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X68000とは?

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X68000 ACE-HD(1988年)
X68000 ACEセット(1988年)
X68000 EXPERT IIセット(1990年)

X68000(エックス ろくまんはっせん)は、1987年3月28日シャープが発売したパーソナルコンピュータである。なお以下では、その初代に引き続くX68000(CZ-600)シリーズ(1987年(昭和62年)発売)として現在扱われている製品関連の他、X68030(CZ-500/CZ-300)シリーズ(1993年(平成5年)発売)についても述べる。

目次

  • 1 概要
  • 2 X68000の歴史
    • 2.1 開発~発表
    • 2.2 発売
    • 2.3 X68030の発売
  • 3 外観上の特徴
  • 4 X68000の仕様
    • 4.1 CPU
    • 4.2 主記憶
    • 4.3 グラフィック
    • 4.4 テキスト表示
    • 4.5 スプライト表示・その他の表示機能
    • 4.6 その他の機能
    • 4.7 拡張性他
    • 4.8 標準ソフトウェア
  • 5 X68030
  • 6 オペレーティングシステム
  • 7 発売機種一覧
  • 8 周辺機器
    • 8.1 シャープ純正
      • 8.1.1 内蔵用オプション
      • 8.1.2 外部機器
      • 8.1.3 アクセサリー
    • 8.2 他メーカーから
    • 8.3 パワーユーザーによる各種拡張カード
  • 9 ソフトウェア
    • 9.1 シャープ純正
      • 9.1.1 サウンドツール
      • 9.1.2 グラフィックツール
      • 9.1.3 OS
      • 9.1.4 開発環境
      • 9.1.5 ビジネスツール
      • 9.1.6 通信ツール
      • 9.1.7 ゲーム
        • 9.1.7.1 アーケード移植
    • 9.2 他メーカーから
      • 9.2.1 OS・開発環境
      • 9.2.2 グラフィックツール
      • 9.2.3 3DCGソフトウェア
      • 9.2.4 ゲームメーカー
      • 9.2.5 ビデオゲームアンソロジー
    • 9.3 フリーソフトウェア
      • 9.3.1 GNU C Compiler
      • 9.3.2 Z-MUSIC
        • 9.3.2.1 Z-MUSICシステム ver.3.0の特長
      • 9.3.3 MXDRV
      • 9.3.4 MNDRV
      • 9.3.5 PCM8.X
      • 9.3.6 その他のもの・初期のもの
  • 10 電脳倶楽部
  • 11 DoGAとの関係
  • 12 シリーズの終焉
  • 13 現在におけるX68000
  • 14 遺産
  • 15 関連書籍
    • 15.1 ムック
  • 16 脚注
    • 16.1 注釈
    • 16.2 出典
  • 17 参考文献
  • 18 関連項目
  • 19 外部リンク

概要

パソコンテレビX1」のシャープテレビ事業部による後継機である。1987年(昭和62年)発売。略称はX68kペケロクロクハチロッパーペケロッパなど。X68030シリーズと併せ、X680x0と表記されることもあった。メーカーのシャープは「パーソナルワークステーション」と称した。

1980年代後半から1990年代前半にかけて、ホビーパソコンの一角を担った。日本のホビーパソコンCPUモトローラMC68000を採用した機種は、他に発売されなかった。販売台数は1991年9月の時点で13万台。

標準のオペレーティングシステム(以下OS)だったCUIHuman68k、およびGUISX-Windowは、後にユーザーコミュニティに対してフリーで公開された。

2015年には、内部構造や回路図などを収録した「サービスマニュアル」が公開された。

X68000の歴史

開発~発表

初代機のX68000は、発売前年の昭和61年(1986年)に発表された。開発は、パソコンテレビX1シリーズを開発した、シャープ栃木のテレビ事業部。ソフトウェアハードウェア共にX1シリーズとの互換性は一部の周辺機器を除いてないが、実質上の後継機種である。MZシリーズをリリースし、後のMebiusブランドパソコンの元となった大和郡山市の産業機器事業部は関わっていない。

初めて発表されたのは、昭和61年(1986年)10月2日 - 7日に開催されたエレクトロニクスショー'86(後のCEATEC JAPAN)。シャープブースの一角に展示され、デジタイズされた女性歌手荻野目洋子の65,536色画像と「グラデュース自走」と銘打たれた『グラディウス』の実動画面、そして画面切替によるチェス盤の上をあらかじめレイトレーシングされた玉が跳ねるといったデモンストレーションが行われた。展示画面には「新開発 16ビット パーソナルワークステーション X68000」と書かれた絵文字と南国をイメージした背景が表示されていた。

コンパニオンによるデモンストレーションは、「このパソコン、何と喋るんです」のナレーションに答えてX68000が「早く紹介して下さいよ」とADPCMで発声するもので、その後ハードウェアの特徴と構成が紹介されるというものだった。後述の「マンハッタンシェイプ」はこの時点で名称が確定しており、デモンストレーションでも紹介された。

当時、日本で68000系を採用したパーソナルコンピューターはほとんど前例がなく、業務用のEWSと誤解した人も多かったため、会場ではそれほど大きな注目は集めなかった。MC68000採用の理由は、メモリ空間が16MBと大きいことと、「OSがのっかりやすい」ことだった。当時、日本電機メーカーの間で68000系MPUを採用する独自のEWSを開発・発売するのが一つの流行になっていた背景もあった。

その後、『Oh!MZ』誌を始め、各パソコン雑誌にて取り上げられた事により認知が高まり、次いでシャープ市ヶ谷のエルムホールにて九十九電機と協賛したお披露目が行われた(全国各地で行われたという説もあるが、詳細は不明)。内容はラヴェルのボレロFM音源で再生しつつ、デジタイズされた画面を次々とX1シリーズ用のHDDユニットより読み込んで表示させるというものだった。また、『グラディウス』のデモについてはビックバイパーだけがカーソルキーの操作に合わせて可動し画面内を飛んでいるというものに変わった。

発売

発表から発売まで約5カ月あいたため、発売前から一部の店舗にデモ機が置かれた。この時点で『グラディウス』、アセンブラX68000のテーマ等の同梱ソフトウェアは揃っていたが、本当に発売できるのか、あるいは発表された価格を実現できるのかについて懐疑的に見る向きも多かった。実際に発売されたのは、1987年3月下旬である。出荷数は少なく、実際に購入者の元に初期ロットが届けられたのを見て、突発的に注文する顧客もいた。

その結果、シャープはバックオーダーを抱えることとなり、好調な滑り出しとなった。

当初はインテル系プロセッサを始め、様々なプロセッサの搭載が検討されていたとされるが、最終的にはMacintoshと同じMC68000が採用され、日本のメーカーによる最初にして最後の68000系個人向けパソコンとなった。

当時としては大容量を誇るVRAMと強力なグラフィックコントローラ群によって実現された65,536色の多色グラフィックとスプライト機能、FM音源8チャンネル+ADPCM1チャンネル、1MBのメインメモリ(最大12MB)等の周辺回路により、総合的に競合製品を凌駕するホビーマシンとしての性能を備えていた。その象徴となるのが標準添付アプリケーションの一つでもある、当時はゲームコンソールでも多くの要素が省略されて移植されていた『グラディウス』の存在である。

実売価格は40万円程度で発売された。

また、「5年間はハードの基本仕様を変えない」という方針が当初から決められていた。

Cynthia CZ-600Cに搭載されたスプライトコントローラ。
VSOP CZ-600Cに搭載されたビデオコントローラ。

これらの機能を実現するための膨大な回路の実装には積極的にカスタムLSIが採用された。初代機ではそれぞれビーナス1・ビーナス2(CRTコントロール)、VSOP(ビデオコントローラー)、シシリアン(I/Oコントローラー)、ET(メモリーコントローラー)、シンシア・シンシアJr.(スプライトコントロール)のコードネームが付けられていたものが使われた。試作機段階ではこれらの機能を全て標準ロジックICで実装したとされ、その容積は19インチラック1本分に上ったとされている。

こうした設計から、ホビー向けマシンとしてその機能を生かしたソフトウェアやハードウェアなどを自作するマニア層を中心に、当時としては安価なCG制作機として映像作品を創作する者もいた。同様に、ゲームソフトウェアも多く作成され、アーケードゲームの移植も多数リリースされたことから、コアなゲームユーザーなどにも支持されていた。

このように、ビジュアル的なパフォーマンスでは強烈なインパクトを示した機体だったが、実務面では既にPC-9800シリーズがビジネス向けパソコンの主流として納まっていた背景もあり、オフィス系(実務・応用)アプリケーションへの対応状況などは比例して芳しくなかった。その一方で教育・組み込み向けなどへの営業展開もなされていた。一部のアーケード(業務)用ゲーム機の筐体に組み込まれたり、PROシリーズなどが業務用組込みシステムの開発用途に着目され、Forks社などからX68000での動作を前提にしたOS-9環境で動作するLANボードなどの周辺機器が発売されたこともある。通勤電車の行き先電光板の制御用として使われた実例もあった。教育分野では、ゲームクリエイターを育成するために、専門学校の実習機としても採用されていた。

プログラミング環境の整備に力が入れられており、専用のC言語コンパイラが安価な価格で提供された。標準で付属しているBASICであるX-BASICが、BASICとしては非常に独特の、C言語風味の言語仕様であり、X-BASICからC言語への変換ツールや、プログラミング上問題になりやすい差異について検出する構文検査ツールなどが提供されるなど、BASICからCへのユーザーの移行が考えられていた。また、システムコール及びハードウェア構成、それぞれのハードウェアへの機械語レベルでの直接アクセスの方法とそれぞれのペリフェラルが持つレジスタの意味と動作の全てが公開された。

X68030の発売

やがて、動作クロック16MHzの高速化機種であるX68000 XVI(エクシヴィ)発売を経て、X68030が発売された。実質的な最終機種である同機が発売された1993年頃には、DOS/VMS-Windows 3.1などのオペレーティングシステムが搭載されたPC/AT互換機CD-ROMドライブユニットがそれぞれ普及し始めていた。しかし、本シリーズはソフトウェアのメディア供給が依然としてフロッピーディスクのみで、その大半が5.25インチの2HDだった。それを打開するため、SCSIのCD-ROMドライバがサードパーティーフリーソフトで開発された。ただし、一部のCD-ROMドライブでは正常動作しないなど制約も多かった。X68000シリーズ対応のCD-ROM媒体としたソフトウェアもわずかながら発売された。またこの頃には、国産機としては初めてMPEG (MPEG-1) による動画再生(MPEGエンコーダボードを拡張スロットに装着し、OSはOS-9/X68030にてVideo CDの視聴)を実現している。

キャッチコピーは「夢を超えた」(初代)、「アートの領域へ」(ACE)、「夢の続きを語ろう」(EXPERT / PRO)、「父のパソコンを越えろ」(XVI)、「夢の、頂きへ」(X68030) など。イメージキャラクターはツタンカーメン (X68000)、火の鳥 (X68030) など。

なお、当時のシャープ顧問だった宮永好道によると、シャープが本機を出す際に一番気にしていたのは、「他のやらない事をする」社風のソニーの出方だったという。これは杞憂に終わったが、後にソニーはVAIOシリーズでその持ち味を出して来た、と自著で語っている。

外観上の特徴

X68000の筐体は「マンハッタンシェイプ」と称する樹脂製の左右分割ツインタワー型デザインとなっており、片側には主にオートイジェクトが可能な5.25インチ2HD対応のFDD2基と電源ユニットを搭載。ACE以降の機種では、更にHDDの取り付けスペースが設けられており、HDD搭載モデルではそこに取付金具とともに搭載されている。反対側のタワーにはメインボードと共に拡張I/Oスロットを2基搭載した。2つのタワーの間にはポップアップハンドルを内蔵し、底部が連結されてそこに各種I/Oポートが実装されるサブ基板が搭載されていた。

この特徴的なCZ-600CEのデザインは純正のセットで1987年度のグッドデザイン賞に選ばれている。このデザインは初代から、後継機のACE・EXPERT (II)・SUPERに受け継がれた。高速化されたXVI、X68030では基本的なシルエットはそのままに、縦置きの10MHz機よりも角の強調されたデザインとなっている。

マンハッタンシェイプという名前は、当時アメリカ合衆国ニューヨーク州マンハッタン島に存在したワールドトレードセンターのツインタワーの景観を連想させる事から名付けられた。なお、このツインタワーは、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」において倒壊している。

付属の専用マウスは上部の蓋を外すとトラックボールとしても使用可能。マウス端子は本体に1つ、専用キーボードに2つあった。PROシリーズはこれとは異なるPC然とした横置き筐体で、他モデルとデザインの異なる専用キーボード及びX1turboZ付属のものと同じマウスが付属し、拡張I/Oスロットを4基搭載したものとなっている。価格も縦置きのものと比較し安価に抑えられ、拡張性を強化した廉価版としての側面を持っていたが、従来の縦置きシリーズとは回路設計がやや異なる部分があり、SCSIボードの「Mach-2」など、非対応とされたハードウェアも少なからずあった。

XVI並びにX68030でラインナップされたCompactシリーズはオートイジェクトが可能な3.5インチFDDを搭載、プラスチック製で縦置きであるが非ツインタワー型で、専用キーボードはテンキーを省いたもの、マウスはPROと同じものが付属した。

ボディ色はグレーまたはブラック、SUPER以降はチタンブラックのみとなった。「X68000」のバッジは金色、Compactでは白色印刷、「X68030」のバッジは赤。

特徴ある外観の為、2016年公開の映画「君の名は。」に描かれていることをシャープ公式ツイッターがツイート。その後新海誠監督本人も劇中の画像付きで該当シーンをツイートしている。

X68000の仕様

CZ-600Cメインボード
CZ-600Cビデオボード

CPU

CPUには当時のMacintoshなどと同じモトローラMC68000を採用した。動作クロック周波数は10MHzで、無印、ACE、EXPERT、SUPERまではセカンドソースの日立製HD68HC000が使用された。当時CMOS版のMC68000を生産していたのは日立だけだった。

搭載されたMC68000は、外部データバスが16ビット幅だったためモトローラは16ビットCPUと位置付けていたが、内部設計は32ビットであり、直交性の高い命令セットを特徴とした、同時代のCPUとしてはアセンブリ言語が扱いやすいアーキテクチャーだった。

X68000にはFPUとしてMC68881が使用可能であり、拡張スロットに装着するものが純正品としてシャープから発売されていた。

毎年高速化されていく他機種を横目に、4年を経てようやく、基本性能はそのままでクロック周波数が高速化されたXVIが登場した。このXVIと次のCompact XVIではモトローラ社製のMC68000が使用され、クロック周波数が16/10MHzの選択式になった。またFPUはメイン基板に専用ソケットが搭載された。

なおXVIの発売をきっかけとして従来の10MHz機やXVI・Compact XVIのクロック周波数を高速化する改造がBBSや雑誌で公開され、ユーザーの間で流行した。

MPUは、Compact以外はソケットに実装されていたため交換が容易で、HD68HC000搭載機ではモトローラ純正MC68000に交換も行われた。さらに、変換基板を自作してのMC68020搭載を試みた者もいた他、製品としても、倍速ボード、MC68EC030アクセラレータなどもリリースされている。

主記憶

メモリー空間は、MC68000が利用可能な16MBのうち、主記憶空間として12MBを使用することができた。この主記憶領域はリニアアドレシングが可能であり、また、領域を指定しスーパーバイザー領域とする事で、アプリケーション側からアクセス禁止にすることも可能だった。

標準では、初代・ACE・PRO・PRO IIは1MB(追加1MBは専用メモリーボードによってメインボード上に増設可能だが、2MB以上のメモリーを増設する場合はこの専用メモリーボードによってまず2MBまで増設することが必須である)、その他は2MBを搭載していた。シャープからは拡張スロットに差すタイプの4MBの拡張メモリーボードが発売されていたが、後に他社から8MB以上のメモリーを装備したものが発売された。X68000のメインメモリーは拡張スロットを介したものを含め、すべてノーウェイトアクセスであるが、動作クロックの上昇したXVI・Compact XVI以降の機種では、10MHz動作の汎用拡張スロット経由でのノーウェイトアクセスは不可能だったため、本体内部に8MBまで増設可能なメモリーソケットも用意された。ただし、この場合12MBまで増設するには8MB以降は拡張スロットによる増設となるため、この4MBをアクセスする場合は多大なウェイトが挿入されることとなり、これによる速度低下を回避するため、この領域をRAMディスクとして使用するなどして、この範囲にコードが置かれることを回避する使用法もあった。

X68000は全機種でメモリーバックアップ機能を持つ16KBのSRAMを内蔵し、メモリースイッチの設定を保存するほか、RAMディスクとしての使用やSRAMからのシステム起動も可能だった。ただし、SRAM領域は通常は書き込み禁止に設定されており、プログラムの暴走など万一の事態でも書き換わる事はまず無いとされたが、PRO系の機種ではSRAM回りの設計に難があり、通常使用でもSRAMに書き込まれているデータが破損することがあった。一方、このSRAM領域を利用して潜伏・感染するコンピューターウイルスも存在した。

グラフィック

グラフィック画面表示用のVRAM(フレームバッファ)は512KBを搭載している。これを使用して、256×256または512×512×最大16ビット(65,536色)、768×512×最大4ビット(16色)の表示が可能である。また、CRTCのレジスタを直接操作することにより、1,024×768×4ビットの表示や640×400に近い解像度、384×512などでの表示も可能である。

グラフィックVRAMへのアクセスには、領域として全2MB(1,024ドット×1,024ライン×16ビット)が予約されているが、実際に搭載されている512KBのVRAMは、画面モードによらず常に1ワード(16ビット)=1ピクセルとなるように512KB - 2MBのメモリ空間に配置される。すなわち、16色ならば、2MBのメモリ空間の下位4ビットが有効になり、256色表示ならば、1MBの領域の下位8ビット(残り1MBの領域は無効)、65,536色表示であれば先頭の512KBの領域で全16ビットが有効になるという仕組みである。これによりピクセル単位のカラー操作を容易なものとしていた反面、多数のピクセルを書き換える際にアクセス速度の点では不利だったが、のちにデータ転送時のみグラフィックVRAMの構成を切り換えて隙間なしでデータ転送するテクニックが登場した。

また、グラフィック画面だけで独立した面(プレーン)を最大4プレーン(512x512ドット 16色時)持つことができた。16色モード時には1,024×1,024ドット1プレーンまたは512×512ドット4プレーン、256色モード時には512×512ドット2プレーン、65,536色モード時には512×512ドット1プレーンという構成で、複数のプレーンを重ねあわせて表示することができる他、半透明機能があった。また、それぞれ独立に上下左右がつながった球面スクロールが可能となっている。

同時代のパーソナルコンピューターとして標準的な環境での解像度は640×400ドット16色であり、この表示に必要なVRAMは128KB弱であることからも、X68000の圧倒的な画像処理能力がうかがえる。X68000の65,536色は下表の形式の16ビットによって構成されており、RGB各5ビットによる32768色と輝度ビット(半段階の明るさ調整)によって実現されている。

桁 15 | 14 | 13 | 12 | 11 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0
色 G4 | G3 | G2 | G1 | G0 | R4 | R3 | R2 | R1 | R0 | B4 | B3 | B2 | B1 | B0 | I

(G:緑、R:赤、B:青、I:高輝度)

グラフィック画面は、上記の他、高速クリアなどの画面制御機能はあったものの、基本的にはMPUの直接制御によって図形描画が行われた。同時代の主な16ビット以上のパーソナルコンピューターで、グラフィックディスプレイコントローラーを採用しラインや多角形、塗り潰しなどの簡易的な描画機能が搭載されていた点とは対照的である。これは当時、安価なグラフィックディスプレイコントローラーのハードウェア描画機能がまだ貧弱であり、速度的にも充分なものでなく、かつ実装及びプログラミング上の制約が大きかったためと推測される。後にPC-9800シリーズでもこの問題から、グラフィックチャージャーと称してX68000同様のピクセル演算機能を実現して、性能の向上を図っている。

テキスト表示

いわゆるキャラクタ単位のテキスト画面は用意されず、グラフィック面とは別に512KBのビットマップVRAMが用意されていた。

X68000のテキスト面はプレーンドピクセル方式のビットマッププレーンであり、同時代の標準的なパーソナルコンピューターのグラフィック画面に相当する情報量と表現力を持っていた。ビットマップによるテキスト表示は、その表現力と引き換えに、キャラクタ型VRAMと比較すると負荷が重い(遅い)ものであるが、X68000のテキストVRAMには同時プレーンアクセス機能やラスタコピー機能、ビットマスク機能などの画面制御機能が用意されており、CPUの処理を大幅に軽減することが可能となっていたため、十分な速度を得ることができた。

テキストVRAMは4プレーン存在するが、通常、そのうち2プレーンはマウスカーソルとソフトウェアキーボード、電卓の表示に使用されるため、テキスト表示は2プレーンで行われることが多い。

テキスト表示用にフォントパターンをROMに搭載している。このCGROMに搭載されている文字種は、16×16ドットのJIS第1/2水準漢字に加え、24×24ドット、12×12ドットのJIS第1/2水準漢字(非漢字752文字、第1水準漢字3,008文字、第2水準漢字3,478文字)である。このほか、ビットマッププレーンを生かし、ユーザー定義のフォントを使用することも可能だった。

通常の16ドットフォントを使用した際のテキスト表示は半角で96文字×32行であるが、VRAM自体は1,024×1,024ドットの広さを持っており、これを利用してSX-Window Ver.3.xでは起動時オプションの指定で最大1,024×848(インターレース)での表示が(隠し機能的に)可能なほか、CRTCのレジスタ操作と入力周波数の物理的な変更により、1,024×1,024ドットのフルスクリーン表示なども実現されている。なお、インターレース表示での高解像度画面は、長残光CRTを使用しないかぎりちらつきが著しく実用に耐えない。そのため、X68000 Compact XVIやX68030ではSX-Windowの640×480表示用に追加搭載された50MHzのクロックオシレータをより高周波数のもの、具体的には80MHzや100MHzのものに交換し、高解像度対応のCRTと組み合わせてSX-Windowの高解像度表示を実用的なものとすることが『Oh!X』誌で紹介され、一部でこの改造が流行した。

このテキスト面は前述の画面制御機能が使用できるほか、1ワードで最大16ドット、ロングワードで32ドットの書き換えが可能となるため、用途によってはテキスト画面をグラフィック画面代わりに使用し、他機種からのゲーム等の移植にも使われた。ビジュアルシェルやSX-WindowもテキストVRAMで実現されている。

スプライト表示・その他の表示機能

その他には、16ドット×16ラインで65,536色中16色、同時表示枚数128枚の「スプライト機能」と「BG面」を持っている。これは、特にアクションゲームシューティングゲームの作成に非常に有効だった。スプライトとBGのパターンデータは共用であり、VRAMとは独立した16KBの高速SRAMを使用していた。

スプライト以外の、これらのすべての画面を合わせると、最大で7枚(グラフィック4枚+テキスト1枚+BG2枚)もの独立スクロール機能付きの画面をハードウェアで合成表示することが可能だった。

他には、パソコンとしては珍しく「走査線(ラスタ)割り込み」を可能としていた。なお、ライバルと目されたFM TOWNSは、HSYNCを検出することは可能だったが、それを割り込みトリガには出来なかったため、一般にラスター割り込みを使うエフェクトは、他の手段で再現していた。

また、専用端子へ接続するカラーイメージユニットを使用することにより、当時としては先進的な、ビデオ信号のキャプチャが可能だった。

X1のパソコンテレビの機能も受け継いでおり、テレビチューナー付の純正の専用モニタでは、チャンネル操作やスーパーインポーズなどのテレビコントロールも可能だった。

その他の機能

サウンド機能として、X1turboZと同じ8チャンネルのステレオFM音源 (YM2151) に加え、ADPCM(沖電気製MSM6258)を1チャンネル搭載した。YM2151の定格入力周波数は3.58MHzであるが、本機ではX1に合わせ4MHzが入力されているため、出力される音程はチップの仕様と異なる。ADPCMは、シンセサイザ然としたFM音源を補う形でパーカッションなどとして同期演奏することから始まり、ソフトウェア的な合成により多重に出力できるような利用がされるようになった。リニアPCMを扱うことはできないが、ハードウェアとして扱えるようにしたボードや、FM音源に対し矩形波の近似波形を音色として設定しチップの応答速度限界付近の出力を制御し、DACとして利用することで、PCMとして利用するソフトウェア等も存在している。

他には本体の電源を制御する機能がついており、ソフト上から時間を指定して電源をON/OFFすることが出来た。このため、現在のPC/AT互換機でのATX/BTX筐体のように、前面の電源スイッチとは別に背面に主電源スイッチがあった(Compact / PRO / PRO IIを除く)。さらに正面電源スイッチのほかに背面にリモート電源端子があり、マグネットコイルリレーなどの外部スイッチより起動することも可能だった。また、4チャンネルのDMAも搭載していた。

CZ-600Cキーボード

キーボードは80C51を内蔵したシリアル制御で、キーボードの特定のキーに内蔵されたLEDをソフトウェア的に制御することも可能だった。

拡張性他

本体の背面には10MHz動作の汎用拡張スロットが用意され、各種拡張カードや増設メモリカードなどの搭載が可能だった。

ジョイスティックポートは同時代に標準的となっていたD-sub9ピンのATARI規格準拠のものであり、電源ピンを持つ、MSXなどと同じピンアサインに変更された。このジョイスティックポートは縦型の機種では本体前面と背面に1ポートずつ、PRO系では前面に2ポート設置されていた。プリンターはセントロニクス仕様準拠のパラレルポートで、同時代の一般的なPC-9800シリーズのプリンターポートがそうだったように、入力はBusy信号のみの、事実上出力のみに特化した仕様のものが実装されていた。コネクタはX1同様のMIL-C-83503に準拠した俗に言うMILタイプ圧接コネクタだった。さらに、RS-232C上位規格のRS-232Eに準拠したシリアルポート、FDDの増設端子などのコネクタも標準搭載した。

また初代機からSASI相当のHDD増設端子を備えており、純正のX1turbo用増設ドライブの他、PC-9801用のSASIハードディスクを流用できた他、後に有志が公開したドライバによってSCSIとして使用することもできた。

HDD増設端子はX68000 SUPERからはSCSI端子に変更された。ACE以降は本体内にHDDを内蔵するスペースがあり、マウンタ等は設置されていないものの、保守部品として別途入手し工作することで内蔵することが可能であった。また、拡張SCSIインターフェイスは内蔵インターフェイスとハードウェア的には別の実装になっていることから、ドライバなどを除けば直接ハードウェアを制御するソフトウェアは少なく、純正ボードと全く異なるハードウェアであるMach-2/Mach2pなども、ROM上のソフトウェアがその差異を吸収している。便宜上、拡張ボード、内蔵デバイスと検索されるため、拡張ボードを使用した場合は内蔵デバイスが無効になる。これらをソフトウェア側で別IDを与え、併用するTwoSCSIというソフトウェアも開発された。

SCSI機器はSCSI端子を持つX68000に接続して利用できるはずだが、ある一時期に発売されたSCSI機器はX68000に接続しても認識できない問題が少なくなかった。この問題には、終端抵抗の有無(SCSI機器末端の終端抵抗を取り外すことで動作する機器も存在した)といった電気的特性の他、NECが発売していたPC-9801-55ボードや同時期のPC-9800シリーズ本体内蔵SCSIには1台目SCSI機器のベンダID先頭3文字がNECでないと起動しない制限、俗に言う「NECチェックの巻き添え」に起因するものがあり、パソコン通信を中心にSCSI機器動作確認情報の交換が行われていた。

初代機からX68000 XVI(PROを除く)までは立体視端子(STEREOSCOPIC端子)も装備されていたが、対応ソフトは電波新聞社から発売されたセガの『ファンタジーゾーン』のみで、利用するための専用ハードウェアが発売されることはなく、満開製作所ファミリーコンピュータ用「3D SYSTEM」をX68000の立体視端子に接続するためのアダプタセット(立体視端子を持たないPROやCompact、X68030にも対応)を発売するだけにとどまった。なお『ファンタジーゾーン』が発売された時には満開製作所のアダプタは発売されておらず、電波新聞社発行のマイコンBASICマガジン等でアダプターの自作が紹介された。

また、拡張カードを自作・試作するためのユニバーサルカードが、サンハヤト等から発売されていた。またX68000の拡張カードの仕様はPC-9801用の拡張カードの大きさと概ね寸法が近似していたため、X68000用のユニバーサルカードが入手が難しい場合には、PC-9800シリーズ用の物を電源及びグランドのパターンにパターンカットを施し、部品面 / 配線面を裏返しに用いることにより流用できた。

標準ソフトウェア

本体内蔵のROM(容量512KB)には、CP/MのBDOSやMS-DOSIO.SYS、MacintoshのToolBoxなどに相当する基本入出力システムIOCS (Input Output Control System) を搭載、これを活用する標準添付のオペレーティングシステムとしては、ハドソンとSHARPがMS-DOSを参考に開発したCUIベースのHuman68kが標準添付されていた。このHuman68kは、単にユーザインタフェースのルック&フィールがMS-DOSに酷似しているだけではなく、システムコールのファンクションもMS-DOSとほぼ同等だった。

MC68000MPU特有の特権モード(スーパーバイザモード)を生かし、一部システム領域を、アプリケーションからのアクセスから保護する機能も有していたため、アプリケーションエラーを検出し、実行を停止させることもできたが、OSとして特権モードとユーザーモードの分離が十分でなく、その後システムに復帰できるかどうかは運頼みの側面もあった。

Human68k上で動作する独自のGUIを取り入れた簡易的なウインドウシステムであるビジュアルシェルが付属していたが、後により洗練されたウインドウシステムであるSX-Windowによって置き換えられ標準添付となった。

言語としては、BASICを独自にC言語ライクな構文表記に拡張したX-BASICなども付属していた。X-BASICで作られたプログラムはC言語に変換してコンパイルすることも可能である。

日本語入力ソフトとしてはASK68kというFEPが添付されていた。同時代の水準と比較してその変換精度にはやや難があったが、細部に目を移せば、ローマ字かな変換モードで「X」1文字で「ん」を入力できるといった操作体系や、あらかじめ日本語処理を意識して設計されたキーボード上の専用キーとの親和性は高かった。

X68000初代から日本語ワープロソフトwp.xが標準で添付されていた。機能的にシンプルでやや安定性に欠けていたものの、文書を書いて印刷するための最低限の機能は備えており、動作も軽いほか、メモリが許す限りファイルを同時に扱ったり、子プロセスを立ち上げられたりなどもできた。

SX-Windowでは、Ver.3.0以降wp.xに代わり、シャーペン.xというエディタが付属した。シャーペン.xは基本的にテキストエディタだが、各種フォント(書体倶楽部などのZeit社製ベクトル/アウトラインフォントおよび書家万流など一部のシャープ製SX-Window用アプリケーショ同梱のアウトラインフォント)に対応するなどSX-Window Ver.3.0で拡張された機能をフルに生かすソフトとなっていた。また、多彩な表現力を備えるだけではなく、Human68kのCOMMAND.Xに相当するコマンドシェルを「コンソール」モードとして実装するなど、自在なカスタマイズの可能なものとなっていた。このシャーペン.xはSX-Window環境で標準添付あるいは市販されたものとしてはほぼ唯一のエディタ(後にフリーウェアとしてMuleなどが移植された)であり、他に選択肢が無かったこともあり、SX-Window上ではあらゆる用途で使用できるものとなっていた。

X68030

1993年3月に発売されたX68030(エックス ろくはちまるさんまる)シリーズ(型名はCZ-500 / CZ-300シリーズ)は25MHzのMC68EC030を搭載したX68000の後継機種。名実ともに32ビットパソコンとなった。5インチFDDを装備するX68030 (CZ-500) と、3.5インチFDDを装備するX68030 Compact (CZ-300) の2機種が発売された。

X68000発売当初は、次のMC68020以上のMPUを積む32ビットパソコン化の際は、大幅なアーキテクチャの拡大と改良が予定された。そのために移植性に優れたCコンパイラが安価に提供され、うまく行けば、ユーザーは既存のプログラムを再 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出典:wikipedia
2020/02/20 08:58

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