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雨とは?

降雨
車の窓ガラスに付いた雨粒

(あめ)とは、大気からが落下する現象で、降水現象および天気の一種。また、落下する水滴そのもの(雨粒)を指すこともある。大気に含まれる水蒸気が源であり、冷却されて凝結した微小な水滴がを形成、雲の中で水滴が成長し、やがて重力により落下してくるものである。ただし、成長の過程で一旦凍結氷晶を経て再び融解するものもある。地球上の水循環を構成する最大の淡水供給源で、生態系に多岐にわたり関与するほか、農業水力発電などを通して人類の生活にも関与している。

目次

  • 1 雨の形成
    • 1.1 水蒸気から雲へ
    • 1.2 凝結・暖かい雨
    • 1.3 氷晶・冷たい雨
    • 1.4 雲から雨へ
  • 2 雨の降り方
    • 2.1 降水型
    • 2.2 雨の強さ
      • 2.2.1 雨強し
        • 2.2.1.1 日本式天気記号
    • 2.3 世界の気候と雨
    • 2.4 災害
  • 3 雨の性質
    • 3.1 雨粒
    • 3.2 雨粒の大きさと形状
    • 3.3 雨水の化学成分
    • 3.4 特異な雨
  • 4 気象通報・天気図
  • 5 観測
    • 5.1 気象レーダー
    • 5.2 気象衛星
  • 6 水循環と水資源
    • 6.1 自然環境
    • 6.2 雨水の利用
    • 6.3 人工降雨
  • 7 文化・生活
    • 7.1 民俗
    • 7.2 雨による活動の制約
    • 7.3 雨の表現
  • 8 地球以外の天体の雨
  • 9 脚注
    • 9.1 注釈
    • 9.2 出典
  • 10 参考文献
  • 11 関連項目
  • 12 外部リンク

雨の形成

水循環
アスファルト上に降り水紋を作る雨
移動する雨雲と雨筋

水蒸気から雲へ

地球の大気(空気)は、場所により量が異なるが、水蒸気を含んでいる。この水蒸気は、海洋の表面、地面からの蒸発、植物からの蒸散などを通して供給されるものである。

空気中の水蒸気の量を表す身近な指標として相対湿度があり、通常は単に湿度と呼ぶ。相対湿度とは、空気がある温度(気温)であるときに含むことができる水蒸気の最大量(飽和水蒸気量)を100%とし、実際に含まれている量を最大量に対する割合で表したものである。例えば、気温25・相対湿度50%の空気には、1m(=1000リットル)あたり11.4gの水蒸気が含まれる。

空気の相対湿度が増して100%に達することを飽和という。空気は、何らかの要因によって冷やされることで飽和する。飽和した空気では、水蒸気が凝結して微小な水滴を形成する。これがである。

先の例に挙げた、25℃・相対湿度50%の空気1mを考える。この空気には11.4gの水蒸気が含まれる。これを10℃まで冷却すると、10℃の飽和水蒸気量は9.3g/mなので、11.4 - 9.3 = 2.1g分が凝結し水滴となることが分かる。

空気を冷却して飽和させるプロセスは、主に断熱膨張による冷却である。断熱膨張とは、上空へいくほど気圧が低いため、空気が持ち上げられて気圧が下がると膨張し、同時に冷却されることを言う。大気の対流気団同士の衝突(前線)などの大気の大規模な運動、また気流が山にぶつかったりするような物理的障害によって起こる。このほかには、例えば暖かい空気が冷たい海面に触れたり、空気が熱放射として宇宙に向かって赤外線を放射したり(冬の晴れた夜間に起こる放射冷却としてよく知られている)、降雨時の雨粒が蒸発の際に潜熱を奪い周りの空気を冷やしたりするプロセスがある。

凝結・暖かい雨

空気中での水滴の凝結は実際には、凝結核を介して行われる。球の形をする水滴には表面張力が働くが、水滴が小さいほど表面張力が強く核生成が安定しない。ある実験によれば、ほこりのない非常に清浄な空気中では、0℃のとき相対湿度が100%を超過(過飽和)してさらに430%まで達しなければ、水滴は自発的に形成されない。対して、通常の大気のように凝結核がある空気中では、エアロゾル粒子の働きにより凝結が助けられるため、相対湿度は概ね101%を上回ることがない。雲の凝結核として働く主なエアロゾル粒子には、燃焼ガスや火山ガスに由来する0.1-1µm硫酸塩粒子、海のしぶきに由来する数µmの海塩粒子や、土壌由来の粒子、有機エアロゾルなどがある。

雲ができたての時の水滴(雲粒)の大きさは、半径1 - 20µm(0.001 - 0.02mm)程度である。これに対し、雨粒の平均的な大きさは半径1,000µm(1mm)である。なお、雲の中には1mあたり1000万 - 数百億個の雲粒が存在する。半径1 - 10µm程度の初期の段階では、雲粒の表面にさらに水蒸気が凝結していくことにより通常でも数分ほどで10µm程度の大きさに成長する(凝結過程)。しかし、凝結による成長は粒径が大きくなるほど遅くなる。雲粒の平均を半径10µmだとして、半径100倍の1,000µmに成長するためには、体積にして100万倍、これを雲の中の平均的な水蒸気量の下で凝結だけで行うと約2週間かかると試算され、現実とはかけ離れている。実際には、10 - 30µm程度に達すると水滴同士の衝突により成長する(併合過程)。衝突併合による成長は粒径が大きいほど速いため、この段階では加速的に成長が進む。なお、海洋の積雲では、吸湿性の海塩粒子が豊富な事から大きな粒子がすぐに生成され、雲ができ始めてから20 - 30分程度で雨が降り出すことも珍しくない。

上記のように、一貫して液体のまま雨として降るプロセスを「暖かい雨」という。これに対し、途中で凍結して氷晶になり、再び融解して降るプロセスを「冷たい雨」という。日本で降る雨は、およそ8割が「冷たい雨」のプロセスによるものだと言われている。

詳細は「降水過程」を参照

氷晶・冷たい雨

気温が0℃を下回る冷たい空気の環境下で起こる。単体氷晶の形成としては、水蒸気が凝結核を介して凝結した水滴がさらに凍結核の働きにより凍結し氷晶となるパターンと、水蒸気が昇華核を介して昇華し直接氷晶を形成するパターン、さらに、氷晶同士の衝突などで生じる二次氷晶がある。

空気中では、気温が0℃を少し下回ったくらいでは水滴の凍結が始まらないことが多い。0℃以下で凍らない状態を過冷却と言う。凍結核は、水滴に衝突することによる衝撃や、水滴に溶け出すことによる化学的効果などを通して、概ね-30℃以上の環境下で凍結を促す。-30℃以下の環境では、昇華による氷晶の形成が起こる。また、-40℃以下の環境では、凍結核がない場合でも純水の均質核生成により水滴が凍結する。

雲の中で一部の水滴が凍って氷晶になり始めると、周囲に存在する過冷却の水滴は蒸発して氷晶の表面に昇華するため、急速に成長する。例えば直径10µmの氷晶は、同じ大きさの水滴に比べて10倍の速度で成長する。氷晶は成長過程で分化し、結晶が集まった雪片になるものと、主に積乱雲の中で生じるが丸みを帯びた氷の粒()になるものに分かれる。

雪片や霰が落下する途中で、0℃より高い空気の層に達すると融け始め、完全に融けると液体の雨粒となる。融けきれない場合はとなる。雪は落下途中で昇華(気化)しながら昇華熱を放出するため、2 - 3℃程度では雪の形状を保ったまま降ることがある。雪になるか雨になるか、あるいは雪と雨が混合するになるかは、気温と相対湿度により決まる(雪#雪・霙・雨の境目、雪の目安も参照)。

またごく稀に、冷たい雨の成立する環境下で上空に0℃以上の逆転層が存在する時、落下中は液体(過冷却)であるものの着地時に凍結して氷の層(雨氷)を形成する、着氷性の雨というものも存在する。

雲から雨へ

寒冷前線(左)と温暖前線(右)による雨の模式図

なお、雲の段階で水滴が落ちてこないのは、落下速度が遅いからである。半径1 - 10µmのオーダーの水滴の終端速度は1cm/sに満たないが、雲の中ではこれを優に上回る速度の上昇気流が普通に存在するため、浮かんでいるように見える。一方、水滴が半径1mm(直径2mm)のときの終端速度は7m/sに達し、上昇気流を振り切って落下する。短い場合、特に海洋上で発生する積雲の場合、雲ができ始めてから最短15 - 20分程度で雨が降り出す場合がある。また熱帯地方の「暖かい雨」の場合も、30分 - 1時間程度で雨が降り出す。ただ、これらより長く滞留して降る雨も少なくない。

主に雨を降らせる雲は、10種分類において層雲乱層雲積乱雲に分類される雲である。層雲は地上に近いところにでき、弱く変化の少ない雨を降らせることが多い。乱層雲は灰色を呈し風により変化に富む形状をする雲で、雨を降らせる代表的な雲である。積乱雲は上空高くもくもくと盛り上がる雲で、乱層雲よりも激しく変化の大きい雨を降らせ、しばしば雷や雹を伴う。

雨雲の下端(雲底)の高さは実にさまざまだが平均的には約500m - 2,000m程度で、多くの雨粒はこの距離を落下してくる。周囲の空気が乾燥していると、雨は落下する途中で蒸発してしまう。このときには、雲の下に筋状の雨跡を見ることができ、これを降水条や尾流雲と呼ぶ。

雨の降り方

降水型

雨は、雲を生じさせる要因によりいくつかの降水型に分類できる。

雨の強さ

雨の強さ、一定時間に降る雨の量を雨量(うりょう)と言う。雨量は、雨量計と呼ばれる直径20cmの円筒形の器具で測定し、その深さをミリメートル(mm)で表現する。通常用いるのは1時間の雨量(時間雨量)だが、短時間の降雨の強さを表すために10分間雨量などを用いることもある。なお、雪や霰などの雨以外による降水も含めた場合は降水量と言う。

気象庁では、雨の強さの表現を時間雨量により次のように分類している。

分類 | 1時間雨量 | イメージ | 周囲の様子や影響
小雨 (数時間続いても1mm未満の雨)
弱い雨 3mm未満 | ―
やや強い雨 10mm以上20mm未満 | ザーザーと降る | 雨の音で話しが良く聞き取れない。地面一面に水たまりができる。
強い雨 20mm以上30mm未満 | 土砂降り | をさしていても濡れる。車のワイパーを速くしても前が見づらい。側溝や下水、小さながあふれ、小規模の崖崩れが始まる。
激しい雨 30mm以上50mm未満 | バケツをひっくり返したように降る | 道路が川のようになる。車のスピードが速いとブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)。山崩れ・崖崩れが起きやすくなり、危険な場所では避難の準備が必要。都市では下水管から雨水があふれる。
非常に激しい雨 50mm以上80mm未満 | 滝のように降る。ゴーゴーと降り続く | 傘は全く役に立たなくなる。水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる。車の運転は危険とされる。多くの災害が発生する。都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込む場合がある。マンホールから水が噴出する。土石流が起こりやすい。
猛烈な雨 80mm以上 | 息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感じる | 雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要。

また、災害の恐れのあるような雨を「大雨」、その程度が激しいものを「豪雨」と言う。

雨強し

雨強しの天気記号(日本式)

雨が強く降っていることを指すが、気象学的には一時間に15ミリ以上の雨が降る状態のことである。「強い雨」とは気象庁の定める雨量が異なる。

日本式天気記号

日本式の天気記号では、雨の天気図記号「」の右下に片仮名の「ツ」をつける。これは、雷強しなどと同様である。

世界の気候と雨

大気循環の模式図。降水量のピークは熱帯収束帯と高緯度低圧帯(亜寒帯低圧帯)にある。

世界では地域によって、雨の降り方は全くと言っていいほど異なる。極端な例では、1分間に30mmあるいは1日に1,500mmもの豪雨が降る地域がある一方、1年に1mmも雨が降らない地域も存在する。おおまかな傾向として、高緯度地域よりも低緯度緯度の方が雨が多く、また大陸では内陸部よりも沿岸部の方が雨が多く、気温の高さや水の供給源からの近さが影響を与えている。しかし、緯度と雨量は単純に対応しているわけではない。地球を南北に見ると雨量の多い地域は2つあり、1つは暖気が上昇し続ける赤道付近の熱帯、もう1つは寒気と暖気がせめぎ合う中緯度の温帯亜寒帯である。

世界の年間降水量(雪を含む)を平均すると、陸上では約850mm、海洋では約1250mm、地表平均では約1100mmと推定されている。古い資料では世界平均で800mm程度とされていることがあるが、新しい調査で海洋のデータが判明したことで値は上方修正されている。

熱帯雨林気候を呈する赤道付近では、貿易風が収束する熱帯収束帯で積乱雲が発達しやすく、対流性の強い雨が毎日のように降る。温帯湿潤気候亜寒帯湿潤気候を呈する中緯度では、亜寒帯低圧帯に沿い前線や低気圧の活動が活発であり、層状性の雲から広く雨や雪が降る一方、寒暖差が大きいため対流性の雨も降る。特に亜熱帯温帯の地域では、1時間雨量の最大値は熱帯とほぼ変わらない。

一方、熱帯と温帯に挟まれた乾燥帯の地域は亜熱帯高気圧に覆われ気流が発散し、雲ができにくいため雨が少ない。ただし、この緯度にあってもアジア・アフリカ・北米・南米の大陸東岸では海洋性の高気圧からの南寄り(北半球の場合。南半球では北寄り)の辺縁流や暖流の影響で湿潤となり、年間を通して雨が多い温暖湿潤気候となる。

これらの気圧帯は季節変化に伴い南北に移動する。これにより、季節により雨量が著しく変化する地域がある。乾燥帯寄りの熱帯に位置するサバナ気候熱帯モンスーン気候の地域では、雨季乾季が明瞭に現れ、年間雨量の9割が雨季に集中する。一方、ヨーロッパの地中海沿いは夏に高圧帯、冬に低圧帯に入るため冬に雨が多く夏に乾燥する地中海性気候となる。

降水量の極値については「降水量」を参照

災害

雨量は季節やにより変動し、少な過ぎても多過ぎても災害となりうる。大雨による災害には、家屋の流失や田畑の冠水をもたらす洪水地すべり崖崩れなどがある。少雨による災害には、水不足旱魃などがある。

雨量の多さと災害の目安については、#雨の強さ節の表も参照。

雨の性質

雨粒の形状

雨粒

落下する雨の水滴を雨粒(あまつぶ)といい、雨滴(うてき)ともいう。雨水が軒などから落ちるのは雨垂れ(あまだれ)、雨だれが落ちて打ち当るところを雨垂落(あまだれおち)という。なお、雨によるものではないが、濃霧の時、森林の中で霧の微小な水滴が枝葉につき、大粒の水滴となって雨のように降り落ちる現象を樹雨(きさめ、きあめ)という。

雨粒の温度は、概ね気温より冷たい傾向にあるが、落下してくる大気の気温や湿度に左右される。地表においては、おおよそ湿球温度に近い温度になると考えられている。

雨粒は太陽光を反射分光し、を作ることがある。

雨粒の大きさと形状

雨粒の大きさは、通常は直径1mm前後で、概ね直径0.2 - 6mmの範囲内にある。小さなものほど落下速度が小さく、特に直径0.5mm未満の雨粒が一様に降る状態の雨を霧雨(きりさめ)といい、ほとんど浮遊しているように見えるとされる。一方、直径6mmを超えるような大きな雨粒は分裂しやすく観測されにくい。

雨が降ってくるとき、雨粒の密度は、1mあたり10個 - 1,000個程度である。雨粒の大きさと密度の関係は、「マーシャル・パルマーの粒径分布」として表せる(マーシャルおよびパルマー、1947年)。実際には全ての場合に適用できる訳ではないが、大きな粒ほど密度が低い、おおよそ指数関数的な分布になっている。

雨粒の落下速度は、雨粒の大きさにほぼ比例する。相当半径0.1mm(直径0.2mm)では終端速度70cm/s、0.5mm(直径1cm)では4m/s、1mm(直径2mm)では6.5m/sである。2mm(直径4mm)では9m/sに達するがこれより大きくなっても速度はほとんど変わらず、約9m/sが最大値である。

雨粒が空気中を落下するとき、雨粒が半径1mm(直径2mm)より小さい場合は、表面張力のためにほぼ球形をしている。これより大きくなると、表面張力が小さくなる代わりに空気抵抗が増し、雨粒の底面が平らなまんじゅうのような形状となるうえ、落下時に振動し始めて不安定となり、分裂しやすくなる。大きくなるほど壊れやすいため、実際に地上で観測されている雨粒は、最大でも直径8mm程度までである。

雨がしばしば涙滴形で描かれているのは、木の葉の先から露が落ちるときや、窓ガラスを伝う水滴が涙形をしているためである。1951年北海道大学孫野長治博士が空中を落下する雨粒の写真撮影に成功し、「まんじゅう形」を世界で初めて確認した。

雨水の化学成分

雨水は大部分が水であるが、微量の不純物を含んでいる。不純物の量は、雨水1リットル中に数mg - 数十mgのオーダーである。不純物の濃度は、雨の降り始めに濃い傾向があり、降り続くに従い、また雨量が増えるに従い薄くなっていく。また、季節や場所により大きく変動し、工業地帯では濃度が高い。

不純物の成分はなどの燃焼由来の有機物硫黄酸化物(硫酸)、窒素酸化物塩素ナトリウム土壌由来の成分などで、重金属類が含まれることもある。これらは雲が発生する際(レインアウト)、あるいは雨となって地上に落ちてくる際(ウォッシュアウト)、周囲の空気から取り込まれる。降水量の多い日本では、大気中から地表への沈着物質の6 - 7割が雨による湿性沈着だと考えられている。

また核実験の後などには、雨水中に放射性物質が含まれることがある。

雨水中の水を構成する水素酸素同位体比は、海水に比べるとやや軽い同位体の比率が高く、大気中の水蒸気と比べるとやや重い同位体の比率が高い。また、気温が低いほど、緯度が低いほど、標高が高いほど、海岸から離れるほど、それぞれ同位体比は低くなる。

雨自体に臭いはないが、雷により産生されるオゾン、湿度が上昇することによって粘土から出されるペトリコールや、土壌中の細菌が出すゲオスミンが雨が降るときの臭いの元だと言われている。

通常でも雨水は大気中の二酸化炭素を吸収するため、pH(水素イオン指数)は6前後とやや酸性を示す。雨が硫黄酸化物や窒素酸化物などを大気中から取り込み、強い酸性を示すものもある。一方、土壌や燃焼に由来するアンモニウムカルシウム成分を取り込み、pHが中和されることもある。中国東部では、石炭資源が豊富なためその利用により硫黄酸化物が大量に排出されると同時に土壌から黄砂などに由来するアンモニウムやカルシウムが排出され、汚染のポテンシャル自体が高い割に酸性雨の被害は顕著ではない。大気中の二酸化炭素濃度を考慮した平衡状態がpH5.6であることから、この値以下のものを酸性雨と呼ぶが、pH5.0以下とする定義もある。

特異な雨

魚の雨を描いた絵、シンガポール

通常とは違い、異物を含んだ雨、色の付いた雨が降ることがあり、俗に怪雨(かいう)と呼ばれる。

黄砂などの土壌由来の成分()や火山灰を含み、黄色や赤色を呈する雨が降ることがあり、泥雨(でいう)と呼ばれる。また赤色の場合は血雨(けつう)とも呼ばれる。工業地帯の煤煙を含んだ雨は黒雨(こくう)と呼ばれる。

特殊な例として、雨と一緒にカエル穀物、木の実が降るような現象が世界各地で報告されており、"falls from the skies"の頭字語ファフロツキーズと呼ばれる。

核攻撃核実験が行われた場所では、放射性降下物を含む黒い雨が降った例がある。1945年8月15日、広島市への原子爆弾投下の後、高レベルの放射能を持つ黒い雨が降った。この雨は触れただけで放射線障害の原因となり、二次被曝を引き起こした。核爆発により放出される大量の熱やその後の市街地の火災が上昇気流を起こし、大量の粉塵が混じったことで黒色を呈した。長崎市への原子爆弾投下後においても、黒い雨が降っている。

気象通報・天気図

雨の天気記号

ラジオ気象通報や新聞に掲載される日本式天気図における天気分類では、直径0.5mm以上の水滴が降る場合を「雨」と呼び、直径0.5mm未満の水滴が一様に降るものは「霧雨」として区別する。また、時間雨量に換算して15mm以上の強度で雨が降る場合は「雨強し」、対流性の雲(積雲、積乱雲)から降る雨の場合は「にわか雨」に分類され、それぞれ天気記号が異なる。

世界の定点気象観測で用いるSYNOPでは、時間雨量3mm未満を弱い雨、3mm以上15mm未満を並の雨、15mm以上を強い雨として、強度を3区分する。航空気象のMATERでは、雨はRA、しゅう雨はSHRAで表される。

観測

ハリケーン・リタのレーダー画像。赤いところほど雨が強い

雨の観測は主に雨量計気象レーダーにより行われる。雨量計は地点ごとの正確な雨量が分かるが、雨量は地域により大きく偏ることがあり雨量計だけでは雨の全体像を把握できない。一方、気象レーダーは面的に雨の強さの分布が分かるが、雨粒の大きさを測定できないため実際の雨量と大きな誤差が出てしまう。防災面では、両者の欠点を補うため雨量計やレーダーの情報を組み合わせてコンピューター処理した上で活用する。

日本の場合、防災を目的に気象庁アメダス雨量計が国内約1,300か所に設置されている。また気象庁の気象レーダーは20か所に設置され、国内ほぼ全域をカバーしている。このほか国土交通省都道府県鉄道会社電力会社などが、独自の雨量計やレーダーなどを保有している。

雨の観測の歴史は古く、最古のものとしては紀元前4世紀マウリヤ朝時代の古代インドで行われた観測記録がカウティリヤの著書に記されている。15世紀李氏朝鮮では世宗が銅製の計器を用いて観測を行わせたとされる。中国でも15世紀に観測が行われた。ヨーロッパでは、17世紀に雨量計が考案され、ロバート・フックが行った観測記録などが残っている。日本では、18世紀初めに徳川吉宗が雨量を観測させたとされるが、記録自体は残っていない。

連続した雨量の観測記録の中でもっとも古く信頼できるものは、イギリスロンドン郊外のキューにおけるもので、1697年からの記録がある。このデータは、気候変動を論じる上で、降水量の長期変動を示す資料として引用されている。また日本では、1875年6月1日(気象記念日)に当時東京気象台で雨量の観測が始まった。

気象レーダー

気象レーダーは、波長5 - 10cmの電波(マイクロ波)を放射して雨粒からの反射を検知し、半径およそ300 - 500kmの領域内の降雨分布を調べるものである。レーダー電波の反射強度は、雨粒の直径の6乗と大気中の個数(密度)の積で表される。同程度の雨量でも雨粒の大きさが異なるために誤差が生じることがあり、レーダーのみで正確な雨量は求められない。

なお、雪が融けて雨に変わりつつあるとき、電波が屈折してしまうためその高度のレーダー反射は強くなる。これをブライトバンドという。さらに、雨粒以外のもの、例えば鳥や昆虫などの小動物、空気の乱れなどで異常な観測結果がみられることがあり、このようなものをエンジェルエコーと呼ぶ。

気象衛星

実用投入されている気象衛星赤外線により雲の観測を行うもので、雨の直接観測は行っていない。衛星による雨の直接観測が可能となったのは1990年代であり、熱帯降雨観測衛星(TRMM)は熱帯の雨の観測を行った。その後、国際的な協力により複数の衛星による全球降水観測計画(GPM)が展開されている。

水循環と水資源

雨どいと雨水タンク、フランスにて

地球の水循環の中で、雲あるいは水蒸気として大気中に含まれる水は約13×10kg、また年間の降水総量は重量にして約400×10kg、高さにして平均800mmと見積もられており、約10日間で入れ替わることに相当する。なお、降水のうち陸地に降るのは4分の1で、残りの4分の3は海洋に降っている。ただし、陸域では降った雨のうち速やかに地表を流れるのは1割で、残りの9割は一旦地下に浸透して地下水に転じ、数か月から数百年をかけてゆっくりと湧出する。

自然環境

生物にとって雨は、生存に必要不可欠な水、しかも飲用に適した淡水を供給するという重要な役割をもつ。地上に生息する生物の多くは、雨が集まってできた水辺、地面にしみ込んだ後湧き出すやそれらが合流してできるから生存に必要な水を摂取する。人間においても同様であり、海水淡水化施設を利用している一部を除けば、世界の水道水はほぼ雨に由来する淡水を利用している。

また、雨が地形に及ぼす作用は大きい。雨水が地形を削る浸食作用や、土壌に浸透することで土質を変化させる作用がある。植生も雨に左右され、雨の多い地域では森林が発達し、農業生産が盛んである。

また、例えば雨で地面が濡れると地中からミミズが這い出てきて、それを狙ってが低空飛行するという風に、生物には雨が降るとき特有の生態も多々ある。

雨水の利用

人類は、工業用水農業用水飲料水の利用、水力発電など、産業や生活を通じて雨水を源とする水資源を利用している。

水力発電は雨水や雪解け水に由来する水の重力落下によって生じる運動エネルギー電気として利用するものであり、海水の蒸発・雲の生成(凝結・凝固)・降雨といった自然のプロセスを復元力とした再生可能エネルギーである。

また雨水の直接利用として、庭先などで雨水を貯留し利用する雨水タンクなどもある。

人工降雨

雲の凝結や雲粒の成長を促して雨を増やす科学的な人工降雨は、1940年代に初めて試みられた。ドライアイスヨウ化銀を氷晶核とする方法が広く用いられ、条件の整った雲であれば一定の成果が得られることが報告されている。しかし、1971年にアメリカがベトナム戦争において雨を増加させて補給を寸断させる作戦を計画したことを契機に、悪影響の側面が議論されることとなった。1976年には環境改変兵器禁止条約が採択(1978年発効)され、敵対国への気象改変技術の使用は禁止されている。

文化・生活

歌川広重『名所江戸百景』

雨の概念や雨に対する考え方は、その土地の気候によって様々なものがある。イギリスドイツフランスなど西洋の温暖な地域(西岸海洋性気候の地域)では「雨」を悲しいイメージで捉える傾向が強く、いくつかの童謡にもそれが表現されている。

一方、雨が少ないアフリカ中東中央アジアの乾燥地帯などでは、雨が楽しいイメージ、喜ばしいものとして捉えられることが多く、雨が歓迎される。

民俗

古来より人は、恵みをもたらす半面災厄をもたらす雨を、崇拝すると同時に畏怖していたと考えられる。端的な例として、ノアの洪水のみならず、世界の破壊や創造をもたらす洪水神話は世界各地に存在する。洪水神話は、雨の破壊性と創造性の2つの面を象徴していると考えられる。

また、世界の多くの神話や伝承において雨は、至高神、天神、雷神の活動の結果としてもたらされると解釈されている。メソポタミア神話の天候神アダドヒッタイトの天候神テシュブフェニキアの嵐の神バアルは天候を支配し雨や洪水を司るとされ、神の怒りが洪水や干ばつの原因だとして恐れられた。ギリシア神話では、全能の神ゼウスが雷を武器として他の巨人や神々と戦う際に雨が降るとされた。インド神話では、王インドラが雷神でもあり、悪竜ブルトラを退治することで川に水を取り戻し、田畑を干ばつから救ったとされる。日本神話では、スサノオヤマタノオロチを倒した際にその尾から出た天叢雲剣が雲を司る神器とされる。スサノオが高千穂峰に降りた天孫降臨の際には、雨と風がもたらされたと伝えられる。

さらに、天を、大地を ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出典:wikipedia
2019/02/19 21:52

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