東京スカイツリー(とうきょうスカイツリー、英: TOKYO SKYTREE)は、東京都墨田区押上1-1-2にある電波塔(送信所)であり、東京のランドマークの一つである。2012年2月29日に完成し、同年5月22日に電波塔・観光施設として開業した。観光・商業施設やオフィスビルが併設されており、電波塔を含め周辺施設は「東京スカイツリータウン」と呼ばれている。東武鉄道及び東武グループのシンボル的存在である。最寄駅はとうきょうスカイツリー駅・押上駅で両駅と直結している。
東京スカイツリーについての名称・ロゴマーク・シルエットデザイン・完成予想コンピュータグラフィックスといった知的財産は東武グループの一社である東武タワースカイツリー株式会社等の著作権および商標権により保護されている。このため公式案内では「東京スカイツリー®」と®マークが記載されている。
既存の電波塔の東京タワーが位置する都心部では、超高層建築物が林立して影となる部分に電波が届きにくくなっていたほか、ワンセグやマルチメディア放送といった携帯機器向けの放送を快適に視聴できるようにするなどの目的もあって、2000年頃から首都圏各地で新タワーについての誘致活動が行われていた。2003年12月には日本放送協会(NHK)と在京民間テレビ局5社(TBSテレビ、日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)が600メートル級の新しい電波塔を求めて「在京6社新タワー推進プロジェクト」を発足。新タワー構想を推進していくことで建設に向けた計画に進展が付いた(建設地決定についての経緯は後述)。
東京都墨田区に所在する、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)のとうきょうスカイツリー駅(旧・業平橋駅)と京成押上線・都営地下鉄浅草線・東武スカイツリーライン・東京メトロ半蔵門線の押上〈スカイツリー前〉駅の間に挟まれる、東武鉄道所有の貨物駅跡地(のち業平橋駅旧3 - 5番線ホーム、2003年廃止)、および2007年まで生コンクリートを製造していた東京エスオーシー(住友大阪セメント)業平橋工場の跡地に建設された。当地区は航空法上、東京国際空港(羽田空港)の制限表面の外側水平表面が被さる地域であるため空港標点の海抜295メートルまでの建造物しか建てられなかったが、2005年4月28日に高さ規制区域が見直されて建設可能となった。
事業主体は東武鉄道の完全子会社である東武タワースカイツリー株式会社であり、同事業費は約500億円とした。このために、同社は500億円のユーロ債のCBを発行して資金調達を行っている。建設費は約400億円。総事業費は約650億円。施工は大林組、設計は日建設計である。テレビ局からの賃貸料および観光客からの入場料などで収益を得る見込みであった。
2008年7月14日に着工され、3年半の期間をかけて2012年2月29日に竣工した。2012年5月に展望台として開業し、2011年12月から2013年5月にかけて放送局の試験放送ならびに本放送を実施する計画であった。
東京タワーの建造時(1957年 - 1958年)に比べ鋼材の品質や溶接技術・各種構造計算(シミュレーション)などの設計技術・基礎部の特殊な工法が大きく進歩したことにより、東京タワーの建築面積を大きく下回る面積ながらこの高さの自立式鉄塔の建設が可能となった。また、全体の主要接合部が溶接により建設されているが鋼管同士を直接溶接接合する分岐継手を採用し、軽量化と耐震性を増している。主要鋼材はH鋼ではなく鋼管が使用された。構造が鉄骨造としては稀に見る複雑さであり各部材に要求される寸法等の精度も一般建築物とは桁違いであるため、鉄骨部材を作成する工場のうち国内のレベルの高い工場の多くは一時的にスカイツリーの部材製作で繁忙を極める状態となった。このため、溶接作業の一部には手作業による職人技が寄与している部位も多分にある。
2006年5月に第一生命経済研究所が出した予測 によると開業から1年で300万人が訪れると仮定、経済効果を473億円と試算している。また2008年1月公表の墨田区「新タワーによる地域活性化等調査報告書」では東京スカイツリーへの来場者を年間552.4万人、東京スカイツリーに併設される商業施設などを含めた開発街区全体での来場者数を年間2,907.9万人と試算している。
現存する電波塔としては支線式鉄塔のKVLY-TV塔(アメリカ)の628.8mを上回る世界第1位。2011年11月17日に世界一高いタワーとしてギネス世界記録の認定を受けた。人工の建造物としてはブルジュ・ハリーファ(アラブ首長国連邦・ドバイ)の828mに次ぐ世界第2位となる。
東京都心部で立ち並ぶ200m級の超高層ビルの影響を受けない高さとして、NHKと在京民放キー局5社が「600m」という数字を要請し、着工当初は高さを610.6mとする計画であった。建設計画を策定する中で当時世界一の高さのカナダオンタリオ州・トロントにあるCNタワーを上回る。またアメリカイリノイ州・シカゴに建設予定のあった「シカゴ・スパイア」(2008年建設中止、2010年計画取消)のアンテナを含めた高さが約2,000フィート(約609.6m)だったため、「610m」という数字になったという。構想段階では世界一高い建造物を目指していたが、完成時の高さを非公開にして建設していたブルジュ・ハリーファが高さ828mで完成した。
2009年10月16日に計画を修正し、高さ634mを目指すことを発表した。数字には東京近辺の旧国名である武蔵国(「むさし」のくに)の語呂合わせも考慮したとしている。当初は東京タワーの2倍の666mの計画だったが、設計者から少し低い高さにすべきと言われ、浅草寺が創建された628年に因み628mの案もあったと根津嘉澄東武鉄道社長は2012年5月14日の開業記念式典後の記者会見で秘話を語った。
2006年(平成18年)11月24日にデザインが公表された。以下の3つのコンセプトに基づき、デザインされている。
塔内部は円筒(鉄筋コンクリート造のH375で直径約8m、筒内部は階段)になっており、外側のトラス部分と構造的に独立させ地震などによる揺れを抑える制震構造となっている。タワーを設計した日建設計はこの制振システムを五重塔になぞらえて、「心柱制振」と呼んだことなどから、マスコミから五重塔の技術が用いられたかのように報道された。しかし、五重塔の制震構造は解明されておらず、実際には現代の制振技術を応用したものである。また、アンテナが取り付けられる「ゲイン塔」の上には制振装置(総重量約100トンで、バネの上に乗った重りでアンテナの揺れを抑える)が設置され、心柱自体の重みと共に付加質量機構を形成する。ゲイン塔外周の直径約6m、アンテナ外周直径約8m。
タワーの水平方向の断面は地面真上では正三角形であるが、高くなるほど丸みを帯びた三角形に変化し、H320で円となる。概観は「起り」(むくり)や日本刀の緩やかな「反り」(そり)の曲線を生かした日本の伝統建築の発想を駆使し、反りの美的要素も盛り込まれている。このため、タワーを見る方角によっては傾いているようにも裾が非対称になっているようにも見える。
2009年(平成21年)2月26日にカラーデザインが公表され、「スカイツリーホワイト」と決定された。これは日本伝統の「藍白」(あいじろ)をベースにした独自の命名のオリジナルカラーで、青みがかった白である。なおエレベーターシャフトはグレー、展望台はメタリック色、頂部は鮮やかな白である。
2009年(平成21年)10月16日にライティングデザインが公表された。江戸で育まれてきた心意気の「粋」と、美意識の「雅」という2つの異なるライティングを1日毎に交互に替えるライティングである。このライティング機材や調光コントロール全般は東京スカイツリーのオフィシャルパートナーのパナソニック(当時・パナソニック電工)が請負い、ライトアップの全てをLED照明とした。
なお「雅」はピンクすぎず青すぎない上品な紫色(複数の色のLEDを混ぜたものでなく単体で表現する)を目指しており、このような色のLEDは従来にはないため「オリジナルのLEDを新たに開発する」としている。また2010年(平成22年)10月13日にはLED実験のため、51台の照明器具で数時間だけライトアップされた。完成時には1995台の照明器具が使用されている。
2017年(平成29年)5月18日には開業5周年を記念して新たなライティング「幟」が追加され、以降は3つのライティングを1日毎に交互に替える方式に変更された。
2019年(令和元年)5月16日から2020年(令和2年)2月19日にかけてライティング増強工事を行い、照明機器数が2,075台から2,362台に増設した。ゲイン塔部分がフルカラーで点灯できるようになるとともに、塔体250m付近と150m付近の中間部に連続性のある点灯演出が可能となった。2020年(令和2年)2月27日に「粋」「雅」「幟」のデザインを以下のようにリニューアルした。
これ以外にも、特定日にはスペシャルライトアップが行われる。以下は、過去に行われたライトアップ。中には通例化しているものもある。