰相 岸信介』 KADOKAWA、2014年1月20日、ISBN 978-4-04-600141-2、北康利

関連項目

外部リンク

雇用
雇用関係 | 
基本概念 | 

雇用形態 | 

就職活動 | 
出典:wikipedia
2020/02/17 04:10

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