石川県(いしかわけん、英: Ishikawa Prefecture)は、日本の中部地方に位置する県。県庁所在地及び最大の都市は金沢市。
本州の中央部、日本海側の北陸地方に位置する。県域は令制国の加賀国と能登国に当たる。
石川県の名称は加賀地方にあった石川郡に由来し、さらに石川郡との命名は本県最大の河川手取川の古名である「石川」に由来する。1872年(明治5年)、金沢県庁が石川郡美川町(現・白山市)に移転した際、その郡名により石川県と改名された。翌年、県庁が再び金沢に移転した後も県名はそのままで現在に至っている。なお、金沢も市制施行前である当時は石川郡に属していたため、県庁所在地と県名に不整合はなかったといえる。
形状は、東西約100km、南北約200kmと南北に細長い。県南部の加賀地方は西側に日本海の直線的な海岸線が続き、東側に両白山地の山々が連なる。南東部には県内で最高峰の白山(2,702m)がそびえる。県北部の能登地方は日本海に向かって北東方向に突き出た半島(能登半島)となっている。このため県全体の海岸線の総延長は約580kmに及ぶ。これはJR東海道本線の東京駅・神戸駅間(589.5 km)に相当する距離である。
気候は日本海側気候型である。西寄りの風が日本海を流れる対馬暖流の上で水蒸気を蓄えて雷雲となり、両白山地に当たって降水をもたらすことが多い。都道府県別の年間降水量は5番目に多い。特に冬は北西からの季節風が続くため降水量が多く、山間部は豪雪地帯となっている。降雪時に雷鳴を伴うことが多く、この現象は鰤(ブリ)が獲れる時期と重なることからブリ起こしと呼ばれている。
県民人口は約110万人である。都市別では金沢市が最多の約46万人と約40%を占める。次いで多いのは白山市と小松市のそれぞれ約11万人であり、金沢市を中心に県南部の加賀地方に人口が偏在している。金沢市の人口は、北陸地方では新潟市に次いで2番目(北陸3県に限れば 1番目)であり、北陸経済の中心地の一つとなっている。
2005年(平成17年)の従業者数約60万人のうち約65%が第三次産業に、約30%が第二次産業に従事している。特徴としては、第二次産業の中では製造業の割合が高く、また製造業の中でも従業者の過半数が一般機械や電気機械などの機械関連で働いていることが挙げられる。1人当たりの生産用機械器具製造業出荷額では全国1位となっている。
江戸時代に加賀国、能登国、越中国を領地としていた加賀藩は学問や文芸を奨励したことから、城下町の金沢を中心にして伝統文化が興隆し、今に受け継がれている。金沢市では能楽の加賀宝生、織物の染色技法である加賀友禅、蒔絵を施した金沢漆器、茶道具に用いられる大樋焼などが伝わる。その他、輪島市の輪島塗、加賀地方の九谷焼など芸術性の高い伝統技術が継承されている。人口当たりで見た日展(日本美術展覧会)や日本伝統工芸展の入選者数は全国1位となっている。
石川県を訪れる観光客は2010年(平成22年)で約2,150万人と見られ、このうち約820万人が金沢市周辺、約680万人が能登地方、約660万人が(金沢市周辺を除く)加賀地方を訪れたとされる。主要観光地で利用者数が多いのは、金沢市では兼六園、金沢城公園、金沢21世紀美術館、ひがし茶屋街、能登地方では輪島市の輪島朝市、七尾市の和倉温泉、能登食祭市場、羽咋市の気多大社、同市と宝達志水町に跨る千里浜、加賀地方では加賀市の山代温泉、山中温泉、片山津温泉、小松市の粟津温泉、木場潟公園、白山市の白山比咩神社などである。
全国47都道府県で唯一、太平洋戦争で空襲を受けていない。
日本の本州中央部の日本海側にある。全国8地方区分では中部地方に当たり、日本海側の北陸地方に位置している。県域は、東西100.9 km、南北198.4 km、面積4,185.66kmを有し、海岸線の総延長は581.0kmに及ぶ。南北に細長く、中央部がくびれた砂時計や、アルファベットのFのような形状をしている。西側、北側、北東側は日本海に面しており、南西側は福井県に、東側は富山県に、南東側は岐阜県に隣接している。なお、日本の領海を確定するために設定されている基線は輪島市舳倉島北東端から(富山県を経ず)新潟県佐渡市ネイ島西端まで直線基線が引かれている。
石川県の地形は、県北部の能登地方と県南部の加賀地方とで対照的な特徴を有している。
能登地方は日本海に向かって北東方向に突き出た半島(能登半島)である。第三紀に形成された火山岩や堆積岩からなる丘陵状の山地が広がっている。一級河川はなく、町野川、大海川などの二級河川が54水系指定されている。半島沖の海底は舳倉島付近まで大陸棚が続いており、その先も白山瀬や大和堆などの中深度海域が見られる。 半島北部は、概ね標高300m以下の低山地と丘陵地帯が連なる準平原で、全体として富山湾側に下降する背斜構造をしている。このため北西側の外浦(そとうら)は急峻な海食崖が形成され、海岸段丘が発達しているのに対して、南東側の内浦(うちうら)は沈降性の入り組んだ海岸線をしている。また、内浦の最深部に能登島があり、七尾湾が島を取り囲んでいる。半島中央部には、眉丈山南麓の断層が落ち込んで形成された帯状の低地帯(邑知潟地溝帯)が半島を横切っている。半島南部は宝達山を中心とする低い山地(宝達丘陵)が南北に連なり、西側の海岸線は長い砂浜海岸(千里浜)となっている。
加賀地方は南東部に白山(2,702m)を最高峰とする山地帯(両白山地)が発達し、北西に流れる河川によって形成された沖積平野(加賀平野、金沢平野)が南北に広がっている。白山は中国山地を経て九州北部に延びる白山火山帯に属しており、一帯には火山岩や凝灰岩が分布している。加賀地方の中央部を流れる手取川は白山を水源に日本海に注ぐ、長さ72km、流域面積809kmの一級河川で、石川県最大の川である。流域の90%が山地であり、平均勾配が約27分の1という日本有数の急流河川である。上流部は川の浸食作用で渓谷となり、中流部には河岸段丘が発達している。下流域は白山市鶴来地区(旧・鶴来町)を扇頂とし、中心角120度、半径12〜13kmの扇状地(手取川扇状地)を形成している。梯川は加賀地方南西部の白山山系大日山連峰の鈴ヶ岳を源流とする一級河川で、長さ42km、流域面積は271.2 kmである。加賀地方北部に当たる金沢市内を流れる犀川と浅野川はいずれも二級河川である。流域には河岸段丘が発達している。加賀地方の海岸部は単調な砂浜海岸であり、北部には内灘砂丘がある。また、海沿いの平野部に木場潟、柴山潟、河北潟などの潟湖が点在している。
国立公園が1か所(白山国立公園)、国定公園が2か所(能登半島国定公園、越前加賀海岸国定公園)、県立自然公園が5か所(山中・大日山県立自然公園、獅子吼・手取県立自然公園、碁石ケ峰県立自然公園、白山一里野県立自然公園、医王山県立自然公園)存在する。
白山国立公園は白山を中心とした両白山地の主要な山々を指定区域とする国立公園である。石川県、富山県、福井県、岐阜県の4県にまたがる。原生地域が区域の80%以上を占め、特にブナの原生林を広域に保有している。また、森林限界を越える高山帯としては日本最西端に当たるため、西限・南限とする貴重な動植物がみられる。
能登半島国定公園は能登半島の海岸一帯を主体とする国定公園である。石川県と富山県に跨る。能登金剛や禄剛崎など外浦の勇壮な海食景観と七尾湾や能登島など内浦の柔和な沈水景観の対比が特徴とされる。越前加賀海岸国定公園は加賀市から福井県敦賀市まで続く海岸一帯の国定公園である。石川県内では柴山潟や雁、鴨の飛来地 である片野鴨池が含まれている。片野鴨池はラムサール条約の登録湿地となっている。
石川県の気候は比較的日照時間の短い日本海側気候型である。その特徴は冬に顕著で、北西からの季節風によって気温が低く雪の降る日が多くなる。地元でブリ起こしと呼ばれる冬の雷 の発生数は日本で一番多い。降雪と雷が同時に起こることは世界的にも珍しく、ノルウェー西海岸やアメリカ合衆国の五大湖から東海岸にかけて見られる程度であるとされる。
発達した低気圧が日本海を通過するときに南東からの強い風が両白山地を越えてフェーン現象を起こすことがある。また、同じ中部地方でも太平洋側の東海地方に比べて梅雨が顕著ではないという特徴がある。
能登地方中部から加賀地方にかけての平野部の気候は比較的温和だが、能登地方北部では年平均気温がやや低く、加賀地方山間部は気温が低く多雨豪雪であるといった地域差が見られる。
能登地方は日本海に大きく突き出しているため寒暖の季節風の影響を受けやすい。北陸地方の他の都市に比べ、夏はやや涼しく、冬は雪も少なめである。年平均気温は13〜14°Cだが、能登地方北部はやや低めである。年降水量は1,700〜2,100mm、年日照時間は1,500〜1,700時間、最深積雪の平均は20〜60cmである。
加賀地方の平野部は比較的温和で年平均気温は13〜15°Cである。年降水量は2,100〜3,100mm、年日照時間は1,400〜1,700時間、最深積雪の平均は40〜50cmである。金沢市で年間200cmを超える降雪を観測した年は、1960年代 8回、1970年代 6回、1980年代 9回、1990年代 0回、2000年代 3回となっており、1990年代以降減少が顕著である。冬の日照時間が極端に少ないのが特徴で、夏は月平均約180時間に対し、冬は月平均約70時間である。加賀地方の山間部(標高500m以上)は最深積雪の平均が220cmと平野部の4倍以上になる豪雪地帯である。白山市白峰地区(旧・白峰村)では最深積雪682cmの記録がある。この地域が大雪となるのはシベリアからの乾いた冷たい季節風が日本海を流れる対馬暖流の上を通る時に水蒸気を蓄え雲となり、両白山地にぶつかって斜面を上昇すると断熱膨張によって冷やされ雪となるためである。
県北部を能登地方、県南部を加賀地方という。それぞれ令制国の能登国、加賀国の範囲に相当する。加賀地方は、かほく市以南を、能登地方は宝達志水町以北をさすことが多い。
石川県庁の出先機関では4地域または5地域に区分されることがある。たとえば、保健福祉センターは「能登北部、能登中部、石川中央、南加賀」の4区分である。
県営の看護士求人では「能登北部、能登中部、石川中央北部、石川中央南部、南加賀」の5区分である。
県の都市計画では「奥能登、中能登、県央、南加賀」の4区分である。
農林総合事務所や土木総合事務所では「奥能登、中能登、県央、石川、南加賀」の5区分である。
気象庁の天気予報では県域を北から南へ「能登北部、能登南部、加賀北部、加賀南部」と4区分される。
市町別では11市 5郡 8町となっている。石川県では、町は「まち」と読む が、鳳珠郡能登町および羽咋郡宝達志水町は「ちょう」と読む。石川県内の市町では、一部の小字地番にイロハや甲乙丙などを組み合わせたものが使用されている(白山市松任地区および野々市市を除く)。これは明治時代に行われた土地区画整理事業の名残で、石川県の多くの地域では2017年現在も使用されている。このため住居表示制度の導入割合は隣県の富山県や福井県より低い。
域内推計人口 : 951,978 人(全県比:84.3%)(2020年12月1日)
石川県庁の出先機関の圏域名である県央は金沢市、かほく市、河北郡の区域、石川は白山市、野々市市の区域(石川中央は左記2域を足し合わせた区域)、南加賀は小松市、加賀市、能美市、能美郡の区域を指す。
加賀地方には平成の大合併前に4市4郡13町5村あったが、2004年(平成16年)3月1日に河北郡3町(高松町、七塚町、宇ノ気町)がかほく市に、2005年(平成17年)2月1日に松任市と石川郡2町5村(美川町、鶴来町、河内村、吉野谷村、鳥越村、尾口村、白峰村)が白山市に、同日能美郡3町(根上町、寺井町、辰口町)が能美市に、同年10月1日旧加賀市と江沼郡1町(山中町)が加賀市(これにより江沼郡は消滅) となり、また2011年(平成23年)11月11日に野々市町が単独市制で野々市市に移行(これにより石川県の県名の由来となる石川郡が消滅)した。このほか、市町間で行政サービスを共同で行うため次の一部事務組合が設立されている。
域内推計人口 : 177,384 人(全県比:15.7%)(2020年12月1日)
石川県庁の出先機関の圏域名である能登中部・中能登は七尾市、羽咋市、羽咋郡、鹿島郡の圏域、能登北部・奥能登は輪島市、珠洲市、鳳珠郡の圏域を指す。
能登地方には平成の大合併前に4市4郡14町1村あったが、2004年(平成16年)10月1日に旧七尾市と鹿島郡3町(田鶴浜町、中島町、能登島町)が七尾市に、2005年(平成17年)3月1日に羽咋郡2町(志雄町、押水町)が宝達志水町に、同日鹿島郡3町(鳥屋町、鹿島町、鹿西町)が中能登町に、同日鳳至郡1町1村(能都町、柳田村)と珠洲郡1町(内浦町)が鳳珠郡能登町(これにより鳳至郡と珠洲郡は消滅)に、同年9月1日に羽咋郡2町(志賀町、富来町)が志賀町、2006年(平成18年)2月1日に旧輪島市と鳳珠郡1町(門前町)が輪島市となった。このほか、市町間で行政サービスを共同で行うため次の一部事務組合が設立されている。
県内で発見された旧石器時代の遺跡は能美市の灯台笹遺跡など極めて少ない。
縄文時代の遺跡では草創・早期の遺跡は少なく、中期と晩期にピークがある。
能登町の真脇遺跡は縄文時代の前期から晩期まで約4,000年続く長期定住遺跡である。