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行政不服審査法とは?

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
【行政不服審査法】


日本の法令
【通称・略称】
行審法、行服法
法令番号
平成26年法律第68号
【種類】
行政手続法
【効力】
現行法
【所管】
総務省
【主な内容】
行政不服申立の一般法
【関連法令】
行政事件訴訟法行政手続法行政機関の保有する情報の公開に関する法律
【条文リンク】
e-GOV法令検索
ウィキソース原文

行政不服審査法(ぎょうせいふふくしんさほう、平成26年6月13日法律第68号)は、事後における救済制度としての行政不服申立についての一般法(1条)として制定された日本法律である。行政法における行政救済法の一つに分類され、行審法と略される。

概要

行政不服申立てとは、何人であれ行政機関に対し紛争の解決を求める法的な争訟手続である。つまり、「行政庁の公権力の行使」(処分)に対し、不服に思った者が「行政機関」に対して不服を申立てることを指す。不服申立てを行う者としてはまずは私人があるが、とは限らない。国の機関や地方公共団体の機関が他の行政機関に対して不服申立てを行うこともその処分が、「処分がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの」でなければ可能である(例:警察署長による道路使用の不許可処分に対して、不許可となった市町村長から審査請求をする場合等。この場合は申請者が市町村長であるとはいえ一般人と同じ立場であるからである。これに対し法令で補助金を市町村へ交付するとしている場合は補助金の交付を受けることは、市町村のいう固有の資格において行われるため、補助金の交付処分について行政不服審査法による不服申立てはできない。)。不服申立者は裁判所ではなく行政機関を相手として事後的救済を求める争訟を提起することになる。

なお、行政機関によるものでなく司法上の救済(行政訴訟)については行政事件訴訟法がその一般法として制定されている。行政不服審査法、行政事件訴訟法は、いずれも事後の救済制度であるが、事前の救済制度として行政手続法がある。

行政不服審査法の前身は、1890年に制定された訴願法(明治23年法律第105号)である。訴願法は、「租税及手数料ノ賦課ニ関スル事件、租税滞納処分ニ関スル事件、営業免許ノ拒否又ハ取消ニ関スル事件」等、列記主義の原則により不服申立てのできる場合を限定的に規定していたこともあり、この法律によって十分な救済が図られる内容とは言い難かった。

また、日本国憲法第76条2項後段は行政機関が終審を行うことを禁止しているが、反対解釈すれば前審を禁じてはおらず、裁判所法3条2項も行政機関が裁判所の前審として審判を行うことを認めている。このことから、行政不服審査法は不服申立てのできる場合を限定するのではなくできない場合を例外規定として設け、その他の処分・不作為についてすべて不服申立てができるとする一般概括主義の原則により構成されている。その他、訴願法と行政不服審査法を比較すると、当事者の手続的な権利の充実という面で大きな進展がみられる。

全面改正

1962年(昭和37年)制定の行政不服審査法(以下「旧法」という。)制定以来、長らく実質的な改正はなかったが、2014年(平成26年)に現行法を抜本的に改正した行政不服審査法(平成26年6月13日法律第68号)が公布され、2016年(平成28年)4月1日に施行された(平成27年11月26日政令第390号)。

これ以前、第169回国会(2008年)において、不服申立て手続の審査請求への原則的一本化、再審査請求の廃止、審理員による審査請求の手続、行政不服審査会等による諮問手続の設置、審査請求期間の3か月への延長などを内容とする全部改正法案が、内閣より提出されたが、2度の継続審査とされた後、第171回国会(2009年)において衆議院解散(7月21日)されたため審議未了により廃案となった。

その後、再審査請求は維持するが、原則、審査請求及び再審査請求を経なければ出訴できないという二重前置をやめ、再審査請求手続を経なくても取消訴訟を提起することができる等の変更が加わったものが2014年に成立した改正法である。

主な改正点

旧法と比較して変更された点は、主なものとして次のとおり。

(1)審査請求への原則一元化

旧法での基本的な不服申立類型は、審査請求、異議申立ての2種類であった。審査請求を経るか、異議申立てを経るかは原則、該当する処分に関して処分庁に対する上級行政庁があるかないかにより区別されていたものの、異議申立ては審査請求と比較して簡略な手続きであり、かつ処分庁自らが決定庁となり決定を下すような状況となることが大半となり、自ら下した処分を自ら過ちであると認めた上で処分庁が処分を取り消すかまたは変更するようなことが異議申立者にとっては容易に期待できない面があった。

このため、異議申立てについては、適正手続の保障の観点から問題が残った。

さらに上級行政庁が偶然存在するか否かにより、手続保障に差異が生じることや、本来異議申立てとなるべきものを不服申立者が単純に勘違いして審査請求としてしまったり、逆に審査請求となるべきものを誤って異議申立てとしてしまったりしたために、その補正の結果、申立て可能な期間を経過してしまい、結局不服申立てができなくなるのを招きやすい等という問題も残った。

これらの問題を克服し、適正手続の保障・促進の観点から、審査請求への一本化が図られた。

(2)再調査の請求

処分庁以外の行政庁に審査請求ができる場合において、処分庁が簡易な手続で迅速に見直しを図る手法として再調査の請求の制度が導入された。

ただし、この再調査の請求は、個別法等法律が特に定める場合に限ってできることとされ、かつ原則、再調査の請求がされた場合は、再調査請求について裁決があるまでは審査請求はできない。なお、旧法において審査請求ができる場合に、異議申立てができるときは、異議申し立てを経ないで審査請求をすることが原則できなかったが、改正によりこの制限は廃止され、再調査の請求ができる場合であっても直接審査請求ができるとなった。

(3)審理員制度

適正手続・公正性の担保の観点から、審査請求の審理手続を主宰する者として審理員制度が置かれた。旧法では、審査請求に対する審理を原処分に関与した職員が主宰することもあり得たが、改正法では原処分に関与した者等が審理の主宰者となることが禁じられ、審理員等-審査請求人-処分庁等という三角関係による審理構造が確保されることとなった。

(4)行政不服審査会、不服審査機関等への諮問制度

適正手続・公正性の担保の観点から、第三者機関として、国においては行政不服審査会等が総務省に設置されることとなり、地方公共団体においても相当する機関を設けることとされた。その上で審理員による審理の後、原則としてこれら機関への諮問が義務付けられることとなった。

(5)審査請求期間の延長

旧法では原則、不服申立ては処分のあったことを知った日の翌日から起算して「60日」以内にしなければならないとされていたが、改正法により「3か月」に延長された。

(6)標準審査期間制度

審査庁となるべき処分庁は、審査請求が事務所に到達してから裁決までの間に通常要すべき標準的な期間(標準審査期間)を定める旨の努力義務規定があらたに設けられた。さらに、その期間を定めときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁(後述参照)の事務所において、備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならないとされた。

行政事件訴訟との比較

行政不服審査は、行政事件訴訟と共に法定の争訟手続である。行政権の行使の違法性をめぐる紛争を解決して、国民の権利利益の救済を目的とする手続きである点で、行政不服審査と行政訴訟は共通している。

他方、相違点として、不服審査では行政機関自身が争訟の裁断を行うのに対し、行政事件訴訟では裁判所が中立的で公平な第三者として紛争の裁断を行う。不服審査では手続が簡易迅速であると共に、処分の妥当性をも争えるのに対し、行政事件訴訟では手続きの対審性を保障し、当事者に口頭弁論を通して立証・反論の機会を保証する慎重な手続きを踏む。ただし、情報公開法18条は、開示請求決定に対する不服申立ては情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならないとし、審査の透明性を高めて公平性を確保する。

行政手続法との比較

行政不服審査は、行政庁による公権力の行使に対する事後の救済手続きに関する制度であるのに対して、行政手続法による手続きは、事前の救済手続きに関する制度である。

一方で、改正法により導入された審理員の制度は、行政手続法における聴聞の主宰者の制度を参考にして設けられた制度であり、該当する処分や不作為等一連の行為に関与した者以外による審理を徹底させ、審査の透明性、公平性がより高められた点において行政手続法と類似している。また、同様にあらたに導入された標準審査期間も、行政手続法における標準処理期間と類似している。

問題点

内容

行政不服審査法の目的は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保すること」にある(1条)。

不服申立ての概観

対象

不服申立ての対象としては、行政庁による処分(その他公権力の行使にあたる行為も含む)の他、行政庁が法令に基づく申請に対して期間内に応答しない不作為もあたる。しかし、「処分」の具体的な内容は法によって規定されているわけではなく、解釈によって定まる。一般に、「処分」の概念は行政行為とほぼ一致するといわれている。この処分概念を巡っては従来から行政事件訴訟法における処分性論でも同様の論争が続いている。不服申立ての対象となる。

行政不服審査法は申立ての対象となる処分や不作為を原則として限定していない。このような規定の仕方を一般概括主義または概括主義という。これに対して申立てのできる処分等を条文で列記したものに限定する方法を列記主義という。旧法が制定される以前において行政不服申立ての一般法であった訴願法はこの列記主義を採用していた。

概括主義の例外として不服申立てができない事項は、7条1項各号に挙げられているもののほか、独占禁止法第70条の12など他の法令により規定されたものがある。行政不服審査法第1条第2項により「他の法律に特別の定めがある場合」はその法律によることになるがそれ以外については行政不服審査法が適用される。例えば土地収用法第129条から第132条に特別な規定を置いているが、それに規定のない事項、例えば審査員の規定は適用される。

種類等

行政庁の処分に対する不服申立ては審査請求によって行われる。行政庁に不服がある場合か、行政庁に不作為がある場合かは問わない(第2条、第3条)。

なお、審査請求とは別に再審査請求があるが、これは法律に定めがある場合に限りできるものであり、かつ審査請求の裁決を経た後に限られる。

処分をした行政庁のことを処分庁といい、不作為が問題とされる行政庁を不作為庁という(4条1号)。

また、法律の定めがあれば再調査の請求もできるが、 これは処分に不服がありかつ審査請求を処分庁以外の行政庁にできる場合に限られ、請求先は処分庁となる。さらに、すでに審査請求をしたときは、この限りではない(5条)。

第2条(処分についての審査請求)
第3条(不作為についての審査請求)
第4条(審査請求をすべき行政庁)
なお、法定受託事務については、他の法律に特別の定めがある場合を除き、都道府県都道府県知事の執行機関が行った処分に対しては所管の大臣に、市町村長(市町村の補助機関なども含む。教育委員会と選挙管理委員会は除く。)は都道府県知事に、市町村教育委員会の行った処分については都道府県教育委員会に、市町村選挙管理委員会の行った処分については都道府県選挙管理委員会に審査請求ができる。さらに、不作為についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除き、それぞれ前述の行政機関のほか、当該不作為に係る執行機関に対してすることもできる。(地方自治法255条の2)。)。
他の法律に特別の定めがある場合の例
地方自治法206条
地方自治法238条の7(行政財産を使用する権利に関する処分についての不服申立て)
第5条(再調査の請求)
第6条(再審査請求)

以上のこととは別に、適用除外として不服申立てのできない処分が定められている(第7条)。ただし、これら対象となる処分についても、別途特別に法令にて当該処分又は不作為の性質に応じた不服申立ての制度を設けられることを妨げないとされ(第8条)、例えば、出入国管理難民認定法では、上陸拒否処分に対し法務大臣に対し「異議の申出」ができると規定している(第11条)。

第7条(適用除外)
第8条(特別の不服申立ての制度)

審査請求

詳細は「審査請求」を参照

審査請求は、不服申立ての基本類型である。 再審査請求の手続については第62条以下に規定があるが、審査請求の規定が概ね準用されている。あらたに設けられた再調査の請求に関する手続は第54条以下に規定がある。各制度特有の手続についてはその都度説明を加える。なお、これらの手続によっても紛争が解決しない場合には行政事件訴訟法に基づいて訴訟を提起し、司法審査(裁判所による裁判)を受けることができる。

審理員及び審理関係人

第9条(審理員)
第10条(法人でない社団又は財団の不服申立て)
第11条(総代)
第12条(代理人による審査請求)
第13条(参加人)
第14条(行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置)
第15条(審理手続の承継)
第16条(標準審理期間)
第17条(審理員となるべき者の名簿)

審査請求の手続

国民が行政機関を相手として救済を求めるために不服申立て手続きを発意(争訟を提起)しても、これを行政機関が受理しなければ救済手続きは実質的に開始されない。よって、不服申立てを不受理として門前払いすることは許されず、たとえ不適法な申立であっても処分庁または審査庁はこれを受理し、不服申立ての手続きを行わなければならない。このような処分庁または審査庁の不服申立ての受理・手続き開始義務の根拠は、次の点にある。

第18条(審査請求期間)
第19条(審査請求書の提出)
第20条(口頭による審査請求)
第21条(処分庁等を経由する審査請求)
第22条(誤った教示をした場合の救済)
第23条(審査請求書の補正)
第24条(審理手続を経ないでする却下裁決)
第25条(執行停止)
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